◇今はビジネスモデルの転換期
矢田真理(立命館大学客員研究員)
スマホゲーム「ポケモンGO」の世界的大ヒットによって、ゲームコンテンツが久方ぶりに話題にのぼるようになってきた。かつての日本は「ゲーム立国」と呼ばれるほどの勢いを有していたが、日本発で世界的にヒットするゲームコンテンツの不在で、2009年以降、停滞ムードが漂っていたことは否めない。
今、注目されるのが、ゲーム専用機独特のビジネスモデルから、「新しいゲームビジネスモデル」への転換である。
◇ソフトのマンネリ化
ゲーム専用機ビジネスモデルは、ハードで収支とんとん、あるいは赤字で、ソフトでもうけるというものだ。ソフトでの収入には、ハードに対応したソフトを制作するソフトメーカーからのロイヤルティー収入や、ソフトメーカーから受注したソフトの委託生産料、ゲーム専用機メーカー自らが制作したソフトの収入がある。
ハードで利益がなく、ソフトでもうけるこのモデルを経済学的に述べると、ハードの価格は適正価格より低く、ソフトの価格は適正価格より高いことを意味する。そのため、ハードは過剰供給、ソフトは過少供給の状態に陥る。つまり、経済理論上ではソフトが慢性的に不足するようになる。
過少供給下においてメーカー側は、ヒットが確実な定番ソフトを供給する傾向になる。そのため、このビジネスモデルが、定番ソフトのみ売れるという、ソフトのマンネリ化につながっているということもできる。
このゲーム専用機のビジネスモデルは、以前から課題を抱えていると筆者は考えており、主に以下の2点を指摘することができる。
1点目は、委託生産料やロイヤルティーの支払いがあるため、ゲーム専用機市場に参入できない小規模ソフトメーカーが数多く存在することだ。これは、昔の「ファミコン」の時代から続いている。埋もれている優秀なソフトメーカーが少なくなく、ゲームユーザーが面白いソフトで遊ぶことでの機会損失が生じている可能性がある。
さらに、ゲームハードの高機能化とともに、ソフト開発コストが上昇している状況下では、「埋もれているソフトメーカー」が浮上するのは難しい。
2点目は、ロイヤルティーや委託生産料があることで、ソフトメーカーが利益面で機会損失を被っている可能性があることだ。仮にハードメーカーへの支払いがなく、その分だけソフト価格が下落した場合、ソフトに対する需要が増える。
こうした状況が、長年のゲーム専用機産業の低迷につながっていると思われる。実際、日本ではゲーム専用機市場が低迷している。……