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2020年4月14日号 週刊エコノミスト

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コロナ不況 残る会計士、消える税理士


発売日:4月6日

定価:700円


2020年4月21日 週刊エコノミスト

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コロナ相場に勝つ日本株 上場銘柄の見極め方

発売日:4月13日

定価:670円


2020年4月28日 週刊エコノミスト

2020年5月5・12日合併号 週刊エコノミスト

2020年5月19日号 週刊エコノミスト

第60回(2019年度)エコノミスト賞

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藤原雅俊・青島矢一『イノベーションの長期メカニズム』 

  エコノミスト賞選考委員会(委員長=深尾京司一橋大学特任教授・JETROアジア経済研究所長)は、藤原雅俊・青島矢一著『イノベーションの長期メカニズム』(東洋経済新報社)に「第60回(2019年度)エコノミスト賞」を授与することを決めた。授賞式は5月15日に開催予定。藤原・青島両氏には賞金100万円と賞状・記念品が、出版元の東洋経済新報社には賞状が送られる。

 対象作品は19年1~12月に刊行された著書。主要出版社の推薦なども踏まえて、選考委員会で2度にわたり審査を行った。

 最終選考にはこのほか、以下の3点が残った。

▽ 『野生化するイノベーション』(清水洋、新潮選書)

▽ 『グローバル・バリューチェーン』(猪俣哲史、日本経済新聞出版社)

▽ 『日本の水産資源管理』(片野歩・阪口功、慶応義塾大学出版会)


 藤原雅俊ふじわら・まさとし)一橋大学大学院経営管理・研究科准教授)

 1978年広島県生まれ。2000年一橋大学商学部卒業、05年同大学大学院商学研究科博士後期課程修了(商学博士)。京都産業大学経営学部専任講師、准教授を経て13年一橋大学大学院商学研究科准教授、18年4月より現職。京都産業大学在任時の10~11年にコペンハーゲン・ビジネス・スクール客員研究員。

青島矢一あおしま・やいち)一橋大学イノベーション研究センター・センター長)

 1965年静岡県生まれ。87年一橋大学商学部卒業。89年同大学大学院商学研究科修士課程修了。96年マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院博士課程修了。一橋大学産業経営研究所専任講師、一橋大学イノベーション研究センター准教授、教授を経て、2018年4月より現職。


◆講評 特定産業を丹念に調査 技術革新の過程を解明 選考委員長・深尾京司(一橋大学特任教授・JETROアジア経済研究所長)

  2019年度の「エコノミスト賞」の最終選考には4冊の作品が残った。いずれの作品も、今日の重要な経済・社会問題に正面から取り組んだ力作ぞろいであった。さまざまな観点から議論を尽くした結果、特定産業におけるイノベーションを深く掘り下げて分析した『イノベーションの長期メカニズム 逆浸透膜の技術開発史』に授与することを、選考委員会の総意として決定した。著者の藤原雅俊、青島矢一両氏には心からお祝いを申し上げたい。

 

 ◇日本企業に多くの示唆

 

 本書は、4部・13章と序章・終章・補論で構成されている500ページ近い大作である。副題にもあり、本書の研究テーマとなっている「逆浸透膜」とは、水と塩類などの不純物を分離するための、ろ過膜のことである。1950年代から研究開発が始まり、今日、世界中の水処理プラントや、半導体製造工程で不可欠の超純水の生産、医療、食品加工など、さまざまな用途に使われている。世界市場は米ダウ・ケミカル(米デュポンとの経営統合・事業分割後、現デュポンが事業展開)、日東電工、東レによる寡占状態で、東洋紡も数%のシェアを有する。

 対韓輸出規制で話題になったフッ化水素の例が示す通り、日本の化学産業は今日、自動車産業と並ぶ主要輸出産業になった。著者の2人は9年近くをかけて、多数の技術者へのインタビュー、膨大な特許データによる数量分析、化学技術専門誌の探査などを組み合わせ、逆浸透膜が、技術や市場が未成熟で収益性が見通せない製品分野であるにもかかわらず、なぜイノベーションが達成されたのか、高度成長期にはまだ遅れていた日本の化学産業企業がなぜ現在のような高い国際競争力を持つように至ったのかを、説得力を持って明らかにしている。

 カリフォルニア州の水不足と原子力の平和利用を背景とした60年代米国における多額の公的研究開発支援、米国から日本への技術のスピルオーバー(伝播(でんぱ))、次々と明らかになる海水淡水化の技術的困難さ、旧デュポンの退出、M&A(企業の合併・買収)によるマーケットや技術の獲得、実質的にはダウ対日東電工間で争われた決定的に重要な特許係争の行方、開発継続のために救世主の役割を果たした半導体産業の超純水需要、新用途を知る上での顧客の重要性、日本企業によるリストラ下での研究開発部門の生き残り、など波瀾(はらん)万丈のストーリーで、面白い大河小説のような読後感が残った。

 なお、第13章では、累積資源投入量、技術水準、創造価値、利益水準の四つの要素について、相互連関しながら累積効果が働くメカニズムを二次元グラフで説明し、技術の確立などに不確実性がある中でもイノベーションを継続させる要因として「期待」の重要性を指摘している。しかし、その「期待」がどのように生み出されるかについての理論的裏付けは弱く、後付け的な説明の域を出ていない。この点については、期待形成に関する十分な経済学・経営学的理論とは言いがたいと指摘する選考委員もいた。

 ともあれ本書は、特定産業とその技術の発展を丹念に調査することにより、イノベーションという重要課題に直面する日本の産業に多くのことを教える良書であり、日本と米国のナショナル・イノベーション・システムの違いを理解する上でも示唆に富む、エコノミスト賞に値する本である。

 

 ◇「革新」「国際分業」も

 

 清水洋氏の『野生化するイノベーション』にも高評価が集まった。革新的な技術は政府が規制しても国境を超えて移動し、既存の社会秩序を破壊する。本書ではこの現象を「イノベーションの野生化」と表現し、その現象が加速していること、硬直的な日本企業が取り残されていることを、世界経済史、企業行動などにもバランスよく目配りし、自身の研究成果も紹介しながら、包括的に論じている。ただ、日本の生産性停滞についてマクロ経済データのみを使うなど、「分析に深みがない」との指摘があった。

 猪俣哲史氏の『グローバル・バリューチェーン』は、生産プロセスが分割され、国境を超えて配置される今日の新しい国際分業パターンについて、国際産業連関表による最新の分析成果を活用しながら、米中貿易摩擦や、先進国の産業空洞化、途上国の国際分業への参加、などを分かりやすく説明している良書である。ただし、著者自身の研究の部分で、やや古いデータが使われていることや、旧来の産業連関分析の手法を大きく超えた視点が少ない、との指摘があった。

 片野歩、阪口功両氏の『日本の水産資源管理』は、ニシン漁など国内水産業が衰退した理由を、事例も含めて丹念に分析した出色の書である。日本は漁獲量の管理が不十分で、稚魚まで乱獲しており、長期的に成魚が不足する、といった指摘は重要である。共著者の片野氏は水産会社勤務であり、現場を知り尽くしたからこそ書ける分析は、読み応えがあった。ただし、経済学的な分析が不足しているためエコノミスト賞にはそぐわないとの意見があった。

 最終選考に残った4冊以外では、山口慎太郎氏『「家族の幸せ」の経済学』と、井伊雅子・五十嵐中・中村良太の3氏による『新医療経済学』も、重要な社会的課題にレベルの高い理論と分析で挑んだ良書であった。著者たちの今後のさらなる活躍を期待したい。

 

◇エコノミスト賞選考委員

委員長 深尾京司(一橋大学特任教授・ JETROアジア経済研究所長)

■委員 井堀利宏(政策研究大学院大学教授)/鶴光太郎(慶応義塾大学教授)/福田慎一(東京大学教授)/三野和雄(同志社大学特別客員教授) 藤枝克治(『週刊エコノミスト』編集長)

 

2020年5月26日号 週刊エコノミスト

2020年6月2日 週刊エコノミスト


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