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生前退位 政府の意向は特別立法 違憲、皇室の不安定招く

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天皇陛下の生前退位に関する安倍晋三首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」は、11月7日から専門家へのヒアリングを始める。

 

政府は「現在の陛下に限って可能とする特別立法」でまとめる方針だ。皇室典範改正に踏み込むと、女系天皇や女性宮家の議論を避けられないためだが、それは陛下が願う「安定的な皇位継承」をないがしろにしているとの批判があるうえ、特別立法には違憲の疑いが付きまとう。

 

10月17日に開かれた有識者会議の初会合後、座長の今井敬経団連名誉会長は「陛下が82歳とご高齢であることを踏まえて議論する」と述べた。

 

政府は来年の通常国会での関連法案提出を目指している。「速やかな対応が必要で、議論に時間が必要な皇室典範改正には踏み込めないという官邸の雰囲気作り」(全国紙政治部記者)とみられる。また、自民党の下村博文幹事長代行が記者団に対し「特別措置法の準備をしつつあると聞いている」と政府が特別立法を検討していると明言した。

 

◇憲法学者の見解分かれる

 

特別立法での退位が憲法上認められるかどうか、憲法学者らの見解は分かれている。憲法2条は皇位について「国会の議決した皇室典範の定めるところにより」継承すると規定しているためだ。安倍首相に近い八木秀次・麗沢大教授は特別立法について「法技術的に困難を伴い、立憲主義を壊してしまう」と指摘する。

 

内閣法制局の横畠裕介長官は衆院予算委員会で、「ある法律の特例や特則を別の法律で規定することは法制上可能」と特別立法で対応可能との見方を示した。しかし、違憲審査は最高裁に委ねられている。学者の解釈が分かれている現状では、「合憲」という判断がされない限り、生前退位と、皇太子の即位に疑義が生じる状況が続く。「象徴」である天皇の地位に求められる権威が損なわれることになりかねない。

 

◇「あざとさ見える」と批判も

 

有識者会議はヒアリングでの論点について、▽天皇の役割▽天皇の公務▽公務負担軽減の方法▽摂政の設置──などの8項目を挙げた。神道学者の高森明勅氏は「公務のあり方は、陛下が全身全霊で、国民とともに築き上げてきた。数カ月でまとめられるものではない」とし、有識者会議にはそぐわないとの認識を示した。また摂政については、陛下が8月にビデオメッセージで表明したおことばで明確に否定している。「公務負担軽減につながらないことは明らか。『摂政では意思を尊重できないので、すぐに対応できる特別立法しかありません』というあざとさが見える」と批判した。

 

おことばでは、陛下が皇位継承を安定的に維持することに心を配っていることが明らかになった。政府は「一緒にやると方向性を出すのに時間がかかり過ぎる」(菅義偉官房長官)との理由から、皇族減少問題を陛下の生前退位と切り離している。特別立法は恒久的な制度ではなく、「生前退位が前例となり、将来の恣意(しい)的な退位につながる危険がある」(高森氏)と、かえって不安定さを招く恐れが指摘されている。

(酒井雅浩・編集部)

 

*週刊エコノミスト2016年11月16日号「FLASH!」

 

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