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インタビュー:固定資産税を問う 片山善博・前鳥取県知事、慶応義塾大学教授

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◇市町村職員も理解できない複雑さ 

◇「パンドラの箱」を開ける覚悟必要

 

 大きな反響を呼んだ本誌6月7日号の特集「固定資産税を取り戻せ!」。自治省(現・総務省)で固定資産税課長を務めた片山善博・慶応義塾大学教授に考えを聞いた。

(聞き手=金山隆一編集長/桐山友一/種市房子・編集部)

 

── 固定資産税の特集で、編集部に読者から大きな反響が寄せられた。制度が難しくて理解ができないうえ、固定資産税を課税する市町村(東京23区は東京都)に不満をぶつけても、まともに取り合ってもらえないという声がほとんどだった。

■固定資産税制は、市町村の担当職員もなかなか理解できないほど複雑怪奇な仕組みとなり、もはや限界を超えている。税制は納税者の理解と納得の上に成り立つものだが、納税者に直接向き合うはずの市町村の担当職員がきちんと説明できない。固定資産税はすべての市町村が課税する普遍的な税で、大量の納税者がいる。ただ、大半の納税者は税理士の世話にもならず自分で納めなければならない。そうした性格の税はシンプルであるべきで、簡便かつ大量に土地や家屋を評価できる仕組みへと、一日も早く抜本的に変える必要がある。

── なぜこれほど複雑になったのか?

■固定資産税は、特に家屋の評価の仕組みが非常に複雑だ。もともとは明治、大正から昭和の高度成長期以前の社会情勢を反映した制度だ。当時は木造家屋が中心で、非木造の建築物は非常に珍しい時代。物件の数もそう多くなく、ある程度、念入りに評価することができた。それが、都市のあちこちに高層ビルが林立するようになり、評価の仕組みがまったく追いつかなくなってしまった。中でも、非木造の家屋は詳密な評価基準になっていて、極端なことを言えば、完成した建築物の壁でも壊して中を見ないと評価できないような仕組みになっている。

── 固定資産税評価額の算定根拠など、納税者に対する情報開示も不十分だ。

■行政が固定資産税の評価に自信を持てないからだろう。実際の固定資産税評価では、複雑化した揚げ句に公平性が保たれていない現状がある。すべてオープンにすればパンドラの箱を開けてしまい、蜂の巣を突いたような騒ぎになってしまうのを恐れている。そうではなく、パンドラの箱を一度開けて、再びゼロからスタートするくらいの覚悟が必要だ。

 

 ◇おっくうな総務省

 

── どうして改革が進まないのか。

■総務省がおっくうだったんだろう。固定資産税は市町村税だが、税制の基本は地方税法で決め、詳細はさらに政令や省令、通知で決めたりする。しかし、現状を変えるのは、かなり大変な作業だ。評価の方式を全部変えようとすると、固定資産税が下がる人ばかりでなく、上がる人も出てくる。だからおっくうにならざるを得ない。お役所というのは、基本的に事なかれ主義だからね。


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