◇ハイイールド債に大きなリスク
◇連鎖的な資金流出発生も
津賀田真紀子
(みずほ証券シニアコモディティアナリスト)
原油安を受けて苦境に陥っている米国のシェール関連企業の存在は、金融市場にとってもリスクとなっている。
2015年10~12月期決算では米石油大手企業の業績悪化が表面化している。当然、これらの企業の債務負担は増加傾向にある。米エネルギー情報局(EIA)の統計によると、営業活動によるキャッシュフローに対する債務比率は、15年4~6月期で83%と、12年1~3月期からほぼ倍増している(図1)。各社とも人員削減や資産売却などリストラを進めることにより財務内容を改善させ、当座をしのいでいるが、この状況がこのまま続くとは考えにくい。
シェール関連企業の株価は、昨年後半以降、総じて下げ足を速めており、リン・エナジーやデボン・エナジーなど1ドル前後まで下がっている企業もある。すでにいくつかのシェール関連企業が連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しており、15年5月にはアメリカン・イーグル・エナジーが、同9月には大手のサムソン・リソーシズが破産手続きを行った。
◇4月に資金繰り危機も
シェールオイル生産は、在来型の油田と違い、1カ所の井戸当たりの減退率が高い。生産開始後急速に生産が減退し、4年前後にはピーク時(通常は生産開始初年)の……
(『週刊エコノミスト』2016年3月8日特大号(2月29日発売)34~35ページより転載)
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