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特集:世界史に学ぶ金融政策 マイナス金利の副作用 2016年4月5日特大号

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 ◇イールドカーブのフラット化で金融機関の資金利益が悪化

 

白川浩道

(クレディ・スイス証券 チーフ・エコノミスト)

 

金融緩和のみでデフレに終止符を打つことが極めて困難であるにもかかわらず、日銀はデフレとの戦いをあきらめていない。中国景気への懸念などから国際商品市況の下落基調が強まるや否や、日銀はマイナス金利政策を導入した。大規模な長期国債購入を軸にした量的・質的金融緩和だけではデフレ脱却を達成できないと判断したのだ。

 日銀は少なくとも向こう2年程度は、長期国債の大量購入とマイナス金利政策を併用することになる。しかし、こうした金融政策運営は、やや長い目でみれば信用収縮という副作用をもたらす可能性が高い。

 

 ◇銀行利ざやと利回りの相関

 

 まず、第一に、マイナス金利政策の下では国債の利回りカーブ(イールドカーブ)がさらに“フラット化”(長期債利回りと中・短期債利回りの格差が縮小)し、しかも、そうした状態が長期化する可能性が高い。

 実際、10年物国債利回りと2年物国債利回りの格差(イールドスプレッド)をみると、マイナス金利政策導入前の1月下旬には0・23~0・26%ポイントで推移していたが、3月半ばには0・14%ポイント前後に縮小している。国債のイールドカーブは2年物と10年物の間で0・10%以上もフラット化した。

 そして、第二に、イールドカーブがフラット化すれば、銀行を中心とした民間金融機関の資金利益が悪化する。貸出金利を中心にした資金運用利回りは10年物国債利回りなど比較的長期の市場利回りとの連動性が高い一方、預金金利を中心にした資金調達利回りは2年物国債利回りといった比較的短期の市場利回りとの連動性が高い。10年物国債利回りが相対的に大幅に低下し、イールドカーブがフラット化すると、貸し出し利ざやが圧縮され、資金利益が縮小する。

 こうした関係は、実際のデータから確認される。すなわち、全国銀行でみた総資金利ざや(資金運用利回りから資金調達利息を引いたもの)と国債の10年物・2年物利回りスプレッドの間には安定した高い相関がある(図1)。1999年度以降、国債のイールドカーブはほぼ一貫してフラット化し、銀行の資金利ざやは縮小傾向をたどった。この間、全国銀行の資金利益(資金運用益)は、99年度の10兆円弱から、2012年度以降は8兆円程度に減った。

 2兆円程度の資金利益水準の低下は、一見、大幅なものにはみえない。しかし、毎年の利益水準が2兆円も減れば、その10年間の累積効果は20兆円に及ぶ。全国銀行の狭義自己資本(資本金)が約10兆円しかないことからすれば、2兆円程度の資金利益縮小は、由々しき事態と捉えねばならない。

 

 ◇日本経済への副作用

 

 こうした動きを歴史的な観点から改めて振り返ると、次のようなことが言える。………


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