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幅広い備品群でクルマの激変を好機に 森谷弘史 カルソニックカンセイ社長

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 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 

 

── 主力の自動車部品は。

 

 

 

森谷 カルソニックとカンセイという大きな部品メーカーが合併してできたため、非常に幅広い製品群を持っているのが強みです。最大の柱はコックピットモジュールなど内装事業で全体の3割強を占めます。

 

 

 

 次いでラジエーターなど熱交換器とエアコンなど空調器をまとめたサーマル(熱)関連が3割弱、速度メーターなどの計器類を含めたエレクトロニクス(電子部品)関連が2割、さらにマフラーなど排気関連が2割という構成です。今後は電気自動車(EV)化の流れもあり電子部品が増えていくでしょう。

 

 

 カルソニックカンセイは、日本ラジエーター製造(1938年創業)として始まったカルソニックと、関東精器(56年創業)として始まったカンセイという、日産自動車を顧客とする2大手部品メーカーが2000年に合併して誕生した。05年には日産の連結子会社となるが、17年に日産が米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)傘下のCKホールディングス(HD)が実施した株式公開買い付けに応じたことで同社の完全子会社となる。

 

 

 

── 2大部品メーカーの合併は大変でしたか。

 

 

 

森谷 当時、日産の買い付け部門にいた私は、非常に近い立場で合併を見ていました。ちょうど自動車業界にも「モジュール化」、つまり、パソコンなど電子機器のように、標準化されたモジュール部品を組み合わせて製品を設計するという新しい流れが起きていました。相乗効果が出るまでは時間がかかるとの見方もありましたが、スムーズに一つの組織としてまとまりました。日産がモジュール化で他社に先行できたのは合併の効果だと思います。

 

 

 

── 具体的な効果とは。

 

 

 

森谷 当社の強みは製品群の広さのほかに、コックピットモジュールなど通常は完成車メーカーが内製する製品の開発をリードしていることです。これは他社にはない特長で、クルマの開発の全工程を理解しているからできることです。

 

 

 

 クルマは自動運転化や電動化、インターネットとつながるコネクテッド化など複数の領域で技術革新が進んでいて、完成車メーカーは開発のための人材や技術が不足しています。重要パーツの開発を任せられる当社のような部品メーカーとのつながりは、完成車メーカーにも大きなメリットだと思います。

 

 

 

── 日産傘下を離れた理由は。

 

 

 

森谷 コックピットモジュールのように設計から生産までできる部品メーカーは少ないです。この強みを生かして、日産以外の完成車メーカーにも部品をOEM(受託生産)供給していくためにCKHDの傘下に入りました。現在は日産向けの比率が80%です。中期経営計画では21年までに日産以外のシェアを20%から30%に増やすことが目標です。

 

 

 

── EV、自動運転で激変する環境にどう対応しますか。

 

 

 

森谷 EVの「日産リーフ」は、当社製のインバーターとバッテリーのモニタリングシステムを採用しています。今後、これらの需要が高まれば、他メーカーに供給する機会も増え、モーターやバッテリーを手がける部品メーカーと連携するなどビジネスの幅が広がると見ています。

 

 

 

 また、EVになってもコックピット回りの部品やエアコンは必要です。EVの場合、エアコンをつけると燃費が低下するので高効率の製品が求められます。また、EVへの過渡期の技術として期待される、発電のためにエンジンを回す「レンジエクステンダー」には排気マフラーが必要です。EV化は幅広い部品を持つ当社には追い風です。

 

 

 

 ◇サイバー対策で先行

 

 

 

── M&A(企業の合併・買収)の計画はどうですか。

 

 

 

森谷 中期経営計画では21年に売上高25%増を目標にしていますが、これは自社だけで達成する計画です。しかし、M&Aに興味はあります。そこで強みになるのがM&Aの専門家集団のKKRの存在です。実際、M&Aを行ったらどのような成長シナリオが描けるか議論しています。

 

 

 

── 海外展開は。

 

 

 

森谷 現在、世界15カ国に79拠点を構えますが、創業80周年の今年、ルーマニアに80カ所目の拠点としてメーター関連の電子部品工場を設けます。これまで欧州には電子部品の工場がありませんでしたが、近年は需要が拡大しています。そこで人件費が比較的安い東欧に注目しました。

 

 

 

── 新規事業は。

 

 

 

森谷 自動車業界で今までになかった試みとして、クルマのサイバーセキュリティー技術を開発する新会社ホワイトモーションを、フランスのIT企業クォークスラブと合弁で17年に設立しました。次世代車と目されるコネクテッドカーの課題は、サイバー攻撃によって突然ハンドルが利かなくなるといった危険があることです。クルマの場合、人命に関わるためハッキングを防ぐソフトウエアの需要が増えると見ています。ソフトの更新需要が常にあるため利幅も期待できます。

 

 自動車業界は1回売り切りの低利なビジネスが多いですが、セキュリティー分野をきっかけに高収益のビジネスを確立することも可能です。

 

(構成=大堀達也・編集部)

 

 

 

 ◇横顔

 

 

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

 

 

A 日産で部品調達を担当していました。製造拠点のあったメキシコやスペインに赴任し、異文化

 

の中で仕事とプライベートを充実したものにできたことが今につながっていると思います。

 

 

 

Q 「私を変えた本」は

 

 

 

A 大の読書好きですが、小学生のときに読んだ『少年少女世界文学全集』で本が好きになりました。読書は人間の成長に欠かせない投資だと思います。

 

 

 

Q 休日の過ごし方

 

 

 

A 平日と同じ4時半に起床し、静かな数時間を読書や映画鑑賞に充てています。これは至福の時間です。

 

………………………………………………………………………………………………………

 

 ■人物略歴

 

 ◇もりや・ひろし

 

 1957年生まれ。山形県出身。宮城県立仙台第二高校、山形大学人文学部卒業後、1980年日産自動車入社。2006年CVP執行役員、07年カルソニックカンセイに入社し常務執行役員に就任。12年副社長を経て、13年4月から現職。60歳。

 

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事業内容:自動車部品の開発・製造

 

本社所在地:さいたま市

 

創立:1938

 

資本金:16億円(20181月末時点)

 

従業員数:22424人(連結)

 

業績(173月期・連結)

 

売上高:1126億円

 


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