◇50年連続で増配の銘柄も
尾藤 峰男
(資産運用アドバイザー)
米国の株式市場は、世界時価総額の40%を占める最大の株式市場だ。かたや日本は8%にすぎず、過去20年間の日本株のパフォーマンスは、世界の主要市場の中で最もパフォーマンスが悪かった。米国株市場には利益を積極的に株主に還元し、持続的に成長し続けている世界的企業が数多くある。マイナス金利の環境下でも持続的に資産を増やすため、米国株を投資対象として検討する価値は十分にある。
米国で昨年、大きな話題となったのが、その前年に92歳で亡くなったバーモント州の男性の保有資産である。男性はガソリンスタンド店員やデパートの守衛で生計を立て、つましい生活を送っていたが、死後に家族らが遺産を調べたところ、なんと800万ドル(約8億6000万円)もの価値の株式を持っていたことが分かった。しかし、男性は何も特別な投資法をしていたわけではない。
男性の保有銘柄を調べると、トップ3は金融大手のウェルズ・ファーゴと日用品メーカーのプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やコルゲート・パルモリーブ。このほか、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)など、全体で80銘柄を超えていた。一方、ハイテク株は保有していなかった。つまり、配当を出し続けている身近な銘柄にコツコツと長期投資した結果、莫大(ばくだい)な金額へと膨らんだのである。これは、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の投資法に通じるものがある。
米国株は長期間、増配を続ける銘柄が数多くある。その一例が、25年以上、増配を続ける銘柄から選んだ「S&P500配当貴族指数」の構成銘柄で(22~23ページ表1)、バーモント州の男性が保有していたP&Gやコルゲート、J&Jも含まれている。P&Gが59年連続、スリーエムが57年連続など、50年以上増配を続ける銘柄もある。こうした銘柄は10年、20年と長期にわたって成長を続け、グローバルに事業展開する優良大型株が多い。ちなみに、日本で配当貴族に該当するのは花王(26年連続)のみである。
このような銘柄を長期保有すると、増配を続けるので取得時点の株価に対する配当利回りがどんどん上がり、株価自体も上昇していく(表2)。例えば、00年1月にJ&J株を取得し、15年末まで保有したとすれば、配当利回りは取得時の1・3%から6・3%へ上昇し、株価も2・2倍。1990年1月取得なら株価は13・8倍、80年1月取得なら62・2倍で、配当利回りも取得時より大幅に上がっている。こうした銘柄から業種を分散して8~10銘柄を持てば、分散効果でポートフォリオ全体のリターンが安定する。………