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ワシントンDC 2016年4月26日号

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指名した人事が承認されない Bloomberg
指名した人事が承認されない Bloomberg

◇銀行委で1年ぶり人事承認

◇政府と議会が落としどころ模索

 

安井 真紀

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 

 米国上院の銀行委員会は3月10日、財務省のテロ・金融犯罪担当次官として、アダム・ズービン氏を承認した。銀行委員会での人事承認は1年ぶりだ。ズービン氏は、15年4月にオバマ大統領からテロ・金融犯罪担当次官に指名された。今後、上院本会議の承認を経て、正式に次官に就任する予定だ。

 ズービン氏の承認は難航した。当初は、11月に銀行委員会が採決する予定だったが、議会でイラン核合意への批判などが強まり、採決は中止された。これに対し、複数の議員は「ズービン氏が国際的な交渉の場で発言力を持つには、“上院の承認を得た財務次官”というステータスが不可欠」と指摘。民主党のブラウン上院議員は、「イラン核合意に賛同しないからといって、米国の安全を使命とする要職の人事を承認しないのは、お門違いだ」と批判した。テロ・金融犯罪担当次官は、イスラム国(IS)への資金の流れの監視などを取り締まる役目がある。

 こうした経緯を経てズービン氏の人事が承認されたものの、大統領が指名した人事で上院の承認待ちの案件は、銀行委員会だけで、まだ8件もある。このほか、外交委員会では各国大使、司法委員会では連邦裁判所判事の承認が進んでいない。非軍事部門の人事案件のうち、委員会で承認されても、上院本会議の承認待ちとなっている案件は、3月末時点で62件に上る。

 なぜ、大統領が指名した人事の承認が、これほど上院で滞っているのか。米国憲法第2条第2節は、「大統領は、大使、各省の長や局長、最高裁判所判事などの連邦公務員を指名し、上院の助言と承認を得て任命する」と定めている。政治任用者は、大統領が交代すれば原則として代わる。このため、米大統領選で政権奪還を狙う共和党にとって、民主党のオバマ大統領の残りの任期中に、共和党が主導する上院で、大統領が指名した人事を積極的に承認する動機はないのだ。

 

◇共和党への批判

 

 中でも上院銀行委員会は、共和党のシェルビー氏が委員長に就任した15年1月以降、1年以上にわたり人事承認が停滞。シェルビー委員長は、2人の空席が続いている米連邦準備制度理事会(FRB)理事などの指名人事には「(委員長の出身地である)アラバマ州の大統領予備選が終わる3月1日まで手を付けない」と明言していた。その理由はオバマ大統領がいまだにFRBの副議長を指名しないため。副議長ポストは、10年に成立した金融改革法(ドッド・フランク法)で新設された。

 人事が委員会や本会議で承認される見通しが立たないうえ、上院の人事承認の手続きは、米連邦捜査局(FBI)による詳細な経歴調査や、政府倫理法で定める膨大な書類の提出を伴う。その結果、銀行委員会が関係する、財務省の国土安全副アドバイザーや米国輸出入銀行(米輸銀)の理事などの職で、候補者の指名辞退が相次いでいる。このため「要職の空席は公務に支障をきたし、ひいては共和党への批判を招く」と、共和党内からもシェルビー委員長への圧力が強まっていた。そうした中でのズービン氏承認だ。

 オバマ大統領は、米輸銀の理事として、共和党寄りのマクワターズ氏を1月に指名した。一方、3月16日には、急逝したスカリア最高裁判事の後任として、民主党寄りのガーランド氏を指名した。これらの人事には、政権側による上院(共和党)への歩み寄りと駆け引きが垣間見える。今後、大統領が指名した人事の上院承認が加速するかどうかは、政権側と議会が着地点を見いだせるか否かにかかっている。


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