巨大プラットフォーマー
規制の防波堤は利用者の信頼
インターネットの覇者となった巨大IT企業が、世界を揺るがせている。栄枯盛哀葉世の常。新覇者は誰だ。
個人情報流出問題でフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が米議会で証言に立った4月。米政府によるIT企業に対する規制強化の観測が強まる中で発表した2018年1~3月期決算で、フェイスブックは四半期ベースで過去最高の純利益を出した。稼ぎ頭の広告収入が前年同期比1・5倍に増え、驚異的な収益力を見せつけた。
世界を代表するIT企業のグーグル、アップル、アマゾン、フェイスブック、ネットフリックス、アリババの6社の時価総額合計は3兆5531億ドル(約388兆9578億円、5月7日現在、図1)。日本の国内総生産(GDP)の7割に達する規模で、アリババが上場した14年比で2倍超に膨らんだ。ITや人工知能(AI)による第4次産業革命を牽引(けんいん)する企業としてマネーを吸い寄せる。
これらの企業は、ネットを使ったヒトとヒト、ヒトと企業、そして情報を結ぶ仕組み(プラットフォーム=基盤)を作り、情報を集約して収益化するビジネスモデルから「プラットフォーマー」と呼ばれる。
基本ソフト(OS)「ウィンドウズ95」(1995年)が世界を席巻したパソコンから、アップルのアイフォーン発売(07年)を機にスマートフォンへと情報端末の主役が移る中で、プラットフォーマーは急速に成長してきた。今後は音声認識のAIアシスタント機能を使った「AIスピーカー」が端末の主力になると見られており、各社は開発を急いでいる。
◇「ファン」離れの恐れ
プラットフォーマーは、メーカーを主とする20世紀型の大企業とは大きく異なる特徴を持つ。
20世紀型の大企業は、商品やサービスを作ることで価値を生み出し、消費者に供給する。企業と消費者は一方通行の関係にあり、独占企業が優越的な地位を利用して値上げをすることで、しばしば対立。政府が独占禁止法などで規制し、消費者を保護してきた。
ところが、プラットフォーマーは情報交換や取引の場を作ることに価値を見いだす仲介者の立場だ。無料もしくは従来よりも低価格でサービスを提供するため、利用者からの好感度は高い。
また、プラットフォームは取引の場であると同時に、巨大な広告媒体でもある。グーグルがその典型で、持ち株会社アルファベットの売上高の85・5%をグーグルの広告収入が占める。
世界のデジタル広告市場は10年の533億9900万ドルから、17年は1956億7200万ドルに成長し、総広告費に占めるデジタル広告の割合は10年の12・6%から17年は34・3%に拡大した(電通イージス・ネットワーク調べ)。18年は38・3%になり、テレビ広告費(35・5%)を初めて抜くと予想されている。
だが、約8700万人もの個人情報が流出したフェイスブックの問題により、個人情報を武器に広告収入を得るプラットフォーマーのビジネスモデルには不信感が高まっている。既存の税体系から逃れ、小売業などの事業者との軋轢(あつれき)を生んできたアマゾンなどのプラットフォーマーには、以前から規制が検討されてきた。
つまり、利用者の信頼がなくなれば、政治の圧力に対する防波堤を失う。だがその一方で、そうした規制は「第4次産業革命に水を差すことになりかねない」(みずほ総合研究所の長谷川克之市場調査部長)との見方もある。
(花谷美枝・編集部)
(池田正史・編集部)