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特集:人口でみる世界経済 2016年10月4日特大号

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◇経済を大きく動かす人口

◇世界16カ国の人口長期予測-高齢化する国、若年増加の国-

 

黒崎亜弓(編集部)

 

 人口の増減が経済に与える影響が大きいことをベースとした経済分析が増えている。人口はかなり確実かつ長期の予測が可能だ。人口データを基に世界経済の未来をみる。

 

 経済に関する指標は数多くあるが、最も確実に、かつ長期で予測できるといえるのが人口だ。同じ年に生まれた人は1年後には一つ年を重ねる。年代ごとの死亡率も、戦乱や飢餓などを除けばなだらかに推移する。

 国連人口部は出生、死亡、移動などの傾向を基に、2100年までの各国の人口推計を出している。さすがに2100年となると、その時代を生きる人々の大多数がまだ生まれていない。そこで、1950年から2050年の100年間、16カ国を25~26ページの図に示した。

 人口構成が変遷する背景には、「人口転換」がある。「多産多死」の時代は乳幼児死亡率が高く、衛生状態や生活水準の向上に伴い下がるが、出生の傾向はすぐには変わらない。この「多産少死」の世代は人口が膨らむ。遅れて出生率が低下し、「少産少死」へと行き着く。

 図1の合計特殊出生率は1人の女性が一生に産む子供の平均数を指す。現在の人口を維持する水準は日本では2・07だが、日本はじめ、既にこれを切っている国が多数ある。

 経済に直結すると考えられるのは、総人口に対する生産年齢人口(15~64歳)の比率だ。この比率が高ければ、社会のなかで働き手が多く、扶養が必要な若年人口(0~14歳)と高齢人口(65歳以上)の割合が低いことになる。平均寿命(図2)が伸びるにつれ、総人口に対する高齢人口の割合(高齢化率)が上がる。

 16カ国をみると、生産年齢人口比率が一貫して低下傾向にあるのがヨーロッパだ。アジアの国々は、生産年齢人口比率が大きく伸びる「人口ボーナス期」の後、低下に向かう。韓国、中国、タイで顕著だ。「多産少子」の時代に生まれた世代が生産年齢人口に加わる頃に出生率が下がり、高齢化が進んでいなかったためだ。

 先進国でアメリカ、オーストラリアは生産年齢人口が伸びてきた。移民の受け入れが背景にある。

 アフリカ諸国は人口増が続き、生産年齢人口自体は増えているが、同時に若年人口が多いため、生産年齢人口比率は60%以下で横ばいだ。

 先進国やアジアでは、高齢化対応や出生率向上、働き手不足の打開が共通課題となる一方、アフリカ中心に途上国の中では「過剰な若年層」が紛争やテロの下地にあると指摘される。人口でみる世界の先は二極化の様相だ。(了)

 

 (『週刊エコノミスト』2016年10月4日特大号<9月26日発売>24ページより転載)

 


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