◇電力事業は低収益の危うい構造
◇調達価格が経営を左右
池田正史
(編集部)
電力自由化に水を差す出来事が2月下旬にあった。日本ロジテック協同組合(東京都中央区)が自己破産申請を検討していることが明らかになったからだ。4月中にも申請すると見られている。
同組合は、すでに自由化されていた工場やビルなど高圧部門向けの電力小売り事業でシェア5位の新電力大手だ。4月1日にスタートした家庭向けなど低圧部門向けにも参入を目指して昨年8月に経済産業省へ登録を申請。しかし、今年2月に「財務状況の悪化」などを理由に申請を取り下げた。
2007年11月設立の同組合は、もともと物流・倉庫分野を中心に外国人技能研修生の受け入れや公共事業の共同受注といった事業を手掛けていた。10年に高圧部門向けの特定規模電気事業者(PPS)の許認可を取得し、電力小売り事業に参入。電力会社や自治体の廃棄物発電、太陽光発電などから余った電力を一括購入することで電力の仕入れ値を抑え、自治体や企業など向けに低価格で売る事業モデルで急成長した。
販売電力量は13年4月の1万9554メガワット時から、14年4月の5万3665メガワット時(前年同期比2・7倍)、15年4月の12万2276メガワット時(同2・3倍)と文字どおり「倍々ゲーム」で伸びてきた。自己破産の検討が明らかになる直前の同12月には、同4月比1・3倍の15万9239メガワット時に上った。15年3月期に約555億円とされる売上高の9割超を電力小売り事業で稼いでいた。
そんな成長企業がつまずいたのはなぜか。東京商工リサーチ情報部の増田和史課長は「自前の発電所を持っていないため電力を外部から調達するしかなく、経営状況は仕入れ値に左右されやすい。急成長に伴い膨らんだ資金需要に対応できなかったのではないか」と分析する。顧客が増えればそのぶん、電力の調達や体制整備に必要な資金が膨らむ。その手当てに失敗すれば、資金繰りに窮することになる。同社だけではない。電力会社間の消耗戦はすでに始まっているようだ。………