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経営者:編集長インタビュー ハロルド・メイ タカラトミー社長 2016年11月1日号

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 ◇0歳から100歳まで楽しめるおもちゃを作る

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 有力商品は何ですか。

メイ 長く売れ続けている定番のおもちゃが、発売から46年たったトミカ、57年のプラレール、来年50年のリカちゃんです。グローバルに通用する定番として、車がロボットに変形するトランスフォーマー、ベーゴマが進化したベイブレードがあります。子供の本能に訴える定番商品が多いのが強みです。

── 少子化は逆風では。

メイ 日本で子供だけを相手にしていればそうです。消費者は誰かを考えなければなりません。おもちゃの定義を変えようとしています。

 今までは、おもちゃといえば遊ぶものでした。でも役に立つもの、集めたくなるものも立派なおもちゃです。0歳から100歳までが楽しめる商品を作っていきます。

 例えば、生卵を混ぜるクッキングトイです。フライパンで焼くと分厚いオムレツができます。使うのは主婦でしょう。ロボットの「オハナス」はスマートフォンなどを介してネットにつながり、高齢者の話し相手になります。

── 海外展開は。

メイ 今、売り上げの海外比率は4割です。日本の玩具市場は世界の6%に過ぎませんから海外比率の理想は9割ですが、当面の目標は国内と半々です。日本の高い品質と技術、発想力をぶつけていきたい。

 トミカで約500の安全チェックポイントがあるほど品質を気にしています。ポケモンなど二次元のアニメを三次元のおもちゃにするのは難しいのですが、そのまま再現できる技術があります。そして、例えばガチャの「自由すぎる女神」シリーズなど、いい意味でバカバカしいものを考えられる発想力です。

 世界各国で人口動態も購買力も違います。どの商品を、どの地域に、いつから販売するかが重要です。例えば、あるアジア向けのトミカは日本と材質を替え、値段を下げています。

 

 ◇第4の創業

 

── 創業家出身の前社長に最高執行責任者として招かれました。

メイ 入社前に調べると、タカラトミーは「商品は良いけれど商売は下手」と評されていました。マーケティング力を高めようと考えました。

 世の中は大きく変化しています。皆がデジタル機器を持つなかで、当社は商品も売り方も100%アナログです。アナログにデジタルの要素を付け加えていくことが大事です。

 これまで会社のホームページがある程度でしたが、ネット販売を始めました。PRでもツイッターや動画のユーチューブを使い始めました。

── デジタルを加えた商品とは。

メイ ベイブレードの新商品は、コマを回して遊んだ記録をスマートフォンのアプリを通じて管理したり、全国の値と比べたりできます。

── 改革を担っているのですね。

メイ 当社が大きく変わろうとするのは初めてではありません。30年ごとに3回、変貌を遂げてきました。

 92年前の創業時はブリキのおもちゃを職人が手作りしていました。プラスチックで大量生産するようになったのが第2の創業です。第3の創業でアニメはじめマスメディアと連動するようになりました。今、第4の創業がデジタルとグローバル化です。今後30年の道を描いています。

── 改革の要は。

メイ 商品改革に加え、社員の意識改革、それに構造改革です。

 社員の意識改革のキーワードは、0歳から100歳を対象に考える「エージレス」、日本だけを見ず、ネーミングをはじめ世界で売れるように設計する「ボーダーレス」、商品は発売して終わりではなく、進化を続ける「エンドレス」の三つです。

 構造改革は意思決定を早める目的です。部署と階層が多いため、アイデアが平社員から社長まで届くのに時間がかかり、丸くなってしまっていました。ヒットするような尖(とが)った商品が生まれないのです。部と課を20%減らし、階層を減らしました。

── 改革の手応えは。

メイ 改革が全部まとまった成功例がリカちゃんです。知名度は高いのですが、子供が人形で遊ぶ年齢が下がり、売り上げは減っていました。

 そこで、空想の世界のお姫様のような人形ではなく、大人でも欲しくなる商品として、街を歩いていてもおかしくないような髪形や服装の「リカビジューシリーズ」を6月に発売しました。ビジューとはフランス語で宝石です。また、リカちゃんのツイッターを作り、各地を旅した様子や、服やバッグのことをツイートしました。タレントとしてデビューさせたのです。化粧品の広告キャラクターにもなりました。リカちゃんの売り上げは50%伸びています。

 リカちゃんでできるなら、定番の商品全部でできるはずです。単に商品を売ろうとするのではなく、ブランドとして展開すべきです。

── 日本語が堪能ですが、日本で各社の経験を重ねて思うことは。

メイ 日本企業では社員が自分で判断しようとせず、上司に判断を求めます。外資系では決めて報告します。変化が早いなか、社員が即時に独自で判断できなければなりません。

 残念なのは、日本企業に野心がなくなったことです。最近「日本はこんなにすごい」というテレビ番組が多いですが、常に先を行かなければいずれ追いつかれます。コストでは勝てませんから、あとは発想力とブランドだと思います。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 日本リーバ(現ユニリーバ)で日本でのリプトン紅茶の販売をすべて任され、やりがいがありました。ワンマンだったかもしれません。

Q 「私を変えた本」は

A 歴史が好きです。学べるものがたくさんあります。社長は、決断も責任も1人で寂しいものですが、歴史の本を読むと古今、トップは皆同じなのだと思います。

Q 休日の過ごし方

A 山でサバイバルキャンプをします。持っていくのはナイフとトイレットペーパー、それにお酒だけ。自分で寝場所を作り、食料を探します。

………………………………………………………………………………………………………

 ■人物略歴

 ◇H.G.Meij

 オランダ出身。米ニューヨーク大院修了。1987年ハイネケン・ジャパン入社。日本リーバ、サンスター、日本コカ・コーラ副社長を経て、2014年4月タカラトミー最高執行責任者、15年6月より現職。52歳。

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事業内容:玩具・雑貨等の企画・製造・販売

本社所在地:東京都葛飾区

設立:1953年1月

資本金:34億5953万円

従業員数:2042人(16年3月末現在・連結)

業績(2016年3月期・連結)

 売上高:1630億円

 営業利益:26億円

この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016年10月24日

週刊エコノミスト 2016年11月1日号

 

〔特集〕 東京都 カネと人脈

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