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経営者:編集長インタビュー 田口三昭 バンダイナムコホールディングス社長 2016年5月3・10日合併号

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田口三昭 バンダイナムコホールディングス社長
田口三昭 バンダイナムコホールディングス社長

◇日本のキャラクターで世界をつなぐ

 

「機動戦士ガンダム」「ドラゴンボール」など人気アニメーション・マンガを中心にプラモデルや玩具を展開するトイホビー、家庭用・業務用ゲームを中心とするネットワークエンターテインメント、既存の人気映画・音楽のほか新作にも取り組む映像音楽プロデュースの3領域を事業の柱に据える。

── ガンダム、ドラゴンボールは世界的な人気を得ていますね。

田口 日本の人気キャラはアジアでも人気があります。欧米にもファンがいます。フランスで開かれる、日本のコンテンツを楽しむイベント「ジャパンエキスポ」では、海賊マンガ「ワンピース」、忍者マンガ「NARUTO」の登場キャラのコスプレ(扮装)をする人も多いです。

 最近では、アニメ風の架空アイドルグループ「ラブライブ!」がヒットしました。その声優がユニットを作ってライブ活動をしたところアニメファン中心に注目を集めました。東京、中国の上海、台湾などでチケットが完売、昨年末はNHKの紅白歌合戦にも出場するなど、ガンダムに匹敵する人気が出てきました。

 キャラクター商品を提供するだけでなく、国境を越えてファン同士がコミュニケーションを取ってつながるといった共通の文化を作る役割も担っていると考えると、ぞくぞくするようなやりがいを感じます。

── 腕時計型おもちゃ「妖怪ウォッチ」が大ヒットしました。

田口 妖怪ウォッチだけで15年度は552億円、16年度は303億円の利益を出しました。ウォッチは累計で525万個、ウォッチにはめ込んで遊ぶメダルは約4億枚売れ、文字通りのお化け商品になりました。15年度に売れすぎたので、さすがに16年度は反動減がありました。

── 経営戦略の軸は何ですか。

田口 キャラクターコンテンツという知的財産(IP)で稼ぐ「IP軸戦略」です。旧バンダイのころから競争力のある多くのコンテンツを有してきました。また、旧ナムコも良質なゲームコンテンツを持っていました。加えて、最終的におもちゃにするか、ゲームにするか、という出口戦略も豊富です。おもちゃにすると売れるがゲームにすると売れないコンテンツがあれば、その逆もあります。それを把握して魅力的な商品に育てようという戦略です。

 

バンナムHDは、玩具メーカーのトップ企業だったバンダイとゲームソフトメーカーの雄、ナムコが2005年に経営統合して誕生した。統合当初は企業風土の違いから伸び悩んだ時期もあった。

 

── バンダイとナムコの統合の効果を感じたのはいつごろですか。

田口 実は、統合後の10年3月期には、赤字に転落しました。もともと、バンダイはスピード優先の経営でした。というのも、キャラクタービジネスは人気があるうちに消費者に届けなければなりません。一方、ナムコは、じっくり時間をかけて面白いゲームを生み出してきたクリエイティブ集団でした。この異なる二つの企業文化が混ざった開発陣に対し、「最速で良質なものを」と要求した結果、互いの長所が失われました。

 コンテンツごとの出口戦略は異なります。それに応じて開発も異なるということを社員が理解するには時間がかかりました。15年3月期ごろからようやく、経営目標に掲げた数字が出せるようになりました。

 

◇アジアに注力

 

── 海外展開はどうですか。

田口 11年から始めたガンダムの海外向け情報発信サイト「ガンダムインフォ」では、ガンダムシリーズの無料映像を配信しており、まだ進出していない国や地域にも視聴者がいて、視聴数は累計6億回以上に上ります。そうした国にきめこまかく商品を送り込んでいきます。

 海外でのイベントを増やし、販売の拠点としてショーケース的な機能を持たせた旗艦店を開設する構想もあります。全世界を視野に入れていますが、まずアジアに注力します。

── 新規分野の開拓は。

田口 ゲーム分野の新しいユーザーを取り込むため新製品を投入しています。当社が運営する屋内型テーマパーク「ナンジャタウン」などに導入したのが、壁一面を画面に使う釣りゲーム「爆釣りスピリッツ」です。画面に向かって釣り竿型コントローラーを振ると巨大なサメなどがかかって大迫力で暴れます。その衝撃が竿を震わせるという仕組みで、臨場感が受けています。

 さらに、VR(仮想現実)エンターテインメント研究施設「VRゾーン・プロジェクト・アイ・キャン」を4月15日から半年間、東京お台場に開設します。眼鏡型のVR装置を着けると、例えば電車の運転手の視点が上下左右、全方位で再現され、まるで電車を運転している気分を味わうことができ、大人も楽しめます。

 アニメ風のアイドルキャラの育成シミュレーションゲーム「アイドルマスター」は一から作ったコンテンツで、映像やゲームで展開しています。これまでターゲットに入っていなかった「大人女子」と呼ばれる30歳前後の女性向けに男性アイドル版を作ったところ人気になりました。

── 今後の目標は。

田口 一定規模の収益の軸を作り、新しいキャラクターコンテンツに再投資できる財務体質を目指します。18年3月期に売上高6000億円、営業利益600億円が目標です。

 

                Interviewer=金山隆一・本誌編集長 構成=大堀達也・編集部

 

■横 顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 係長として一番働いていたころです。アパレル、トイ、カード、そのほか新規事業など幅広くチャレンジしました。

Q 自分を変えた本は

A 新田次郎の山岳小説『孤高の人』です。登山が趣味なのと、主人公が一人で何かをやり抜く物語が好きです。

Q 休日の過ごし方

A 会社のイベントに出かけていって、ユーザーの反応を見ていることが多いです。

 

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■人物略歴

たぐち みつあき

秋田県出身。1977年秋田県立角館高校卒業。1982年明治学院大学法学部卒業後、バンダイ(現バンダイナムコホールディングス)入社。2003年6月取締役。15年6月に社長就任。57歳。

 


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