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特集:ヤバイ投信保険外債 2016年7月26日特大号

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◇「見えない」金融商品の手数料

◇金融庁が開示へプレッシャー

 

桐山友一/種市房子(編集部)

 

 EBRDは、中東欧諸国の市場経済への移行などを目的として、1991年に設立された国際金融機関。欧州各国のほか、日本や米国など65カ国が出資する。提案書を見ると、2019年1月の満期まで持てば、年6・329%の最終利回り(ブラジル・レアル建ての複利ベース)で償還される。最低購入金額は1000万円。単純に日本円1000万円を年6・329%で複利運用したなら、満期時に170万円以上の運用益が出る計算だ。

 

 ◇「為替」の裏側

 

 男性の金融資産は約3000万円。老後に備えた虎の子の資金をどう運用するか悩んでいた。国内大手銀行の定期預金金利は年0・001%。1000万円を預けても1年で1000円にしかならない。今年2月の日銀のマイナス金利政策導入で、債券は金利が低下する一方、株式市場は年初から価格変動の激しい展開が続く。投資のタイミングをつかめずにいた中、信用力の高い発行体の高金利債券は魅力に映った。

 気になるのは為替レート。営業担当者の説明では、1レアル=27円よりレアル安にならなければ、利益が出るとのことだった。当時の為替レートは1レアル=31円前後。レアル・円相場は15年初の1レアル=45円前後から、今年2月には一時1レアル=27円台まで一気にレアル安が進行したが、その後はレアル高方向で持ち直している。「仕入れ販売の外貨建て債券なので、いつでも在庫があるわけではないんです。もし購入を希望されるならお早めに」。担当者がたたみかける。

「為替リスクを取っても投資してみようか」。男性が真剣に検討し始めたとき、あることに気が付いた。提案書に手数料の金額の記載が見当たらないのだ。手数料を尋ねると、「購入時と円建てでの償還時にそれぞれ、為替レートで1レアル当たり1円の手数料がかかります」と明かした担当者。購入する債券のレアル建て価格を考えると、購入時と償還時で合計約70万円の為替手数料が発生する計算になる。70万円を払って不確実な利益を取りにいくのか──。男性はあ然として購入を取りやめた。

 低金利の環境下で、銀行や証券会社が今、外貨建て債券のセールスに力を入れている。ただ、手数料の説明は十分とは言いがたい。

 ◇毎月分配型の“異変”

 

 昨年5月に残高が初めて100兆円を突破し、個人向け金融商品の柱となった投資信託。その投信市場で今、ある“異変”が起きている。依然として高い人気を集める「毎月分配型」投資信託で、新規設定本数が激減しているのだ。金融情報会社のモーニングスターによれば、毎月分配型投信は11年、新規設定本数が256本にのぼったが、今年1~6月はわずか22本どまり(図1)。背景にあるのは、金融庁が14年以降の「金融モニタリングリポート」で、毎月分配型投信の手数料やリスクの高さなどを指摘したからだ。

 特に高い分配金を毎月払い出す投信の場合、複雑な金融取引を通じて分配金の原資を確保するため、手数料の水準は割高になる。一方で、思うような運用成果を上げられなかった場合、運用資産を取り崩して“タコ足”分配せざるをえない。

 ある運用会社の高分配投信のファンドマネジャーは、「毎月分配型投信は投資として非効率なことは百も承知。しかし、毎月分配型でなければ売れず、銀行など販売会社の窓口で取り扱ってもらえなかった。求められるから作っただけだ」と漏らす。

 金融庁のにらみが利き、毎月分配型の投信の新規設定本数は目に見えて減少した。だが今、個人投資家の人気を集めているのは、米国や世界のREIT(リート)(不動産投資信託)を投資対象とする、既存の毎月分配型投信ばかり。年金の足しとして毎月の分配金を受け取りたい高齢者などのニーズが強いためだ。“いびつ”な個人投資の動きを軌道修正するには、個人投資家がなぜ毎月分配型を求めてしまうのか、突っ込んだ原因の分析も欠かせない。

 生命保険の販売手数料をめぐって、金融庁と銀行、保険業界が今、激しい駆け引きを演じている。

 ◇外貨保険のバトル

 

 7月6日に開かれた、金融担当相の諮問機関「金融審議会」の「市場ワーキング・グループ」第3回会合。事務局の金融庁が示した資料に、銀行・保険業界が注視した。資料に載っていたのは、「外貨建て一時払い生命保険」の販売手数料が約7%と、2%台の投信などに比べて高いことを示した棒グラフ(図2)。同じ資料では、貯蓄性の高い保険商品について「売れ筋は運用商品と保険商品を複雑に組み合わせた一時払い保険だが、その販売手数料は高水準かつ不透明」とも指摘した。

 金融庁が問題提起するのは、為替や運用成果に応じて満期保険金などの金額が変わる、外貨建て生命保険や変額年金保険だ。外貨建て保険は14年ごろから販売がスタート。日本よりも金利の高い外貨建て債券などで運用し、銀行の窓口などで人気商品の一つとなっている。

 ただ、為替変動などのリスクがあるうえ、これまで手数料はブラックボックス。販売する側が手数料を稼ぐ目的で、外貨建て保険などを勧めているのではという疑念がつきまとう。金融庁は今年に入り、銀行業界に手数料の開示を求めたが、大きな収入源となっている地銀が抵抗。金融庁は金融審議会の場で取り上げることにし、業界側にプレッシャーをかけている。

 三菱東京UFJ銀行など大手行は、外貨建て保険などの手数料を年明けにも開示する意向を固めた。地銀の外堀は埋まりつつある。投資家にとって本当に有益な、金融商品販売のあり方が問われている。


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