Interviewer 金山隆一(本誌編集長)
── 事業内容は。
金子 今年53年目の化粧品会社です。大きな特徴は化粧品の研究開発から製造販売、アフターケアまで一貫して手がけていること。直営店舗のシーボン・フェイシャリストサロンで90%以上の売り上げを占めます。他社と一番異なるビジネスモデルはアフターサービスに力を入れているところです。化粧品を売って終わりではありません。お客様の肌に最後まで責任をもつために、化粧品を購入していただいたお客様に無料で行っています。
── 商品の特徴は。
金子 売り上げの90%以上はスキンケア商品です。他社は20代、30代と年齢を区切って製品ラインアップを取りそろえることが多いですが、弊社ではお客様の肌をみて最適な製品を提案します。各々のトラブルに応じたラインアップをそろえていますが、50代以上のお客様が多いことからアンチエイジングの商品が充実しています。
── どのように事業を拡大していきましたか。
金子 30年前に大きく事業を転換しました。1986年に訪問販売から直営店舗での営業に大きく切り替えました。それ以前は専業主婦が家の中にいて、在宅率が高く直接訪問スタイルでアプローチできましたが、女性の社会進出などもあり女性たちが外に出るようになりました。そこで場所を決めてお客様に来店していただくビジネスモデルにいち早く切り替えました。
── 事業のどの部分に力を入れていますか。
金子 弊社の主力となるのはスキンケア商品です。例えば化粧水ならば1カ月半から2カ月でなくなるのでリピート購入が発生します。アフターサービスに力を入れることでリピート購入の機会を逃すことがなくなります。化粧品はいわば浮気しやすい商材で、女性はいろいろな化粧品を試しがち。固定客になってもらうには時間がかかりますし、アフターサービスによってお客様とつながりを強くすることが可能になります。
── 社員教育は。
金子 非常に大事です。販売、アフターサービス、そしてお客様のお肌の相談に乗ることもありますので高い社員教育をクリアしなければなりません。川崎の本社には120人が泊まることができる研修棟がありますが、ベテランも年1回、自己流なやり方にならないように技術を更新する必要があります。日本は他国と比べてもサービスレベルが高い国。かなり上質のサービスを提供しないと、お客様が通い続けてくれることは難しくなってきます。
── 女性社員が活躍するための工夫は。
金子 弊社の女性比率は92%。管理職も86%ほどでかなり高い数字です。ショートタイム正社員制度を導入していますが、いくら制度を整えても使える環境がないと機能しません。(時短勤務で業務などの)支えが必要な社員がいれば、むろん彼らを支える社員もいます。お互いが置かれている立場の理解がなければいけません。社内報では、結婚と仕事の両立支援を目的に、結婚した社員のライフスタイルや働き方のロールモデルを紹介しています。このロールモデル紹介は、産休・育休中の社員や介護の体験談、さらに男性の育児参加を啓発することを目的に、女性社員の配偶者の育児協力例まで拡大しました。
◇定期的に「ファミリーデイ」
── 具体的にどのようなことをしていますか。
金子 社員の家族を店舗に招く「ファミリーデイ」も定期的に開いています。準備をするのはフルタイムで働く支える側の人たち。彼らが時短勤務の社員らの家族のやりとりを間近にみることで、家庭をもつ人たちの大変さがわかるんですね。支える側が応援しようという気持ちになります。その後のコミュニケーションが円滑になり、お店の雰囲気が抜群によくなります。時短勤務の社員で店長になった人もいます。支える側と支えられる側のコミュニケーションが一番大事です。
── 海外展開は。
金子 1月に中国浙江省寧波に出店しました。初めての海外店舗です。今、中国ではモノだけでなくコト消費。中国の国自体にサービスレベルを底上げしたいという意識を感じます。弊社はものを売るだけではなく、そこから関係を始めていくスタイル。成功できる見通しがあります。現地には国内から選抜したグローバルフェイシャリスト3人を派遣しています。
── これからのビジョンは。
金子 国内では四国などまだ直営店舗がない地域もあります。まだまだ出店できる可能性がありますが、店舗を増やすことだけをベストなこととは考えていません。一番効率的なのは既存店のボリュームアップ。人が集まるお店をマーケットに合わせて大きくしていくことが一番効率的。昨年は京都店を増床しました。今はイベント集客を主体にしています。その場での簡単な肌チェックや化粧品サンプルを使ってもらい店舗にきてもらう流れです。
── サービスで心がけていることは。
金子 弊社の化粧品は決して安くはありません。その値段で買うのならアフターサービスが充実していたり、気分よく買いたいというお客様の気持ちもあるでしょう。そこでどれだけいいサービスができるか。かゆいところに手が届く、人でなければできないサービスを提供していきます。
(構成=成相裕幸・編集部)
◇横顔
Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 製品企画、とくに新商品のことを365日考えていました。
Q 「私を変えた本」は
A 旧約聖書です。ビジネスのいろいろな場面で文章が知らずに浮かんできます。
Q 休日の過ごし方
A 家事、掃除、料理です。家にいることが大好きです。
………………………………………………………………………………………………………
■人物略歴
◇かねこ・やすよ
1959年生まれ。北海道出身。北海道武蔵女子短期大学卒業。84年シーボン・札幌支社に入社。2000年管理本部長、同年に取締役。02年専務取締役などを経て05年から現職。58歳。
………………………………………………………………………………………………………
事業内容:化粧品の製造販売業
本社所在地:川崎市
設立:1966年1月
資本金:4億7492万円
従業員数:1096人(2017年3月31日現在)
業績(17年3月期)
売上高:124億9330万円
営業利益:3億2532万円