◇世界中のハードディスクがフラッシュメモリーに置き換わる
◇10年に1度の産業変革
種市房子/花谷美枝(編集部)
米国の半導体関連株を集めたフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は過去10年間で最高値水準の800ポイント超で推移している(図2)。これに引っ張られるように、上値の重い東京市場でも半導体関連株ばかりが上がっている。半導体産業で今、何が起きているのか。
注目を集めるのは、世界中でコンピューターサーバーの記憶装置が、ハードディスクドライブ(HDD)から、NAND(ナンド)フラッシュメモリーに置き換わっていることだ。野村証券の和田木哲哉マネージング・ディレクターは、この現象を「10年に1度の産業変革が到来した。まったく新しいメモリー市場ができた」と語る。
◇新工場200棟必要?
ゲームはネット接続が主流になり、動画や音楽の配信サービスや電子商取引が日常に溶け込む中、情報を保存・読み込むサーバーの需要は今後、爆発的に増えそうだ。年間に生成されるデータ量は現在、世界で推計8ゼタバイト(ゼタは10の21乗)とされるが、2020年までに40ゼタバイトに膨れ上がると予想されている。このデータ量やサーバーのフラッシュメモリー採用状況を基に野村証券が試算したところ、20年にはフラッシュメモリーの工場が新たに200棟必要になるという驚くべき数字が出た。ただし、試算をはじいた和田木氏は「これは理論値であって、物理的に200棟の工場を建設するのは無理」として、製造技術の改善で歩留まりを高めたり、データの圧縮などを行うことで、実際にはそれだけの工場を建てなくても済むと見ている。
◇技術革新で省電力化
データセンターに置くサーバーはこれまでHDDが主流だった。HDDはディスクを高回転させてデータを書き込んだり読み込む仕組みで、低価格が売り物だった。一方で、回転させるモーターの電気代がかかる。その上、モーター回転で発生する熱もサーバーの動作に悪影響を与えていた。
フラッシュメモリーはHDDより読み書きのスピードが速い。モーター駆動は不要なので熱も発生しない。しかし、価格が高いのが難点だった。情報量1ビット当たりの単価では、NANDはHDDより7~8倍高く、データセンターも初期投資に二の足を踏んでいた。
ところが最近、フラッシュメモリーは技術革新によって、価格の高さを補う大容量・省電力化に成功した。