◇参院選見据え医療業界に配慮
◇本格議論は2年後へ先送り
島本明
(医療ジャーナリスト)
厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は2月10日、2016年度の診療報酬改定案をまとめ、塩崎恭久厚労相に答申した。保険診療での、医師や薬剤師への技術料や医薬品の値段を定める診療報酬は、2年に1度改定され、政府が決定する財源の大枠(改定率)を基に、中医協で具体的な料金(点数)が決められる。
最新の数値となる13年度の医療費は、初めて40兆円を突破し、前年度比2・2%増の40兆610億円だった。高齢化の進展とともに7年連続の増加で、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になる25年には、52兆円に達すると推計されている。
財務省は医療費など社会保障費の削減は不可欠としており、財務相の諮問機関、財政制度等審議会の吉川洋分科会長(東京大教授)は、昨年10月の会見で「診療報酬の増額はとんでもない議論」と医療費の増額をけん制。16年度予算概算要求の段階で、厚労省は高齢化などに対応するため、社会保障費を前年度比約6700億円の増額を要求していたが、財務省は5000億円弱へ抑制するよう求めた。
14年度改定は消費税対応分を除くとマイナス改定であり、2回連続のマイナスは医療崩壊につながるとして、医療関係団体は猛反発。日本医師会(日医)の横倉義武会長は「今改定もマイナスならば、小泉改革時代の医療崩壊のような状況になってしまう」と危機感をあらわにした。医療団体は豊富な資金力を源泉とした政治力を駆使。改定率決定直前の昨年12月9日にあった自民党の議員連盟「国民医療を守る議員の会」総会には……
(『週刊エコノミスト』2016年3月8日特大号(2月29日発売)86~88ページより転載)
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発売日:2016年2月29日
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