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パンダノミクスが来た!潤う動物園 上野のグッズ売上高は7割増

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シャンシャン(手前)と母親のシンシン=東京都台東区の上野動物園で2018年2月1日
シャンシャン(手前)と母親のシンシン=東京都台東区の上野動物園で2018年2月1日

中川 美帆(パンダジャーナリスト)

 

ジャイアントパンダ「シャンシャン」の公開でフィーバーに沸く東京・上野動物園。2月1日からは抽選なしの先着順で観覧できるようになり、さらなる集客が予想される。パンダが動物園の運営と経営に与える影響は?

 このところ、外の運動場に出て木登りをしたり、母親のシンシンにじゃれついたりと元気に動き回っている東京・上野動物園のメスの子パンダ、シャンシャン。1月25日には体重が16・4㌔になり、昨年6月12日の誕生から5日目の178・9グラムに比べ、ずいぶん大きくなった。お客さんの前に出ても、嫌がるそぶりを見せず、よちよち歩き回ったり、木の上ですやすや眠ったりしている。

 

 昨年12月19日の公開開始から今年1月21日までにシャンシャンを観覧したのは、抽選で当たった1万2083組(4万1804人)。その期間の営業日数で割ると、1日約1500人になる。2月1日からは先着順で1日9500人まで観覧できるので、経済効果も跳ね上がりそうだ。

 

シャンシャンを見るため上野動物園の前に列を作る人たち=東京都台東区で2018年2月1日
シャンシャンを見るため上野動物園の前に列を作る人たち=東京都台東区で2018年2月1日

入園者はパンダで増減

 

 上野動物園の入園者数はパンダに大きく左右される。2008年4月にリンリン(オス)が死んで、36年ぶりにパンダがいなくなると、08年度の入園者数は60年ぶりに300万人を割り、人気急上昇中の旭山動物園(北海道)に国内トップの座を明け渡しそうになった。17年度は4~12月の入園者数が前年同期比10・4%増の318万336人となっており、16年度の入園者数(384万3200人)や入園料収入(11億7600万円)を上回る見通しだ。

 

 パンダは動物園の“経営”にプラスになるのか。

 

 

 都立の上野動物園には、税金が投入されている。06年度からは、指定管理者制度により公益財団法人「東京動物園協会」が運営を担う。都は入園料収入を得る一方、多額の委託料(16年度で56億1513万円)を協会に支払い、獣舎の建設などの費用も負担。ただし、基本的な運営は任せているため、協会の財務状況を見ていく。

 

 

東京4園のうち6割を稼ぐ上野

 

 東京動物園協会は、上野動物園、多摩動物公園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園の都立4園を運営する。各園単体の収支は明らかにしていないが、16年度の4園合計の経常収益(都からの委託料や寄付金など)は82億9750万円、経常費用(職員の給与や飼料費など)は82億9999万円で、248万円の赤字だ。

 

 ただし、公益法人は費用が収入を上回る「収支相そうしょう償」規定を採用するため赤字は必然。これでは経営状況を判断しづらいので、会計区分のうち、利益を得てもいい事業だけに特化した「収益事業会計」に着目する。

 

 

 16年度の収益事業会計は、経常収益26億918万円に対し、経常費用は24億2737万円で、1億8180万円の黒字を確保している。経常収益の9割超に当たる25億6537万円は販売収益だ。これは園内の売店や飲食店などの収入を示す。筆者の取材によると、このうち上野動物園の販売収益は約6割となる15億1500万円に上る。

 

1月の売店売り上げは7割増

 

 東京動物園協会は17年度予算で、上野動物園の売店や飲食店などの収入を15億6400万円と見込んでいる。ただし、これは17年6月に誕生したシャンシャンの影響を考慮しておらず、上方修正される可能性が高い。1月2~18日の売店の売上高だけを見ても、前年同期に比べ約70%増えている。

 

 売店の売上高が急増しているのは、シャンシャンをあしらったグッズや食べ物が続々と発売されて、大人気になっているためだ。シャンシャンの生後10日目を再現したぬいぐるみ「ほんとの大きさパンダの仔284g」(2376円)は売り切れる日も珍しくない。ネットオークションでは定価の2倍でも売れている。

 

新パンダ舎は面積2倍

 

 インフラ整備の面でも人気を持続させる要因がある。20年3月までの完成を予定する新パンダ舎建設だ。これはシャンシャン誕生前から決まっていた、パンダ舎を移転して建て替える事業。建て替え後のパンダ用のスペースは屋内外で約2000平方㍍と、現状の2倍近くに広がる。関連施設も含めた総事業費は約22億円で、このうち都の18年度予算案に8億9000万円を計上している。

 

 シャンシャンブームによる経済効果は、「動物園外」にも及ぶ。その波及先の一つは警備会社だ。17年4月~18年3月の警備費は、シンテイ警備が約8200万円で受注。だが、恐らくこれだけでは足りない。警備員の数は、1月まで1日20人ほどだったが、2月以降は40~45人と倍増させるためだ。春の繁忙期には、さらに増やすことも検討している。

 

 上野周辺では、シャンシャンをモチーフにしたお菓子やぬいぐるみも人気で、販売業者の利益も見込まれる。

*ほかに国内でパンダを飼育するアドベンチャーワールド、神戸市立王子動物園については週刊エコノミスト2月13日号「パンダノミクスが来た!」にて。


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