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経営者:編集長インタビュー 新野良介 ユーザベース社長 2016年11月22日号

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新野良介 ユーザベース社長 

 

◇ビジネス情報プラットフォームの世界標準目指す

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ユーザベースはどんな会社ですか。

新野 日本発のビジネス情報のプラットフォームとして、世界に通用するものを作り出すことが目標です。

 

インターネットの普及に伴い、一般ユーザー向け情報プラットフォームは、グーグルなどの検索エンジンからフェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)へと劇的に変わりました。

 

一方でビジネス情報に目を転じると、使いやすいものが少ない。例えば、世界企業の中での時価総額ランキング一つとっても調べるのは大変な作業です。業界における企業の位置づけなど重要な情報なのに収集が難しいというストレスを、技術革新によって解決したいのです。

 

── ユーザベースが考えるビジネス情報とはどのようなものですか。

新野 株価や為替、企業の合併・買収(M&A)といったものだけではありません。例えば、ある企業へのインタビュー記事を読んだことがきっかけで志望する学生がいます。そうした自分の人生で下す決断に影響を与えるような経済情報です。

 

2002年に大手商社に入り食品部門を担当していた新野氏は、プレゼン向け資料の作成に膨大な時間がかかることを疑問視、ユーザー側に立った情報プラットフォームの必要性を感じていた。外資系証券会社に転職後、梅田優祐氏(現ユーザベース共同経営者)と意気投合し、08年、数人の仲間とマンションの一室でユーザベースを立ち上げた。翌09年には「SPEEDA」(スピーダ)の提供を開始。創業8年目の今年10月21日には東証マザーズに上場を果たす。

 

── 主力の情報プラットフォームの内容を教えてください。

新野 法人向けのスピーダと、子会社が運営する一般向けニュースサイト「NewsPicks」(ニューズピックス)の二つです。法人向けと一般向けの両方のプラットフォームを持つことが当社の強みです。

スピーダが提供する情報は、(1)世界200カ国以上、上場・非上場合わせ約380万社の企業情報、(2)550のカテゴリに分類した業界情報、(3)企業のM&A情報の3種類です。各社がどんな戦略を取っているかといった情報を集約して表示します。株式トレーダーに特化したデータベースのような狭い範囲の経済情報でなく、より広い範囲を対象とした基礎リサーチのツールとして顧客に認知されています。

一方、ニューズピックスの特徴は「ソーシャル」、つまり一方的なニュース配信でなく利用者も情報を発信できる点です。一人一人が発信者になれるのがネットの強み。例えば、利用者の意見それ一つでは影響力は小さいですが、それに同意や反対意見を加えることで、世論が形成されていくこともあります。

 

── 配信するビジネス情報はどう集めていますか。また、差別化は。

新野 スピーダは経済データを配信している国内外の約50の企業と提携しています。情報を提供してもらうと同時に、相手が持つ情報のマネタイズ支援も行います。加えて、自社独自のコンテンツも作っています。ニューズピックスも自前の記者がいます。

既存の法人向けサービスを見ると、データ量で勝負しているものが多く、一般向けのさまざまなプラットフォームほど使い勝手がよくないと感じていました。そこで「ユーザビリティー」(利用者の使いやすさ)に価値を転換し、ほとんどの情報はスピーダで取れるという「ワンストップ」を目指しました。

スピーダは企業情報の地図のようなもので、例えば、ある国のある業界を知りたいとき、企業のデータやニュースのほか、さらに深い情報を得たいときに、誰にアクセスすればいいかといった情報も提供します。

 

◇アジアでトップを目指す

 

── 売り上げ構成は。

新野 16年12月期は、およそ30億円の売り上げを見込んでいます。うち20億円がスピーダ、10億円がニューズピックスという内訳です。スピーダの加入ID数は国内外で約1400。売り上げの9割は国内で、残り1割が海外です。業種別に見ると一般企業が35%、銀行、証券会社、コンサルティング会社といった、プロフェッショナルファームが65%です。

 

ニューズピックスの収益源は主に三つあります。一つ目は現在、約2万人の会員がいる月額1500円の有料サービスで、これが3分の1を占めます。二つ目は企業のブランド広告、三つ目はニューズピックスを使った求人サービスです。

 

── 海外展開を含め、今後の戦略を教えてください。

新野 スピーダにとって最大の市場は、経済規模が圧倒的に大きい米国だと考えています。ただ、競合するプレーヤーも多く競争も激しいので際立った力が必要です。

現在、アジア市場でシェアを伸ばせているのは、日本のビジネス情報でナンバーワンという位置づけを取れたことが大きいと思います。スピーダの試用版への海外からの問い合わせでは、香港、シンガポールに次いで多いのが米国です。つまり、アジア情報でナンバーワンになることが米国に進出する際の最大の差別化要因になります。まずはアジア市場を押さえることが、次の展開につながると考えています。

(構成=大堀達也・編集部)

 

◇横顔

 

Q 20代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30歳までに起業することが目標だったので商社に入り、起業がしやすい小さい商材を扱う生活産業分野で経験を積みました。

Q 「私を変えた本」は

A リカルド・セムラー著『セムラーイズム』、ケネス・クラーク著『ザ・ヌード』、共和政ローマ期の政治家カエサルの自伝『ガリア戦記』です。

Q 休日の過ごし方

A ジムに通っています。

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 ■人物略歴

 ◇にいの・りょうすけ

 1977年生まれ。暁星国際高校、慶応義塾大学卒業後、2002年三井物産入社。UBS証券を経て08年にユーザベースを設立し、共同経営者に就任。

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事業内容:ビジネス情報プラットフォームの運営

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2008年

資本金:23億300万円

従業員数:178人(8月31日時点、ニューズピックス含む)

業績(2015年12月期・連結)

 売上高:19億1500万円


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