◇経済政策で浮揚
◇政治政策で下降
鷲尾香一(金融ジャーナリスト)
安倍政権の支持率の推移をたどると、おおむね経済政策を打ち出した時は支持率上昇、政治政策の時は支持率下降の傾向がある。ただ、アベノミクスの効力も薄れつつあり、今後予想される経済対策や消費税増税の扱いが伝家の宝刀の切れ味を発揮できるかは疑問である。
◇発足時は支持率52%
2012年12月26日、安倍晋三政権は誕生する。首相は、デフレ経済を克服するため、「大胆な金融緩和措置」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」を「三本の矢」と称した一連の経済対策を打ち出す。この時の安倍政権の内閣支持率は52%。
年が明け13年3月20日、黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任。待ちに待った三本の矢の要となる「大胆な金融緩和措置」を実行に移せる日銀総裁が誕生した。「デフレ脱却、失われた20年からの回復」の可能性に期待が膨らみ3月の内閣支持率は驚異の70%に跳ね上がった。
4月4日、黒田日銀総裁は、のちに“黒田バズーカ”と呼ばれる「量的・質的金融緩和」の実施に踏み切った。日銀の金融施策を好感した株価は順調に上昇を続け、前年12月17日に9828円だった日経平均株価は5月23日には1万5000円台を付ける。
安倍首相は10月1日、14年4月から消費税率を8%に引き上げることを表明する。それでも、「アベノミクスによる景気回復」のムードが持続していたことで、内閣支持率は10月が57%、11月が54%と高水準を維持した。
だが、12月6日、安倍首相の政治目標の一つでもある特定秘密保護法が成立すると、12月の内閣支持率は50%を割り込み、49%に低下、不支持率は8ポイント上昇し、34%に達する。
14年4月、消費税率が実際に8%に引き上げられると支持率は徐々に低下、さらに、7月1日、臨時閣議で憲法9条の解釈を変更し、「集団的自衛権の容認」の方針を決定すると、支持率は47%に低下した。
消費税率8%への引き上げの影響は予想していたよりも大きく、かつ長引き、さらに黒田日銀総裁が宣言した「2%の物価目標」は実現が困難になってきた。10月31日、日銀は量的・質的金融緩和の追加緩和(いわゆる黒田バズーカ2)を決定する。日銀の個別の政策発動は政府の指示によるものではないが、事実として最初の金融緩和に比べて支持率引き上げの効果ははるかに薄れていた。
安倍首相は11月18日、15年10月の消費税率10%への引き上げを17年4月に先送りすると表明、国民に信を問うとして衆議院を21日解散すると宣言する。それでも支持率はジリジリと低下を続けた。
総選挙は戦後最低の投票率だったが、自公与党に対抗できる政策を民主党が打ち出せず与党の圧勝に終わった。安倍首相は12月24日、第3次安倍内閣を発足させる。12月の支持率は43%にまで低下していたが、この時の安倍首相の頭にあったのは、安全保障関連法の改正だった。
◇安保関連法案で32%に低下
翌15年は戦後70周年。安倍首相は日本の安全保障の枠組みを変えることに力を注ぐ。………
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この記事の掲載号
定価:720円(税込)
発売日:2016年4月25日
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待機児童ゼロで解決したと思うな