◇「電通が仕掛けた」は濡れ衣
◇冬のソナタは「安いから」購入
電通が「韓流ブーム」を仕掛けたというネットの通説は間違っていた。
後藤 逸郎/ 池田 正史(編集部)
インターネット掲示板や個人ブログで、「電通が韓国政府と手を組んで、日本に韓流ブームを巻き起こした」ことが通説として広がる。韓国ドラマを放映したNHKやフジテレビを「韓国に汚染された『反日』」と侮蔑することは日常茶飯事だ。
日本での韓流ブームの火付け役として認知されているのは韓国テレビドラマ「冬のソナタ」だ。韓国の人気俳優ぺ・ヨンジュンと人気女優チェ・ジウ演じる韓国人カップルのラブストーリーは2002年に韓国で放映された。
日本ではNHKが03年に衛星放送で流すと人気を呼び、04年に地上波でも放映すると、「冬ソナ」現象と呼ばれる大ブームを引き起こした。ここまでは事実だが、元博報堂の評論家、中川淳一郎氏は「そこからネトウヨ(ネット右翼の略)は『韓国人の男が日本人よりハンサムということをすり込むための策略』と言い出した」とあきれる。
だが、NHKが冬ソナを放映したのは、全くの偶然だ。
元NHK職員の立花孝志氏は「NHKの関連会社『国際メディア・コーポレーション(MICO〈マイコ〉。10年4月にNHKエンタープライズと統合)』が買った複数の韓国ドラマの中に、たまたま冬のソナタも含まれていただけだ」と明かす。
当時の韓国は1997年のアジア通貨危機が直撃し、経済は停滞していた。政府はKポップとドラマを重要な輸出コンテンツと位置づけ、海外展開に力を入れていた。日本に拠点を置く韓国の出先機関の人間は、中川氏に「韓国政府の陰謀論」を否定した。読売系のメディア関係者は「(韓国は)文化の普及のために格安でテレビ局にドラマを卸している。それで視聴率を深夜で2%取る。そこから日本テレビとテレビ東京が始めた」と説明したという。………