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「薬が効く」原点は「患者さんの悩みを聞く」 杉浦広一 スギホールディングス会長

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 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── スギ薬局の特徴は。

 

 

杉浦 42年前、26歳で創業したときの「地域の医療に関わる」という強い理念に基づき、どう貢献するかを重視しています。今で言う地域包括ケア(医療や介護、生活支援など地域で総合的に支援)、在宅医療に携わりたいという思いは変わっていません。

── 具体的なこだわりは。

 

杉浦 調剤設備を全店に備えているのはこだわりそのものです。食品の売り上げが高いドラッグストアがありますが、当社は「ヘルスアンドビューティー」が軸です。患者様の話をよく聞き、「大丈夫。良くなりますよ。食養生(体調に合わせ栄養を考えた食事をとること)も大事にして、この薬を飲んで」と安心する言葉をかけると、薬はよく効くものです。

 

── 薬剤師は不可欠ですね。

 

杉浦 薬剤師を3人配置すると、薬剤師の人件費だけで月給30万円として約100万円かかります。調剤室の面積は約20坪(66平方メートル)ですが、これを商品の売り場にしたら、1坪当たりの月間売り上げが10万円として、売り上げが200万円増えます。調剤室を設置するとその分、売り上げは減るし、人件費が上がります。それでも処方箋調剤や患者様に薬剤師が応対することにこだわっています。

 

── なぜですか。

 

杉浦 薬剤師も医療を通じて人のために働きたいからです。お客様や患者様にいつでも相談してもらい、薬局での治療が困難なら病院を紹介する。私たちは人のために尽くしたい。その思想、理念は変わりません。

 

 関東、中部、関西でスギ薬局を展開するスギホールディングス。妻の昭子副社長と1976年に始めた16坪の薬局が出発点だ。2017年末現在、1093店に成長したが、2店舗目の開業は12年後、20年目までは約20店舗だった。急成長は最近20年ほどのことだ

 

── 2店舗目までの12年はどんなことに心血を注ぎましたか。

 

杉浦 年中無休で朝7時から夜11時まで薬局を開け、お客様一人一人の名前や渡した薬などを記憶し、次に来られた際は「いらっしゃいませ」ではなく、「症状は良くなりましたか」などと声をかける。親切丁寧に応対し、ファンになってもらうよう努めました。お客様との関わり方を身体に染み込ませました。

 

── 商売になりましたか。

 

杉浦 長いときは1人に1時間かけて接客したため、長時間待ってもらうこともありました。それでも来ていただき、20坪ほどの店でも薬や化粧品だけで1日数百万円売れました。

 

 2店舗目も3店舗目も、店長がこの姿勢を続けてくれて「病院よりよく効く」と言われるようになった。薬剤師が悩みを「聞く」ことは、薬が「効く」につながります。1000店舗に拡大すると私の管理は難しくなるが、「イズム」(考え方)はできています。

 

── 1000店へ飛躍の契機は。

 

杉浦 創業当初から「将来は1000店で4500億円」とは考えていませんでした。一人一人のお客様や患者様に対し、親切丁寧に応対してきた結果だと実感しています。

 

── 店舗が増えると社員教育が一層大事になりますね。

 

杉浦 社員教育はうちの神髄です。手を抜いたらあっという間にだめになります。店舗数が急に増えれば、経営の質や接客レベル、社員の質を保つのが難しくなる。その葛藤です。

 

 ◇病気予防のアドバイスも

 

── 国の社会保障費の削減は大きな課題です。

 

杉浦 約20年前から薬剤師が患者様の自宅に訪問する在宅医療に取り組んでいます。病気になって医療や介護のお世話になるのは大変です。そのためには病気にかからないように、健やかに過ごせることが大切です。最近では食生活を支援する管理栄養士の採用を増やして教育しています。来店のお客様に、管理栄養士が糖分や塩分、脂質の抑制など食生活についてアドバイスしています。

 

── 食生活への注意で十分ですか。

 

杉浦 運動も大事です。当社と行政などとが、共同でウオーキングなどのイベントを開いています。特に高齢者は筋力の低下を防止することが大切です。歩けなくなることは、いろいろな病気の元になる。自宅で簡単なスクワットやウオーキングを行うとともに、併せてサプリメントをはじめ栄養補助食品などの摂取をお勧めします。

 

── 集客にはつながりますか。

 

杉浦 すぐに売り上げにはつながりませんが、「スギさんで運動を教えられた」「元気になった」と喜ばれており信頼につながります。固定客やファンが増え、結果として売り上げが増えます。

 

── 他にどんな事業に取り組んでいますか。

 

杉浦 訪問看護にも取り組んでいます。珍しいと思いますが、薬局がやるべき仕事です。病院は患者さんがたくさんいて、手が回りません。薬局の出番だと思います。

 

── 今後の抱負は。

 

杉浦 売上高8000億円を目指し、主に関東、中部、関西で年間約100店舗を出店していきたい。もちろん、理念の合う企業とのM&A(企業の合併・買収)も考えています。

 

(構成=米江貴史・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃は

 

A 創業間もない頃で、年中無休、盆正月なしでひたすら働いていました。

 

Q 「感銘を受けた本」は

 

A 中村天風の著書からは人生の生き方を学び、ピーター・ドラッカーからは経営を教わりました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 今でも年中無休ですが、最近は年2回休みを取って、妻と海外旅行に出かけています。

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 ■人物略歴

 ◇すぎうら・ひろかず

 1950年、愛知県西尾市生まれ。県立西尾高校、岐阜薬科大学薬学部製造薬学科卒業。薬局勤務を経て76年スギ薬局(現スギホールディングス)創業。2009年5月から現職。67歳。

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事業内容:ドラッグストア「スギ薬局」の経営管理

本社所在地:愛知県大府市

創業:197612

資本金:1543400万円

従業員数:連結4927人(20172月末現在)

業績(172月期・連結)

 売上高:43079500万円

 

 営業利益:2283200万円


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