編集部/監修=上坂幸三(税理士)
Ⅰ 課税明細書
土地や家屋などの固定資産を所有していると毎年4~6月ごろ、市町村(東京23区は東京都)から固定資産税、都市計画税の納税通知書と課税明細書が届く。税額だけを確認する人も少なくないものの、課税明細書にはさまざまな情報が盛り込まれている。課税明細書の様式は市町村によって異なるが、ここでは東京都が発行する東京23区の課税明細書(土地・家屋)のモデルを基に、固定資産税を見直す手始めとしてその見方を押さえたい(図1)。
課税明細書には、その市町村に1月1日時点で所有する土地・家屋のリストが載っている。その前年に売却したり取り壊したりした土地・家屋が残されていないか、まずチェックしよう。建物を取り壊した時は、所有者は1カ月以内に建物滅失を登記することが義務付けられ、滅失登記は市町村に通知される。すでに登記しているのに反映されていない場合は市町村のミス。また、未登記でも課税されている家屋を取り壊した時は、市町村に家屋滅失届を出す。
◇「現況」優先で課税
土地の課税明細書にはまず、その土地が所在する住所が1筆ごとに掲載されているが、この住所は登記上の所在地や地番で、住居表示と一致するとは限らない。次に、土地の地目の欄があり、上から「登記地目」「現況地目」「非課税地目」と並んでいる。登記上の地目と実際の利用形態が異なる場合には、実際に即した現況地目によって課税される。図1の場合はいずれも「宅地」だが、地目によって土地の固定資産税評価額の評価方法が異なるため、地目の現況が誤っていないか確認したい。
「地積」は土地の面積のこと。「登記地積」(登記されている面積)と「現況地積」(実際の面積)が異なる場合には、現況面積で課税する。不動産の業界用語では、登記地積より現況地積のほうが大きいことを「縄のび」、逆に現況地積のほうが小さいことを「縄ちぢみ」というが、古くからの土地では縄のび、縄ちぢみは決して珍しいことではない。土地の広さも現況で評価するため、実測より広い場合には市町村に届け出よう。
次の「価格」とある欄が、「固定資産税評価額」のこと。その土地が面する道路に付けられた「固定資産税路線価」や土地の形状、条件を基に算出されている。固定資産税額を計算する際のベースとなっており、評価額が異なると税額にも影響する。固定資産税評価額が妥当かどうかの判断は簡単ではないが、おおよその目安として「固定資産税評価額÷土地の面積」が路線価を上回っていないかをまず確かめたい。分譲マンションなど共有の土地は、1筆全体の評価額が載っている。
◇「住宅用地」の特例
固定資産税路線価は、一般財団法人「資産評価システム研究センター」が運営するホームページ「全国地価マップ」(http://www.chikamap.jp/)で、全国どこでも確認できるようになっている。全国地価マップにはこのほか、相続税路線価や地価公示価格、都道府県地価調査価格も掲載されている。固定資産税評価額は地価公示価格や地価調査価格の約7割で評価されることになっており、所有する不動産の近隣にある調査地点の価格とも比較したい。
「価格」の欄の下にある「固定本則課税標準額」「都計本則課税標準額」とは、固定資産税評価額を基に計算した固定資産税と都市計画税の本則の課税標準額のこと。住宅用地の場合は「住宅用地の特例措置」により、200平方メートルまでの土地(小規模住宅用地)の固定資産税の課税標準が固定資産税評価額の6分の1、都市計画税は3分の1になる。また、200平方メートルを超える部分(一般住宅用地)は固定資産税の課税標準が3分の1、都市計画税は3分の2となる。
「固定課税標準額」「都計課税標準額」は、それぞれの本則課税標準額に「負担調整措置」を施したもの。負担調整措置とは、本則課税標準額に対する前年度の課税標準額(負担水準)の割合に応じて、今年度の課税標準額を緩やかに引き上げていく仕組みを指す。負担水準が100%以上であれば本則課税標準額がそのまま適用されるが、負担水準が低いほど今後も毎年、課税標準額の上昇が続くことになる。……
(『週刊エコノミスト』2016年6月7日号<5月30日発売>30~33ページより転載)