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震災前よりも発電所48基分のエネルギー消費が減った? 2016年5月3・10日合併号

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◇進んだ省エネ

 

横山渉(ジャーナリスト)

 

 工場やオフィス、運搬や家庭で実際に消費されたエネルギーのことを「最終エネルギー消費」という。それが2011年3月11日の東日本大震災以後、大幅に減っている。経済産業省が毎年発表している「エネルギー需給実績」によると、大震災前の10年度と14年度(速報ベース)の最終エネルギー消費を比べると、1060PJ(ペタジュール:ジュールは仕事・エネルギー・熱量の単位)、7・2%も減少しているのだ。と言ってもピンと来る数字ではないだろうから、試しに100万キロワット級発電所の年間エネルギー消費量に換算してみると実に48基分の数字に匹敵する。その計算は後述するとして、最終エネルギー消費の言葉の意味をもう少し掘り下げてみよう。

 原油や石炭、天然ガス等の各種エネルギーは、電気や石油製品などに形を変える発電・転換部門(発電所、石油精製工場等)を経て、最終的に消費される。発電・転換部門で生じるロスまでを含めて国全体が必要とするすべてのエネルギーの量を「1次エネルギー供給」、最終的に消費者に使用されるエネルギー量を「最終エネルギー消費」という。最終消費者に供給されるエネルギー量は、発電・転換部門で生じるロスの分だけ減少することになり、国内1次エネルギー供給を100とすれば、最終エネルギー消費は69程度である。

  最終エネルギー消費が減ったことは何を意味するのか。文字通り、エネルギーを使わなくなったということであり、省エネが進んだとも、エネルギー効率が改善したとも言える。

  震災前10年度の最終エネルギー消費1万4698PJは、14年度には1万3638PJに減っている。発電所が発生させるエネルギー量は、理論値で1キロワット時=3・6MJ(メガジュール)、稼働率を01~10年の原発の設備利用率平均67・8%を参考に70%と想定する。これらを基に計算すると4年間の減少分は100万キロワット級で48基分に相当する。1060PJの減少の内訳は電気だけでなく車の燃費改善などさまざまであるから、単純に48基分の発電所が不要になったというわけではない。

  では、主にどんなエネルギーの消費が減ったのか、あるいは増えたのか。発電・転換部門で生じるロス分を除かない1次エネルギーでみてみよう。

  1次エネルギーの国内供給は、10年度比8・5%減となった。14年度は国内すべての原子力発電所が稼働を停止したことにより、原子力の比率がゼロになっている。そのマイナス分を補ったのは20・3%増の天然ガス(LNG:液化天然ガス)と2・7%増の石炭だった。また、再生エネ(自然エネ+地熱)も15・3%増えている。原発停止による燃料転換が進んでいることがわかる。

 

 ◇「絞りきった雑巾」でない

 

 日本は1970年代の2度の石油ショックを契機に、製造業を中心に省エネ化が進んだ。90年代は原油価格が低水準だったこともあり、エネルギー消費は増加したが、00年代には再び原油価格が上昇して、04年度をピークにエネルギー消費は減少傾向になった。日本は省エネ努力により、「絞りきった雑巾」とされ、これ以上の省エネは難しいと言われた時代が長く続いていたが、あれはウソだったのだろうか。自然エネルギー財団の大野輝之常務理事は「エネルギー機器利用の最適化、高効率設備の導入など、賢い節電が行われるようになっている」と語る。

  大野氏はとくに製造業で、まだまだエネルギー効率の改善が可能だと指摘する。「エネルギー白書2014」を見ると、73年の石油危機以降、85年あたりまでは改善が進んだものの、それ以降20年あまり、ずっと停滞してきたようだ。………

この記事の掲載号

定価:720円(税込)
発売日:2016年4月25日

   週刊エコノミスト 2016年5月3・10日合併号

 

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