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「新規路線で国際線を成長ドライバーに」 片野坂真哉 ANAホールディングス社長

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 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ANAの社風は。

 

片野坂 新しいことに挑戦して成長してきた会社です。例えば、昔はタブーだった羽田空港の国際化を、20年以上前から言い続けてきました。歴代の社長も、国際線が赤字の頃も、やめろと言った人は一人もいませんでした。

 

── どういった事業に力を入れていきますか。

 

片野坂 柱の航空事業では、国際線で成長するという戦略を確固たるものにしたいですね。2020年の東京五輪・パラリンピックという一大イベントに向けて、羽田も成田も発着枠が増えるビジネスチャンスです。日本企業も海外にどんどん出ており、国際線を成長ドライバーとした成長戦略を描いています。ただ、今年と来年は発着枠は増えません。昨年はシステムダウンや、保安検査場でお客様を誤誘導するなどのトラブルも多かったので、「今年は安全と品質の総点検」と社員に宣言しており、しっかりと内部固めも大事な2年間と思っています。

 

── 路線拡大にリスクはありませんか。

 

片野坂 私は新規路線論者です。発着枠が増える時を逃さず、ネットワークを広げておく必要があります。この3年間、ヒューストン、クアラルンプール、ブリュッセル、プノンペン、武漢、メキシコなどに新規路線を就航させました。新規路線は需要が少ないのではないかと言われますが、やってみると最初から乗っていただける。ということはマーケットはまだまだあるということです。この2年間、増収増益で最高益を更新し、増配もできているので、決算もついてきています。

 

── 既存路線強化の目玉はありますか。

 

片野坂 19年にハワイ・ホノルル線に500席を超えるエアバスの大型機「A380」3機を投入します。ハワイ路線は利用率が9割程度で年間を通して安定しています。座席数が増える分、マーケットシェアが高まると見ています。今まではビジネス重視でネットワーク展開をしてきましたが、これからはレジャーやリゾートをグループの戦略として大事にしたい。それをまずはハワイでやろうと思っています。

 

── 国内線の経営方針は。

 

片野坂 15年3月の北陸新幹線の開業で100億円程度の減収になりましたが、その影響も一巡しました。人口が減少している国内では、地方が元気になって観光客が増えないと、航空会社のネットワークの維持はどこかで限界がきます。訪日外国人に利用してもらうのがこれからの鍵になるでしょう。

 

── 傘下の格安航空会社(LCC)についてはどう考えますか。

 

片野坂 4月にピーチ・アビエーションを連結子会社化しました。LCCのもう一つの子会社であるバニラ・エアと統合させないのかとよく聞かれますが、今は全くの白紙です。ピーチは関西空港ベース、バニラは成田空港ベースですみ分けができており、文化も全然違うので簡単に混ぜることは難しいです。今はできる限り自主性を尊重して、二つの会社が共に成長していけるようにしたいですね。

 

── LCCの戦略は。

 

片野坂 20年度までに中距離路線を強化します。バニラもピーチも、中距離と言えるバンコクやホーチミンには、沖縄や台湾を経由して飛んでいます。小型機を使って、乗り継ぐ形でアジアの中距離に既に入り始めており、現地でも知名度を上げています。いずれは、中型機を使った直行便を入れていきたいですね。

 

── 日本航空への対抗策は。

 

片野坂 8・10ペーパー(新規投資や路線開設が原則自由にできないと定めた国土交通省の指針の通称)がなくなり、成田─豪メルボルン線と成田─ハワイ・コナ線を新規就航するのはさすがだなと思っています。財務体質が良いので脅威ですね。こちらとしては新規路線で特徴を出していくことが重要だと思います。あとは、サービスと品質で負けないようにしていくことに尽きますね。

 

 ◇ノンエア事業も強化

 

── MRJ(三菱リージョナルジェット)の納入が遅れています。

 

片野坂 納入時期は20年半ばの予定ですが、親会社の三菱重工業などからは、少しでも前倒しできるようにしたいとも連絡を受けているので、信頼していくしかありません。我々のパイロットや整備士、客室乗務員が機器の設置位置や荷物棚の形状などについてアドバイスするなど、良い品質の飛行機にするために知恵を出しています。そういう意味では一心同体。ボーイング787の時もそうでしたが、開発のリスクをかぶるローンチカスタマー(世界で初めて導入する航空会社)の難しさは感じています。

 

── 航空事業以外の取り組みは。

 

片野坂 航空事業が苦しい時に支えるノンエア事業もしっかり育てたいです。「ANAビジネスソリューション」という会社では、企業の研修で客室乗務員が接客の基本を教えています。昨年設立した「ANA X」はマーケティングの会社で、搭乗データやマイレージクラブなどの顧客情報を分析した事業開発に取り組みます。例えば、保険や旅行の販売に生かすこともできます。まだまだこれからですが、飛行機に乗るだけのお客様に別の形でアプローチしたいですね。新しいイノベーティブな事業として、宇宙など将来の成長に向けた可能性もつくっておきたいです。

(構成=松本惇・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 30歳になった頃にANAが国際線に進出することになり、日米航空交渉などを担当しました。ANAがグローバルになるのを実感でき、面白い時代でした。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 山岡荘八の『徳川家康』です。すべての登場人物が生き生きと描かれていて、人生のヒントがあります。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 下手なゴルフが時々と、ガーデニングです。剪定(せんてい)すると芽が出て強くなるのは面白いですね。

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 ■人物略歴

 ◇かたのざか・しんや

 1955年生まれ。鹿児島県出身。ラ・サール高校、東京大学卒業後、79年4月に全日本空輸入社。人事部長などを歴任し、2013年4月のANAホールディングス発足時に副社長、15年から現職。62歳。

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事業内容:航空運送事業など

本社所在地:東京都港区

設立:1952年12月27日

資本金:3187億円

従業員数:3万9243人

(2017年3月31日現在、連結)

業績(17年3月期、連結)

 売上高:1兆7652億円

 営業利益:1455億円


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