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経営者:編集長インタビュー 瀬戸健 RIZAPグループ社長

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◇「人は変われる」を証明したい

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

瀬戸 「人は変われる」という理念を信じてひた走っています。ジムのトレーナーひとりひとりに情熱が宿っている会社です。

── 前身の「健康コーポレーション」を設立して以来の歩みは。

瀬戸 豆乳クッキーで起業し、せっけんや美顔器に広げ、今の主力はパーソナルトレーニングジムです。変遷しているように見えるかもしれませんが、すべてがつながっています。

 原点にあるのは高校3年の時のことです。体重70キロ超の彼女と付き合い始め、一緒にがんばってやせよう、と走ったり、励ましたりしました。彼女は3カ月で25キロやせたのですが、どんどんきれいになり、内向的だったのが外向的に、散らかっていた部屋も整理整頓するようになりました。きれいになりすぎて浮気されて振られてしまったのですが(笑)、人って本当に変わるというインパクトが強烈でした。

 

── その経験が、どのように事業につながったのですか。

瀬戸 豆乳クッキーは、彼女がお菓子も食べず苦しそうにダイエットしていたことが念頭にありました。無理なくダイエットできる食品を作ろうと考えました。おからは水を含みやすいので少量で満腹になります。

 豆乳クッキーがヒットした後、美顔器の会社を買収すると、なぜ?と言われました。それは、手段を見ているからです。消費者の目的は美しくなって自分に自信を持つこと。クッキーや美顔器が欲しいわけではありません。

 ただ、一人でやるダイエットは挫折する人が多い。どうやったらやせられるかについては情報が氾濫していますが、分かっているのと、やり切れるかどうかは別です。やり切るために愛情を持って寄り添うサービスとして、パーソナルトレーニングジムのライザップが生まれました。

 

── テレビCMが印象的でした。

瀬戸 我々が何を提供する会社なのかを徹底的に追求しました。15秒のCMはライザップに通う前と後の姿のみ。トレーナーも、店舗も出てきません。結果を重視することを伝えました。

「結果が出なかったら全額返金」は我々が緊張感を持つためでもあります。トレーナーはお客様が通わなくなったり食べすぎたりした時に本気で向き合います。するとお客様が本当に変わり、“卒業”を迎える日にとてつもない感動があるから、次のお客様にまた「結果を出します」と言えるのです。

 

 ◇三日坊主市場は広い

 

── 海外展開は。

瀬戸 既に台湾、シンガポール、香港、上海にライザップの店舗を展開しています。

「三日坊主市場」は世界共通ですが、そこに解決策を提示する企業はほとんどありません。国内ではゴルフと英会話の事業を既に始めていて、好調です。ゴルフもスコアにコミットします。

 

── アパレルやインテリアなど、さまざまな業種を買収する意図は。

瀬戸 事業領域は「自己実現」です。経済が成熟し、欲求の段階が上がりました。なくても困らないけれど、自分に自信を持つために人はお金を投じます。あらゆる業種で商品やサービスの目的が変わってきています。かつて服は身を隠し、寒さをしのぐためのものでしたが、今は自分の存在を高めてくれるものです。

 ライザップで10キロ以上やせると過去の服が着られず、自分の外見に興味がなかった男性が服にお金を使うようになります。オーダーメードスーツが好調です。

 

── ジーンズメイトなど買収先は赤字企業ばかりで、「負ののれん」が利益をかさ上げしているとも指摘されています。

瀬戸 いいものを持っていながら、すべての力を発揮できず低迷している会社がたくさんあります。人が変われるように、会社も変われます。

「負ののれん」は会計基準に沿ったもので、すべてオープンにしています。M&A(合併・買収)による利益を除いた本業の利益も伸びています。負ののれんには、赤字がついてきます。黒字に転換できるかどうかが勝負です。

 

── 経営目標は。

瀬戸 事業を通じて世の中に影響を与えたいと思っています。「人が変われる」ことを証明して社会にインパクトをもたらすのは兆円単位の話。2021年3月期に売上高3000億円、営業利益350億円の目標はプロセスとして当たり前のことです。

 今、当社のCMを見て、ライザップに通うのではなく、自分でジムに通う人も増えている。CMはきっかけの提案でもあります。我々は低糖質食を勧めていますが、将来的には摂取カロリーに占める栄養素の割合が変わるでしょう。

 

── 人々が健康になれば、国の医療費も削減できそうです。

瀬戸 我々は会員7万人のデータをもとに、どうすればやせて健康的になれるのかを検証しています。ライザップはマンツーマンでフルスペックですが、コストを抑えた形でサービスを提供することもできます。

 その例として、静岡県牧之原市と提携し、高齢者向けの健康増進プログラムを始めました。プログラム前後の変化を分析します。今後、全国の自治体と進めていきます。我々は結果にコミットしますから、一般的な単価報酬ではなく、健康数値が改善したかなど結果に連動する成功報酬型を考えています。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 今も30代ですが、30代前半は人が遊んでいる時にも自己投資していました。本を猛烈に読みました。書かれたことに一つ、二つでもチャレンジすると、失敗を含めてフィードバックがあり、記憶が定着します。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『自助論』(サミュエル・スマイルズ)です。すべてを自分の責任として受けとめることを説いています。人のせいにした瞬間に成長のチャンスがなくなります。自分次第で変わると思った方がお得です。

 

Q 休日の過ごし方

A スキーなど社員のレジャーに参加したりしています。

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 ■人物略歴

 ◇せと・たけし

 福岡県出身。福岡県立北筑高校卒業、明治大学商学部中退。2003年に健康コーポレーション株式会社を設立、06年に札幌証券取引所アンビシャスに株式上場。16年に商号変更。38歳。

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事業内容:美容・健康、アパレル、住関連、エンターテインメント等

本社所在地:東京都新宿区

設立:2003年4月

資本金:14億円

従業員数:約4000人(連結、2017年3月)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:554億円

 営業利益:50億円

 


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