◇政策効果表れぬ政府の焦り 日銀vs内閣府「GDP大論争」
桐山友一
(編集部)
経済統計をめぐり、政府・日銀で新たな指標づくりや既存の統計の見直しなどの動きが活発化している。日本経済の実力である潜在成長率の水準が下がる中、発表されるわずかなデータの違いが、政策判断や市場に及ぼす影響は高まる一方。そればかりでなく、経済政策の「成果」としての数値が、政権の評価として選挙の結果すらも左右しかねない。だが、現実の経済の「真」の姿とは、そもそも把握が難しいもの。一足飛びの妙案はそう簡単には生まれない。
◇相次ぐ見直し組織
「それでは『より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会』を始めたいと思います」──。
9月28日、東京・霞が関の内閣府庁舎。内閣府がこの日設置した研究会は、学習院大学の伊藤元重教授ら8人の専門家がメンバー。その名の通り「より正確な景気判断」をするため、消費などの動向把握の精度を上げ、GDP(国内総生産)統計の改善などにつなげる狙いだ。年内をめどに政府が取り組むべき方向性をまとめる。
9月15日には総務省が、新たな消費統計の開発に向けた研究会をスタート。高市早苗総務相は研究会で「多くの消費者、政治家の判断材料となる、全般的な消費を捉えた指標を作りたい」と述べた。研究会は今後、小売りのPOS(販売時点情報管理)データや電子マネーなどから収集した民間企業が持つビッグデータも活用した、速報性の高い新たな消費統計の開発を検討。月1回ペースで開催し、今年度中に新たな統計作成に向けたロードマップを示す。
また、山本幸三地方創生・行政改革担当相が8月、記者会見で「日本のGDP統計というのは、どこまで本当に信用していいのか分からない」と述べ、経済統計のあり方を見直す考えを表明。9月16日には旧知の三輪芳朗・大阪学院大学教授を大臣補佐官に任命し、地方での政策判断に活用する“地方版GDP”の可能性を探るほか、統計の利用者の立場から統計の改善を促すという。自民党内では林芳正参院議員を座長とした、GDP統計の推計方法を見直すプロジェクトチームの動きもある。
◇発端は麻生財務相
一連の見直しの動きの発端となったのは、昨年10月16日の政府の経済財政諮問会議だ。麻生太郎財務相が消費の動向を示す総務省の「家計調査」について、……
続きは本誌で