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【がん】浮かび上がったオプジーボの課題 2016年9月6日号

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◇がん免疫療法薬揺るがす副作用

 

 

村上和巳(ジャーナリスト)

 

 がん治療の画期的な新薬といわれる免疫療法薬「オプジーボ」に、新たな副作用が報告されたことが医療現場に衝撃を与えている。

 厚生労働省医薬・生活衛生局は、オプジーボの投与が終了した非小細胞肺がん患者に、「上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR─TKI)」と呼ばれるがん治療薬を投与した結果、7月1日時点で、副作用の可能性が否定しきれない間質性肺炎8例が発生し、うち3例が死亡したと注意喚起する通知を7月22日に発出した。

 がん治療薬で副作用による死亡例が報告されること自体は珍しいことではない。しかし、今回の件は、がん免疫療法薬の普及を左右する重大な問題をはらんでいる。

 オプジーボはがん治療薬の一種で、ヒトの免疫機能に働きかけてがん細胞と闘わせる。皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として2014年9月に発売した。15年12月には非小細胞肺がんに保険適用が拡大し、今後は腎細胞がん、血液のがん、頭頸(とうけい)部がんにも適用が広がると見られている。

 

 ◇免疫に関係した副作用

 

 これまでのがん治療薬は、がん細胞に毒性を発揮する抗がん剤が主体だった。いわば「毒(抗がん剤)をもって毒(がん)を制す」発想だが、抗がん剤は正常細胞にも作用してしまうため、重い副作用が避けがたかった。例えば肺がん治療で使用される「シスプラチン」などの白金製剤は、血液の成分をつくる骨髄にダメージを与えるため、感染症や出血が起こりやすくなるほか、急性腎不全や激しい吐き気、食欲不振などの副作用が表れやすい。

 一方、オプジーボはがん細胞そのものではなく免疫機構に働きかけるため、従来の抗がん剤のような副作用は回避されると考えられてきた。


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