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【がんは薬で治る】Q&A がん免疫療法薬 2016年7月19日号

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◇治療の選択広がる

 

高野聡(毎日新聞医療福祉部編集委員)

 

 Q1 がん免疫療法薬って、どんな薬?

 A 人の体に備わった免疫機構を利用したがん治療薬を指す。手術、放射線、抗がん剤とは別領域の治療法として「第4の治療」と期待されている。吐き気や脱毛など通常の抗がん剤で見られる副作用はほとんどない。

 約60兆個の細胞でできている人体で細胞は絶えず分裂し、新陳代謝を起こしている。細胞分裂で細胞をコピーする際にコピーミスが発生すると、細胞ががん化する。通常1日当たり5000~1万個の細胞ががん化していると考えられるが、大半は大きくなる前に免疫機構によって排除される。がんは免疫機構の排除から逃れたがん細胞が大きくなって発症したものだ。そこから、免疫機構を利用すれば、がんが治療できるという発想が生まれた。

 多様な種類がある免疫細胞のうち、がん細胞と戦うリンパ球の一種、T細胞には、相手が敵か味方かを判断する機能がある。がん細胞は免疫機構から免れるため、T細胞を欺き、T細胞と「手を結ぶ」ことで攻撃をかわそうとする。

 本庶佑・京都大名誉教授が1992年、免疫細胞の表面にあり、攻撃を抑制する分子を発見し、「PD-1」と名づけた。一方、がん細胞が免疫と手を結ぶために作る分子を「PD-L1」という。「オプジーボ」は、一足先にPD-1と結びつき、PD-L1と結合するのを邪魔してT細胞の働きを守り、攻撃を再開させる。

 このタイプの薬は、免疫細胞の分子を「関門役(チェックポイント)」に見立てて「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる。

 日本でがん免疫療法薬は、2014年に初めて承認された。オプジーボは、皮膚がんの一種の悪性黒色腫(メラノーマ)や肺がん患者の約8割を占める非小細胞肺がんが対象。また、T細胞の攻撃を抑えている別の分子に結びつく「ヤーボイ」が、悪性黒色腫で承認されている。

 

 Q2 高い効果がある?

 A オプジーボの国際共同臨床試験では、従来の抗がん剤治療に比べ、有意に生存期間が延長した。国内患者を対象の臨床試験でも薬剤が効いた患者では生存期間が延長し、医師が治癒の可能性も期待するほどだった。

 だが現実の完治例はない。臨床試験では、約20%の患者には有効だった一方で………

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この記事の掲載号

定価:620円(税込)

発売日:2016年7月11日

週刊エコノミスト 2016年7月19日号

 

特集:がんは薬で治る

 

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 インタビュー  本庶 佑 / 国頭  英夫

 

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