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ワシントンDC 2016年4月5日特大号

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 ◇トランプ氏の指名獲得を「最終兵器」で阻止できるか

 

及川正也

(毎日新聞北米総局長)

 

 米大統領選の第1段階となる共和・民主両党の候補者選びは、3月15日の「オハイオ・フロリダ決戦」で前半のヤマ場を越えた。8年ぶりの政権奪還を目指す共和党では、実業家ドナルド・トランプ氏(69)の快進撃が続く。これを阻止したい主流派は7月の党大会決着に向け、「最終兵器」を準備しているという。半世紀以上にわたり封印してきた「ブローカー・コンベンション」(仲裁大会)が、それだ。

 米CNNの推計では、トランプ氏は、指名獲得に必要な代議員総数の過半数に当たる1237人まで、あと約700人に迫っている。2位のテッド・クルーズ上院議員(45)を大きく引き離しているが、今後の予備選の展開次第では、6月7日の最終予備選が終了した段階で指名ラインに届くかどうかは微妙だという。

 トランプ氏の過半数達成を阻止するシナリオは、二つある。

 一つは、クルーズ氏と、マルコ・ルビオ上院議員の撤退で3位に付けたジョン・ケーシック・オハイオ州知事(63)が、「2位・3位連合」を組んで「反トランプ勢力」を結集することだ。これには、候補を一本化する必要がある。

 米プリンストン大学のチームは、ケーシック氏が撤退し、トランプ氏とクルーズ氏の一騎打ちになれば、トランプ氏が獲得する代議員数は最終的に1000余にとどまると試算。対抗馬が2人以上だと「反トランプ票」が分散されるが、一騎打ちだとクルーズ氏に票が集中するためトランプ氏に不利となり、過半数にわずかに届かないという。

 

 ◇迷走する共和党

 

 だが、これには異論もある。「反トランプ勢力」といっても、トランプ氏以外ならだれでもいいという人から、トランプ氏以外の特定候補を熱心に推す人もいて、一枚岩ではない。ケーシック氏を積極的に支援する有権者にとっては、クルーズ氏に魅力を感じなければ投票に行かない人もいるはずで、「一本化の成果が十分には出ない」という指摘もある。

 また、勝敗を左右する獲得代議員の配分は、ほとんどの州が得票数に応じて候補に割り当てる比例配分を原則としている。複数の候補が併走し、それぞれが得票を伸ばせば、あまり偏りなく代議員が配分されるため、「トランプ氏の突出を抑えることができる」とも言われる。

 どの候補も過半数を得られず、党内が分裂したまま党大会を迎えるブローカー・コンベンションだ。指名候補を正式決定する際、1回目の投票では選挙結果に応じて決められた候補に投票するが、過半数に至らない場合、2回目からは自由意思となり、投票先は「白紙」になる。

 すると舞台裏では、多数派工作による代議員の一本釣りや囲い込みが始まる。その時に、トランプ氏に割り当てられた代議員をひっぺがし、奇策として第三の候補を擁立したり、投票を重ねたりする中で「反トランプ勢力」の候補を絞り込もうというのが、党指導部・主流派の戦略と言われる。

 ただし、実際にブローカー・コンベンションになったのは、1952年の民主党大会が最後。当時は猟官運動(官職を得るための争い)や駆け引きが激化し、収拾がつかなくなった。過去には、決着まで100回以上も投票を繰り返したこともあり、多くの識者が「ブローカー・コンベンションは成功しない」と見ている。中道系シンクタンク幹部は、こうため息をつく。「本選はトランプ氏と民主党のクリントン前国務長官の戦いとなり、共和党支持者がクリントン氏に投票することもあり得る」。共和党の迷走の根は深い。(了)


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