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特集:もうかるシェア経済 2017年8月8日号

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外国人に人気の古民家宿「ちい庵」(徳島県)
外国人に人気の古民家宿「ちい庵」(徳島県)

◇個人のモノ、空間、スキル

◇人生や社会を変える起爆剤に

 

「地方にある素晴らしい観光資源を世界に伝え、訪日観光のリピーター客を増やしたい」(米ホームアウェイの木村奈津子・日本支社長)──。

 

 米エアビーアンドビーと並ぶ世界最大級の民泊会社が、日本の過疎地帯を世界有数の観光資源に変えようとしている。今年4月、同社は、せとうちDMO(観光地域経営組織)と提携し、瀬戸内海の宿泊施設のプロモーションに乗り出した。

 

 

 ホームアウェイは、所有者が利用していない別荘などを1棟丸ごと貸し出す「バケーションレンタル」の世界最大手。月間のサイト訪問者は4000万人、年間取扱高は1兆6000億円で、その規模はJTBに匹敵する。

 

 一方、せとうちDMOは、2016年、瀬戸内海を囲む7県(兵庫、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛)が観光推進のために設立した官民一体の組織だ。ホームアウェイとの提携を選んだ理由の一つに過疎化による深刻な空き家問題がある。

 

 瀬戸内地域には古民家など歴史的な建物が多数あるが、そのうち3~4割が空き家と言われる。江戸後期から昭和初期に建てられた建物が多く、放置すれば自然倒壊する恐れがある。せとうちDMOはこうした空き家をリフォームして、簡易宿泊施設として提供する事業に乗り出そうとしている。

 

 日本情緒にあふれる古民家は外国人に人気が高い。日本ビジネスを拡大したいホームアウェイにとっては、品ぞろえ強化につながる。同社のサイトでグローバルな広告宣伝を展開すれば、空き家が有望な観光資源に生まれ変わるというわけだ。

 

 

ちい庵はいろりのある純和風の造り
ちい庵はいろりのある純和風の造り

  せとうちDMOが業務提携するちいおりアライアンス(徳島県三好市)の「ちい庵(おり)」は、茅ぶきの古民家を改修した宿泊施設。最寄りの土讃線大歩危(おおぼけ)駅から車で約50分、「日本のチベット」とも言われる山深い場所にぽつんと建つ一軒家だが、10月までほぼ予約が埋まる人気の宿だ。 

 

  築300年超の民家を12年に5500万円かけて改修した。稼働率は年間で50%、夏場は80%から90%になることもある。

 

 いろりのある純和風の造りだが、トイレや浴室などの設備は新しい。1棟貸しで、1人当たりの費用は1泊1万2000円前後から。利用客の4割が外国人で、欧米からの観光客が多いという。

 

「人里離れた何もない場所こそ、観光客にとっては魅力がある」とせとうちDMOグループの瀬戸内ブランドコーポレーションの木村洋氏は話す。対象とする古民家は、観光地の周辺だったり、交通インフラが整った場所である必要はないという。すでに建物の所有者や行政などから30件以上の問い合わせが寄せられているという。

コスプレには外国人観光客も興味を持つ(長崎県の島原城)
コスプレには外国人観光客も興味を持つ(長崎県の島原城)

◇島原城を「レンタル」

 

 長崎県島原市では今年3月、市のシンボルである島原城が丸ごと「コスプレ」イベントに貸し出された。仕掛けたのは、スペースレンタル大手の「スペースマーケット」(東京都新宿区)だ。

 イベントでは、スペースマーケットのサイトを通じ、天守閣前の広場を借りた野外キャンプや撮影会「島原コスプレの乱」への参加者を募集。撮影会には、全国からアニメキャラクターの格好をした愛好家が100人以上集まった。

 

 今回のイベントでは、宣伝を兼ねて島原市が無料で島原城を貸し出したが、スペースマーケットのサイトを通じて、誰でも1日48万円で借りることができる。同社の重松大輔社長は、「人口が減る中、地方自治体も公共施設の稼働率を上げるためにも、イベントなどで活用したい」と話す。

 

 同社のサイトでは、奈良市内から車で2時間の山間の廃校も人気だ。NPO法人「宇陀カエデの郷づくり」が運営する元小学校の建物で、毎週末、関西一円からコスプレ愛好家が集まり、撮影会が催される。利用者の4割がサイトで「撮影ポイント」などのレビューを残しており、それが、また、新たな利用を喚起している。

 

 ◇駅前で荷物預かる

 

 駅のコインロッカーの代わりに、喫茶店や小売店の店舗で荷物を預かるシェアサービスも登場している。「エクボ」(東京都渋谷区)は今年1月から渋谷駅周辺でサービスを開始した。ネットやスマホで行き先を入力すると、荷物を預かってもらえる飲食店や物販店などが表示される。日本語、英語、中国語、韓国語の4言語に対応している。

 

 ネット上で予約し、店舗を訪ねれば、日本語ができなくても店頭で預かってもらえる。ベビーカーやゴルフバッグなどの大きな荷物も対応可能だ。店舗側は荷物をスマホで撮影し、顧客のスマホに転送、それが引換券になる。

 

 同社の工藤慎一社長は日本のコインロッカーの不便さからこのサービスを思い付いた。店舗にとっても集客になり一石二鳥だ。今では都内だけでなく、京都、大阪、福岡でビジネスを展開している。

(稲留正英、花谷美枝・編集部)

週刊エコノミスト 2017年8月8日号

定価:620円

発売日:2017年8月8日号



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