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インタビュー 台湾EMS「新金宝」CEO サイモン・シェン氏

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◇東南アジア中心 世界20カ所に生産拠点

 

 鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを買収するなど、注目を集める台湾EMS(電子製品の受託製造)。新金宝(ニューキンポー)もその一角だ。来日したサイモン・シェンCEOに同社のEMS戦略や今後の有望分野を聞いた。(聞き手=種市房子・編集部)

 

 

||どんな会社か。

■1973年に設立して世界売上高は70億㌦(7000億円)。電卓やLED、プリンターなどの家電のほか、ハードディスクドライバー(HDD)や半導体など記憶媒体も受託生産している。特に外付けHDDの生産供給数は世界シェア1位だ。

  ||生産拠点は?

■東南アジアや中国大陸、ブラジル、メキシコなど世界に20カ所ある。台湾のEMSは言語や文化が近い中国に生産拠点を設けるケースが多い。しかし、当社は労働者の質や現地の規制などを総合的に考えて、28年前、海外初の拠点をタイに設けた。また、16年前には同様の理由でフィリピンに進出した。1996年には、中国にも進出したが、「世界の工場」としてではなく、あくまでも消費者が多いマーケットとして捉えているからだ。中国では7~8年前から人件費が高騰している。このため、他のEMSは中国の外に新拠点を作ろうと苦労している。一方で当社は既にタイやフィリピンの工場も育てており、リスクとはならなかった。

||なぜ成長したのか。

■たとえば、タイでは28年間HDDを顧客に提供し続けた。顧客の品質・コスト面での要求は厳しかったが、顧客との信頼関係を築き、要求に応え、技術を累積することで成長してきた。

 

◇日本は意思決定速度に課題

 

||日本の電機メーカーが不振に陥っている現状をどう見るか。

■日本の電機メーカーは技術力がある。しかし、意思決定のスピードや、ビジネスモデルを考える時の柔軟性には課題があるのではないか。

 

◇独自ブランドも展開

 

||3年前から独自ブランドも展開している。どのような製品を作っているか。

■3Dプリンター、LED照明を使った植物工場、IoT(モノのネット化)、ロボット、それに日本で今年から販売を始めた美容製品だ。たとえば3Dプリンターは、紙プリンターの受託生産で培った技術を使っている。これまでの技術を応用して新たなビジネスを生み出している。

||なぜ独自ブランドを展開するのか。

■顧客に「新金宝の技術を応用して新しいビジネスを始めましょう」と提案しても、賛同を得られないからだ。投資に見合う利益が上がるのか不安なのだろう。それならば一層のこと、ターゲットとなる市場に自分たちで特色ある商品を投入しようということになった。

||電機製品は商品サイクルが早い。次の成長分野は?

■AI、自動運転、ロボティックス、IoTなどだ。気を付けなければならないのは、これまでの経験を同じ考えでビジネスをしてはいけないということだ。AIエンジンは昨年から社内で開発中で、将来当社の製品に搭載したい。

||成長分野に挙げた領域には、GE、インテルなどのメーカー、グーグルやアマゾンなどのネット企業が名を連ねる。

■どんな大きい会社・商品でも消滅する可能性はある。私が駆け出しのころ隆盛をきわめた会社があったが、今、彼らのの製品はほとんど見ない。だから大きな会社の存在など気にしない。他社の規模がどうであれ、ビジネス内容が競合しないマーケットを見つけるのが大切だ。

 

サイモン シェン(沈 軾栄)

 1998年、南カリフォルニア大MBA取得、2001年ウィッターロースクール修了。米国での弁護士活動を経て、08年新金宝グループCEO。50歳。


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