Quantcast
Channel: www.weekly-economist.com Blog Feed
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1154

アメリカ大失速:大統領選に見る米国の格差拡大 2016年3月8日特大号

$
0
0
米国では格差が拡大し、路上生活者も増えている(ロサンゼルス)Bloomberg
米国では格差が拡大し、路上生活者も増えている(ロサンゼルス)Bloomberg

◇2大政党にも再編の兆候

 

西川賢

(津田塾大学学芸学部准教授)

 

「我が国は危機に直面している。従来までの支配階級による政治、経済はもはや時代遅れだ」

 2月9日、ニューハンプシャー州予備選で民主党の候補指名を争うヒラリー・クリントン前国務長官(68)を20ポイント以上の差で破ったバーニー・サンダース上院議員(74)は高らかに勝利宣言した。「上位1%の富裕層への富の集中」「ビリオネア階級による選挙の買収」「支配階層の打破」──。サンダース氏の勝利演説には「格差社会」や「階級闘争」を想起させる過激な言葉が並んだ。
「民主社会主義者」を自任するアウトサイダー(非主流派)のサンダース氏は、現在の米国社会が中間・下流層から少数の富裕層へと富が流入・集中する「格差社会」になっていると主張し、格差是正を力説する。サンダース氏は「社会主義」以外にも、「革命」や「階級」など、米国政治ではタブー視されている言葉を臆することなく使う。過激な言葉をちりばめながら、国民皆保険制度など社会保障の拡充や最低賃金の大幅な上昇などを熱烈に訴え、30歳以下の若者を中心に人気を博している。
 他方、共和党では不動産王ドナルド・トランプ氏(69)の台頭が世界中のメディアの話題をさらっている。日本では不法移民、イスラム教徒、身体障害者、あるいは女性に対する差別的言動で物議を醸したが、社会保障の拡充や富裕層への増税など、リベラルな政策も掲げている。トランプ氏の主張は、極端に保守的な一方でリベラルなものも混ぜ合わせており、従来までの共和、民主両党の理念とも完全には一致しない。
 今回の選挙で中間層が重要視する争点は、テロ、経済、社会保障などが上位だ。また、学歴が高卒以下の白人労働階層・中間層は、白人が少数集団と化していくことに対する恐怖感を覚え、移民、イスラム教徒ら非白人層に反感を抱いていることも想像に難くない。
 つまり、トランプ氏の主張は不安を抱えた白人中間層・労働階層が重要視する争点や懸念をアラカルトのごとく列挙したものなのである。トランプ氏は大衆迎合的な主張を用いて人々が抱える不満や恐怖を言葉巧みにあおり、彼らの不安に付け込む「扇動的大衆政治家」と言える。
 サンダース氏やトランプ氏の台頭は……

 

 

(『週刊エコノミスト』2016年3月8日特大号(2月29日発売)89~91ページより転載)

関連記事

この記事の掲載号

定価:670円(税込み)

発売日:2016年2月29日

週刊エコノミスト 2016年3月8日特大号

 

【特集】アメリカ大失速

       ■Part1 経済・金融の綻び

       景気後退はあるか

       ニューヨークで聞いた米国経済の行方

       FRBの悩み

       米国系投信は大丈夫?

       ■Part2 政治・社会の変容

       大統領選に見る米国の格差拡大



Viewing all articles
Browse latest Browse all 1154

Trending Articles