◇復興・再開発の足かせ
◇土地情報基盤の未整備が招く
吉原祥子
(東京財団研究員)
所有者の居住や生死がただちに判明しない「所有者不明」の土地が、各地に点在している。国土交通省は3月、「所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン」を公表し、本格的な対策に乗り出した。
なぜ、個人の財産であると同時に公共的性格をあわせもつはずの土地(国土)が放置され、所有者不明になるのか。
その大きな要因の一つに相続未登記の問題がある。所有者の死亡後、相続人が相続登記を行わないまま世代交代が進むことで、法定相続人がネズミ算式に増加し、権利関係がより複雑化する傾向にある。
土地の所有者不明化は、公共事業や災害復旧、農林地の集約化、空き家対策などさまざまな土地利用を制約する要因になる。
報道によると、宮城県、岩手県では東日本大震災の津波で被害を受けた土地を自治体が買い取る事業で、買い取り希望があった登記上の土地約4万4725カ所のうち、相続人と連絡が取れないなどの理由で買い取りが進んでいない宅地が全体の17%(7592カ所)に上るという。
こうした問題が各地で顕在化しているが、定量的な実態把握や問題全体の構造分析が進んでいるとは言いがたい。
◇63%の自治体で問題化
東京財団は土地の所有者不明化の実態を把握するため、土地所有者に対する行政関与の代表例であり、問題の定量化がある程度可能と見込まれる固定資産税に着目した。2014年秋に全国1718市町村および東京都(23区)の税務部局を対象にアンケート調査を実施し、52%に当たる888の自治体から回答を得た。
調査の結果……