石田 賢
(国士舘大学経営学部講師)
サムスン電子が事業の立て直しを図っていた最中、発売したばかりの
スマートフォンで爆発事故が続き、経営への影響は避けられない。
韓国サムスン電子が発売した新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」で爆発事故が相次ぎ、米国では約100万台全量をリコール(無料の回収・修理)する事態に追い込まれている。日本では未発売だったが、世界では約250万台が流通しているとみられ、リコールに伴う費用負担やブランドイメージの毀損は大きい。経営の実権を握る李在鎔副会長が事業の立て直しを図っていた最中に直面した事故で、サムスン電子の先行きに暗雲が立ち込めている。
ギャラクシーノート7の発表イベントが、米ニューヨークなどで華々しく開催されたのは8月2日。5・7インチの大画面で、側面にかけてカーブするディスプレーを使用。「Sペン」と呼ばれるタッチペンを改良し、より使いやすくしたことなどを目玉とした。ギャラクシーノートのシリーズとしては6代目だが、柱となる同社のスマートフォン「ギャラクシーS7」と統一したイメージを打ち出すため、あえて順番を一つ飛ばして「ノート7」と銘打った。
8月17日からは韓国、米国、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど10カ国で販売をスタートし、年内1200万台を目標に順調に滑り出す。ライバルの米アップルが9月初旬、アイフォーン7を発売する前のタイミングであり、市場を先行して獲得する狙いも込められていた。しかし、発売から1週間ほどすると、米国などで爆発事例がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や動画サイトなどで次々と報告されるようになる。
サムスン電子は当初、こうした爆発事例は悪質なクレーマーによるいたずらと受け止めていた。以前にも携帯電話を電子レンジで加熱し、爆発に見せかけて賠償金をかすめとろうとしたケースがあったからである。しかし、爆発事故が相次いで報告されるに至って、サムスン電子がこのうち35件を調査した結果、原因がバッテリーの接触不良にあることを確認。9月1日時点までは、サムスン電子はバッテリー交換で対応する考えだった。………