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中国:人民解放軍の再編 習主席が初の大ナタ 2016年3月22日号

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◇完全掌握は未達成

 

小原凡司(東京財団研究員)

 

 中国の習近平国家主席(中国共産党中央軍事委員会主席)が、1949年の建国以来、初めてとなる人民解放軍の大規模改革を進めている。2月1日には、中国全土を分ける七つの「軍区」を五つの「戦区」へと再編し、陸海空軍を一体的に運用する統合作戦の指揮機構を各戦区に設けた。これまでは軍の組織上、指揮系統が錯綜(さくそう)しており、軍区が地方の有力者と結びついて“土着 ”化していたが、過去の指導者は軍の反発を恐れて手を付けられずにいた。今回の改革の目的は、共産党中央が人民解放軍を末端まで掌握し、真の意味で「戦える軍隊にする」ことである。

 北京にある中国共産党中央軍事委員会の重要施設「八一大楼」で2月1日、5大戦区の設立大会が開催され、習主席が各戦区の司令官に軍旗を授与した。八一大楼はその名の通り、8月1日の人民解放軍創建記念日を表した「軍の人民大会堂」とも呼ばれる壮麗な建物で、軍の高級幹部が日常業務や軍事・外交儀礼、重要会議などを行う場所である。習主席は訓令で「改革による軍事力強化戦略を全面的に実施する象徴的な措置であり、中国軍の合同作戦体系を構築する歴史的進展だ。中国軍が戦争に打ち勝ち、国の安全を効果的に守ることを確保するうえで、重大かつ計り知れない意義を持つ」と再編の狙いを強調した。

◇遅れた戦区の設定

 

 習主席は昨年11月、北京で開催された中央軍事委員会改革工作会議で、人民解放軍の大規模改革について「2020年までに指導管理体制および統合作戦指揮体制の改革において大きな進歩を遂げる」と宣言。その後、軍の具体的な改変内容が徐々に示されてきた。ただ、昨年11月時点では7大軍区を東部、南部、西部、北部の4大戦区に再編するとしていたが、12月初旬に中部戦区を増設すると修正。また、当初は「年内には公表される」としていた戦区の設定も、西暦の年内ではなく中国の新年である春節の直前の2月1日に公表され、戦区の設定が一筋縄ではいかなかったことを示唆する。

 人民解放軍は総兵力約230万人と、2位の米国(約143万人)、3位のインド(約135万人)を大きくしのぐ規模だが、そもそも国の軍隊ではない。中国共産党の軍隊であり、隊員は入隊すると右のこぶしを突き上げて共産党への忠誠を誓う。人民解放軍は共産党が人民を「解放」するための軍隊であり、国民党との内戦を戦ったのが人民解放軍なのである。だが、その成り立ちはもともと、国共内戦時に地方軍閥や武装化した農民が中国共産党の指導下に入った集合体であり、現在も軍区の影響力は各地方で非常に大きく、さまざまな利権や有力者と結びついているとも指摘される。

 また、今回の再編前の人民解放軍は元来、陸軍であり、海軍や空軍といった組織は存在していても、陸軍である人民解放軍の一組織との位置づけであった。内戦を戦ってきた軍隊には、外国軍と戦う軍隊のような海軍や空軍は必要なかったとも言える。04年の改革では、海軍、空軍、第二砲兵の司令官が中央軍事委員会入りするなど、海空軍重視が形となって現れてきていたが、それでも海軍や空軍、第二砲兵の司令官は組織上、7大軍区の司令官と同格の扱いにすぎなかった。また、海軍や空軍の作戦部隊に対しては、作戦・指揮の命令系統が....

この記事の掲載号

定価:620円(税込)

発売日:2016年3月14日(月)



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