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【直前!米大統領選】トランプ氏の逆転シナリオ

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 ◇優勢保つクリントン氏

 

 

安井明彦

(みずほ総合研究所欧米調査部長)

 

 11月8日に迫った米国大統領選挙は、民主党のヒラリー・クリントン氏に有利な構図である。米メディアのリアル・クリア・ポリティクスによると、10月10日時点の世論調査では、クリントン氏の支持率が47・9%、ドナルド・トランプ氏が42・1%と5・8ポイントの差がついている。トランプ氏にとっては、過去の女性蔑視発言を収めた映像が明らかにされたことが猛烈な逆風となっている。有力者が次々とトランプ氏への支持を撤回するなど、共和党は内紛状態だ。このまま行けばクリントン氏の当選が濃厚である。

 ではトランプ氏の逆転はないのか。その可能性を考えたい。

 米国の大統領選挙の投票結果は、州ごとに集計される。全米50州と首都ワシントン(コロンビア特別区、DC)には、人口に応じた大統領選挙人が割り当てられる。選挙人の総数は538人であり、過半数の270人を獲得した候補が、次の大統領になる。

 ただし、大半の州では勝敗が固定化している。過去4回の選挙では、18州とDCで民主党、22州で共和党が4連勝を収めてきた。勝者が入れ替わる「スイング・ステート」は10州しかない(図1)。

 共和党のトランプ氏が勝つには、まずこのスイング・ステートでかなり勝たなければならない。トランプ支持者の中核は、製造業で働く白人労働者である。トランプ氏にとっては、白人票を最大限に生かすことが、勝利への近道だ。

 スイング・ステートでは、アイオワ、インディアナ、オハイオの中西部3州が標的となる。これらの州では、有権者の8割以上を白人が占めている。もっとも、この三つの州だけでは、トランプ氏の勝利はおぼつかない。共和党と民主党のあいだには、地力の差があるからだ。

 勝敗が固定化している州の選挙人を基礎票と考えると、民主党の242人に対し、共和党は180人と大きく後れを取る。トランプ氏が中西部のスイング・ステート3州(選挙人35人)で勝っても、基礎票と合わせた選挙人は215人。過半数の270人には届かない。

 

 ◇非白人票の壁

 

 中西部の3州だけでなく、トランプ氏がスイング・ステートで勝利を積み重ねるには、非白人票が壁になる。

 非白人票は、トランプ氏の弱点だ。9月下旬に米ワシントン・ポスト紙が行った世論調査では、白人の6割弱がトランプ支持、4割弱がクリントン支持なのに対し、非白人は7割強がクリントン氏を支持。トランプ氏を支持する非白人は、ようやく2割を超える程度である。

 ヒスパニックの増加を背景に、スイング・ステートでも、非白人の存在感が高まっている。バージニア、ノースカロライナ、フロリダ、ネバダ、ニューメキシコの五つの州では、白人の比率が7割を割り込む。最も比率が低いニューメキシコでは、白人は4割強と、既にマイノリティーである。

 トランプ氏がスイング・ステートで非白人の比率が高い5州を落とすと、………


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