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特集:AI時代の食える弁護士 2018年2月27日号

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 押し寄せる変革の波

 賢い活用が命運握る

 

 弁護士業界にも、AIの波が押し寄せている。新技術に詳しい弁護士の間では、AIが市場を席巻するのは、「近い将来」という見方がもっぱらだ。

 

「法律は一定の基準に基づいて判断するので、AIとの相性がいい。コンピューターのアルゴリズム(演算式)を用いれば『過去の判例によれば結論はこうだ』とのアウトプットは簡単」(ベンチャー企業に詳しい弁護士)という。「AIの判断をどこまで信頼できるのか」という批判はあるが、「技術革新で安価にリーガルサービスを受けられるようになれば、必ずニーズはある」と分析する。

 

 すでに、IT(情報技術)先進国の米国では、法律分野でIT技術を活用する「リーガルテック」市場が1・6兆円に達したと見られている(本誌3739ページ参照)。この流れは、幕末に開国を迫った「黒船」のように、IT化に大きく出遅れている日本の司法を変えようとしている。

 

 いち早く対応しているのが、大手法律事務所だ。企業法務分野の業務効率化にAIの活用を開始している。社内文書がデジタルで保管される時代には、例えば企業不祥事の調査はAIのほうが優れている。業務の一部をAIが担えば、「弁護士は空いた時間をより創造性のある仕事に使うことができる」(経営に携わるパートナー弁護士)。

 

 

 また弁護士の中には、AIの開発に自ら乗り出す「開拓者」もいる。弁護士業務での経験を生かし、より依頼者目線の法的助言をするのが狙いだ。ブロックチェーン技術を使ったスマートコントラクト(一定の条件を満たした場合に自動実行する契約)の開発を目指す中堅事務所の弁護士もいる。「弁護士業務の社会的価値を、テクノロジーを活用して広げることも弁護士の仕事」と勝機をうかがう。

 

 

 ◇安住は危険

 

 弁護士人口は1月末に4万人を超えた。日本弁護士連合会の将来推計によると、2049年に6万4000人でピークを迎える。しかし、日本では大多数の弁護士に、危機感がない。

 

 

 大きく伸びたとはいえ、弁護士数を米国と比べると、わずか30分の1。米国では「lawyer」に含まれる司法書士や弁理士などを加え、人口1人当たりの数で比較しても、まだ届かない。1512月に発表された野村総合研究所と英オックスフォード大の共同研究で、「AIやロボットで技術的に自動化できる職業」として、司法書士78・0%、公認会計士85・9%、税理士92・5%と士業が軒並み高くなっている中、弁護士はわずか1・4%だ。仕事が奪われるという脅威を現実のものとして感じられないのだ。

 

 

 しかし、その認識は大きな誤りだ。現状にあぐらをかく弁護士は、いずれ、淘汰(とうた)されることになる。

 

(酒井雅浩・編集部)

(谷口健・編集部)

週刊エコノミスト 2018年2月27日号

発売日:2018年2月19日

特別定価:670円



衰えた市場に金利急騰リスク=平田英明〔出口の迷路〕金融政策を問う(20)

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金融市場は日銀の出方をうかがうのみとなった。出口では、市場の金利形成機能を復活させる手立てが不可欠だ。

 

 

平田英明(法政大学経営学部教授)

 

 日銀は2016年9月にイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)政策を導入して以降、短期金利マイナス0・1%、長期金利ゼロ%程度という目標を実現できている。

 

 白川方明前総裁の時代までは、長らく長期金利の制御は日銀にはできないとされた。これは、金利の期間構造理論を踏まえたものである。すなわち、長期金利は予想される将来の短期金利の平均に等しくなるかたちで市場において自律的に決まり(純粋期待理論)、そこにリスクプレミアムが乗ると考える。逆に、短期金利はインターバンク(銀行間取引)市場を通じて日銀がある程度制御可能であり、その積み重ねを通じて、間接的に長期金利に影響を与えていくことによって金融政策の効果が徐々に表れてくる。

 

 では、黒田東彦総裁の時代に入り、なぜ180度方針転換して長期金利までを日銀が直接制御できるとし、実際に金利目標を実現できているのだろうか。

 

 最大の原因は、大胆な非伝統的金融政策の結果として実現した国債市場における日銀の市場シェア(保有残高で全発行額の約4割)の大きさだ。加えて、日銀と市場のコミュニケーションの改善努力も成功の鍵となった。

 

 ◇指し値オペで指示される金利

 

 本来、市場の主人公は民間部門であるべきだ。だが、あえて日銀は「官製市場」を作り出して市場機能を犠牲にしてまでも、長期金利をコントロールしていくことが必要だと考えていることになる。

 

 その大きな理由の一つが、マイナス金利導入直後に、長短金利があまねくマイナス化してしまったという事実だ(図)。金融機関が日銀に保有する当座預金の一部へのマイナス0・1%の付利政策のため、短い年限の金利はともかく、長期金利までマイナス化したのは日銀の想定外であった。つまり、単にシェアの大きさだけで長期金利が適正水準に制御できるのではなく、そこに金融機関との密なコミュニケーションを付け加えることが、必要不可欠だったことを意味する。

 

 

 

 YCCの「巧みさ」は、長期金利を持ち上げるだけでなく、極めて直接的に金利を押し下げるすべも備えているところにある。すなわち、金利上昇局面では、指し値オペという利回りを日銀が指定して無制限に国債を買い入れるオペを利用することで、値付けのシグナルを日銀が直接的に市場に伝え、市場をクールダウンさせられる。米国の金利上昇が意識される中、長期金利の上振れ傾向をけん制する形で、通算4回目7カ月ぶりとなる指し値オペが2月2日に実施されたばかりだ。

 

 極端な表現をすれば、現在の金融市場では短期から長期に至るまで、まるで日銀は保育園の先生、民間の金融機関は保育園児としてある種の主従関係が構築されているような状況になっている。有事に備えた笛(指し値オペ)を持つ先生は、園児に手をつながせて白線(金利目標)の内側をしっかりと歩かせることに成功している。短期の資金繰り機能の部分のみならず、もっと長い期間の債券市場における金利形成機能の部分まで、日銀は市場機能を上手に低下させて、当局の意図を市場に極めて細かく伝えられるようになった。その結果、市場関係者にとっては、先生の指示する金利水準を理解することのみが必要な能力となっている。

 

 今後、米欧での金利上昇が見込まれる中で、日本の金利にも上昇圧力が加わる機会が増える。当面、明示的なテーパリング(国債買い入れ額減少)が実施されない状況では、長期金利のコントロールは、「先生と保育園児」の関係と国債市場の日銀シェアを背景に、粛々と実行されると思われる。

 

 では、テーパリングの局面に入るとどうか。

 

 YCCの下での日銀と市場との主従関係は、ある意味でのコミュニケーションの構築ができている状態だ。だが、将来的に出口を展望し、市場において金利の予想やリスクプレミアムを織り込んだ自然な長期金利形成を促していく局面では、このレベルの関係では不十分だ。「大人同士」の関係で対話や合意形成ができる関係の構築が不可欠となる。ただし、一連の黒田バズーカでも、5年が経過してなお政策目標未達という事実に、市場は対日銀の不満のマグマをためており、一筋縄ではいかないだろう。

 

 そして、金利上昇による利払い負担増と財政健全化に直面する政府も交えて意思疎通を図る必要がある。それなくして、市場の混乱を招かない長期金利の低位安定化は難しい。

 

 今般の緩和からの出口に向けた取り組みは、かつての量的緩和からの出口に比べると、数段ハードルが上がる。短期から長期に至るまでの金利市場全般、さらには株式市場までを視野に入れながら行う必要があるためだ。さらに年間国債保有残高を買い入れで増やすペースが財政赤字(すなわち新規国債発行額)を下回る局面に入ると(詳細は本誌171017日号掲載の連載第2回、小黒一正氏の稿を参照)、金利を低く抑え続けられるかは不透明となってくる。

 

 06年の量的緩和からの出口の経験を振り返ろう。量的緩和では、オーバーナイト物(短期金融市場)の金利がゼロとなり、短期資金の取り手は日銀の資金供給オペに頼り、市場取引がしぼむ中で、資金の出し手はコストを賄う利益を出せなくなった。従来は資金の取り手であった銀行が、出し手に転ずるなど、市場の構造も大きく変化した。

 

 結果として、「市場参加者は自らの金利観や資金ポジションを考えながら資金取引を行う必要」が低下し、「短期金融市場を支える市場インフラの縮小」が進んだ(「」内は081125日の白川総裁〈当時〉講演より引用)。

 

 市場インフラの縮小とは、担当人員の削減や取引ノウハウが培われなくなることなどを指す。つまり、緩和解除後(出口後)の円滑な市場機能の実現に向け、市場インフラを再構築するため、日銀は市場との対話を通じて民間のウオームアップを支援する必要があった。例えば、量的緩和解除後まもなく、金利正常化に向けて日銀は短期金融市場の課題をきめ細かく説明したリポートを公表し、積極的に市場と対話する機会を作った。

 

 ◇政府も金利形成の当事者

 

 ここで、13年1月に政府と日銀間で交わされた共同声明を思い出したい。政府側の約束は財政健全化であったが、実質的にほごにされてしまっている。出口を展望する中で、市場(オペ先)、日銀、政府の三者が「三方一両損」的にお互いにリスクを共有し合うフレームワークを策定・合意し、三者とも不退転の決意を明確にするべきだ。

 

 その実現に向け、まずは出口に向けた青写真の策定を行う必要がある。緩和と異なり、出口に関して市場はサプライズを嫌う。どのようなペースで段階的に量的緩和を弱め、金利水準を引き上げていくのかについて見通しを示すことが肝要だ。また、この間の市場の変化を把握しながら、市場機能の回復に向けた道標を示すことも忘れてはいけない。将来的な政策金利の見通しを市場に示すことで、市場が政策の見通しをしやすくし、プラスの金利のある状況に市場を慣らしていくことに腐心することも大事だろう。

 

 量的緩和の導入や解除については、日本が先例となったが、テーパリングから引き締めへのプロセスは逆に米欧が先例となる。既に明らかなのは、忍耐強く長期戦で市場と対話・合意形成していくことの大切さだ。ただ、いくら日銀が忍耐強くても、景気がどこまで忍耐強いかは極めて不透明だ。景気後退局面入りし、出口の機会を逸するリスクは十分にある。残された時間は限られている。

 

 

(平田英明・法政大学経営学部教授)

 ◇ひらた・ひであき

 

 

 1974年東京都生まれ。96年慶応義塾大学経済学部卒業、日本銀行入行。調査統計局、金融市場局でエコノミストとして従事。2005年法政大学経営学部専任講師、12年より現職。IMF(国際通貨基金)コンサルタント、日本経済研究センター研究員などを歴任。経済学博士(米ブランダイス大学大学院)。


オリンパスが陥った中国「贈賄王」との泥沼の関係

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深セン工場の女子寮は一階が商店街に変貌(16年8月)
深セン工場の女子寮は一階が商店街に変貌(16年8月)

巨大リゾート経営の「贈賄王」がオリンパスの中国・深セン工場の女子寮を実行支配している――。

 

取引を承認した取締役は特別背任に問われる疑いがある。オリンパス贈賄疑惑の続報をお伝えする。

 社内弁護士の内部告発により中国企業「安平泰投資発展有限公司(安平泰)」とのトラブルが発覚したオリンパス。しかし、安平泰は実質的な親会社「安遠控股集団公司(安遠)」のダミーに過ぎない。オリンパスが深みにはまった「安遠」とは何者なのか。

 

 ◇司法部門の機関紙が名指し

 

「『贈賄王』陳族遠の刑事責任の謎」──。中国共産党中央政法委員会の機関紙『法制日報』は、2016年830日、週末版に相当する「法治週末」でそう報じた。政法委員会は中国の公安(警察)・司法部門を統括する組織だ。異例なことに、その機関紙が「贈賄王」が野放しになっている現状に苦言を呈したのだ。

 

 この陳族遠こそ、オリンパスが取引する安遠の総帥にほかならない。機関紙などによると、07年8月、雲南省交通庁副庁長だった胡星が高速道路の受注を巡る収賄により昆明市中級人民法院で終身刑の判決を受けたが、その贈賄側として陳族遠が3200万人民元を渡していたことが判明。さらに、1512月、広州市共産党委員会書記だった万慶良の汚職事件でも、陳族遠が5000万人民元を贈賄していたことが南寧市中級人民法院の初公判で明らかになった。だが、いずれの事件でも、陳族遠は逮捕・立件された形跡がない。機関紙は「陳族遠の件については、政府はなぜか沈黙を守っている」と指摘する。

 

 陳族遠とは一体、どんな人物なのか。ネット上には詳しい経歴も顔写真も一切見当たらない。

 

 機関紙や現地の情報などを集約すると、陳は1962年、広東省掲陽市掲西県長灘村に生まれた。最終学歴は中学校卒業。87年に広東省掲西県建設委員会に入り、掲西工程公司深セン支店の総経理を経て、93年に安遠グループを設立したとされる。ウェブ上に痕跡が残る同社ホームページ(現在は閉鎖)の事業概要によると、不動産開発、インフラ投資、旅行、医薬、鉱山、水力発電などを手掛け、グループ企業は約60社。深セン市のほか広東省掲陽市、江蘇省南京市、江西省〓州市、雲南省昆明市などで活動している。

 

 安遠の本社所在地は、深セン市福田区の高層マンション団地の一角にある「安遠大厦」。人民日報系ニュースサイトの14年1月の報道によると、この土地は、中国人民武装警察部隊(国内の治安維持を任務とする準軍事組織)が所有しており、本来は分譲マンションを建てることができない。

 

 ◇ヤクザ使い住民追い出し

 

 陳族遠は03年、故郷である掲西県に約745ヘクタールの巨大リゾート「京明温泉度假村」を開園した。建設の際には、地元ヤクザの頭目、張志超を使って土地を無理やり接収し、多数の住民が負傷したという。張志超は07年に別件で逮捕され、反社会組織への参加、強盗などで懲役13年が確定している。陳族遠は09年にはリゾートの隣接地に広大なゴルフ場をオープンした。これらの施設では、共産党や地方政府の幹部を接待していたと見られている。

 

 しかし、習近平党総書記が13年1月から反腐敗運動を始めた影響で、安遠の経営は悪化しているようだ。15年には広東省発展改革委員会がゴルフ場の営業を禁止。16年8月の段階では、ゴルフ場は草ぼうぼうの状態だった。安遠の全株式は15年、甘粛省のノンバンク「光大興隴信託」によって一時、差し押さえられた。反腐敗運動の影響で、資金繰りが苦しくなっている可能性がある。

 

 

「贈賄王」のゴルフ場は荒れ放題だ(16年8月)

 

 オリンパスの深セン工場(OSZ)が安遠に深セン税関とのトラブル解消を依頼したのは13年5月。反腐敗運動が始まった直後だ。安遠にとり、内視鏡事業で高収益を上げるオリンパスは「格好のカモ」に映ったに違いない。OSZは14年4月に安遠のダミー会社、安平泰と税関問題解決に向けたコンサル契約を締結。成功報酬は4億円の現金と、工場の女子寮2棟の譲渡だった。トラブルは同年8月に無事解決し、OSZは12月、安平泰に4億円を支払った。

 

 だが、本誌2月6日号で報じたように、この取引について、アジア統括子会社の法務責任者が「安平泰が深セン税関を買収したのでは」と懸念を示し、15年2月に社外取締役が委員を務める社内調査委員会が発足、女子寮の譲渡は凍結された。これに対し、安平泰が1612月にOSZを相手取り、女子寮の譲渡か47億円の損害賠償の支払いを求めて、深セン市中級人民法院に訴訟を提起して、現在に至っている。

 

 ◇「しゃぶれるだけしゃぶる」

 

 当の女子寮は現在、どうなっているのか。編集部が入手した写真によると、驚くべき事実が判明した。OSZは深セン市南山区高科技園区に女子寮を4棟保有しているが、そのうちの二つ(1号棟と10号棟)の1階部分の塀や壁が壊され、多数の小規模な賃貸店舗に改装されていた。深セン市は同地区の建物の第三者への譲渡と使用許諾を禁止している。それにもかかわらず譲渡が履行される前から、安平泰に「実効支配」されている。

深セン工場の女子寮は1階が商店街に変貌(16年8月)

 

 OSZによる安平泰への「食堂運営」「清掃・警備」「廃棄物処理」の業務委託も継続している。この3分野は、地元反社会勢力の「しのぎ」であることは、本誌2月6日号で指摘した。長らく深センで活動する日系企業の経営者は、「3分野を全部同じヤクザに任せてしまったのは相当深刻。彼らはしゃぶれるだけしゃぶるつもりだろう」と語る。

 

 共産党による一党独裁の中国では、政府の行政機関に対し、党が圧倒的な優位に立つ。たとえ裁判で贈賄が事実認定された反社会勢力でも、時の権力者が自分にとって目障りな人物の排除に役立つと見れば、一種の司法取引で、罪を一時棚上げにすることがあるという。オリンパスが「安平泰による深セン税関の買収はなかった。法的な問題はない」と主張できるのも、こうした背景があると見られる。

 

 しかし、中国の公安・司法部門が「贈賄王」と公式認定している相手とコンサル契約を結んだオリンパスの経営陣に「責任なし」というのは無理があるのではないか。1510月に完成した社内調査報告書のほか編集部が入手したオリンパス内部資料によると、木本泰行会長(当時、現日本板硝子社外取締役)、笹宏行社長、藤塚英明専務(同、現丸井常勤監査役)、竹内康雄専務(現副社長)らが安平泰による贈賄リスクを認識していた。

 

 また、安平泰への女子寮の譲渡価格は1800万人民元(約3億円)で、市場価格の15分の1以下と異常に安い。OSZは安遠との契約にサインしたので、仮に相手が反社会勢力であると主張し契約の無効を訴えても、中国の裁判制度では負ける公算が高い。海外贈収賄案件に詳しい弁護士は、「たとえトラブル解決のためであっても、相場より不当に安い値段で、しかも、反社会勢力を相手に譲渡するとなると、会社法の特別背任罪成立の可能性は十分にある」と語る。

(編集部)

 

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社会課題からエンタメまで「ポジティブなインパクト」の先に=古田大輔・バズフィード・ジャパン創刊編集長

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https://www.buzzfeed.com/jp

 

古田大輔(バズフィード・ジャパン創刊編集長)

 

ふるた・だいすけ◇1977年生まれ。02年朝日新聞社入社。京都総局、豊岡支局、社会部、アジア総局(バンコク)、シンガポール支局長、デジタル版編集などを経て、15年10月から現職。


 BuzzFeed Japan(バズフィード・ジャパン、以下BFJ)はアメリカ生まれのインターネットメディアBuzzFeedの日本版として、2016年1月に創刊しました。現在、日本の編集部は40人を超え、文字コンテンツの読者が月間2000万人超、動画再生回数は月間1億回と急成長を遂げました。国内で、テキストも動画もこの規模に達しているメディアは他にほとんどないでしょう。

 

 扱う内容は、ニュースからエンターテインメントまで。政治や社会問題のシリアスな記事もあれば、お役立ち商品や笑える話題、クイズなどネットならではのコンテンツもあります。

 

 幅の広さに戸惑う人もいますが、我々自身は自然だと考えています。「人々の生活にポジティブなインパクトをもたらすこと」というBuzzFeedの理念に沿っているからです。エンタメで笑ったり、ニュースで学んだり。いずれもポジティブです。テレビ局が報道もバラエティーも手がけるように、新聞に4コマ漫画があるように。

 

 それをデジタル時代の最新の手法で伝えます。読者の多くが使うスマートフォンで見るのに適した形で、文字や動画表現などあらゆるフォーマットを使っています。

 

 創刊編集長の私自身は元々は新聞記者でした。学生の頃からネットが大好きでしたが、02年の入社当時はまだネットメディアは規模が小さく、記者になるために最初に選んだのが新聞でした。新聞社でさまざまな現場を取材できたことは大きな糧となっています。

 

 しかし、年々部数は下がり、特に同年代から下の世代は新聞紙をほとんど読んでいない。そこで、シンガポール支局長を終えて日本に帰る際に朝日新聞デジタル編集部を希望しました。欧米でデジタル技術によって次々と生まれている新たな手法や報道を学ぶうちに出会ったのがBuzzFeedでした。

 

 自社のサイトだけでなく、FacebookやTwitterやInstagram、YouTubeなどあらゆるプラットフォームでコンテンツをユーザーに届ける。若い読者層ともつながるのが大きな魅力だと感じました。

 

 ◇シェアだけでなく行動を促す

 

 誘いを受けて創刊編集長に就任し、新聞社やテレビ、ネットメディアなどから人を集め、成長を続けています。規模を大きくするだけでなく、社会課題の報道にも取り組んでいます。

 

 その一つが情報の検証です。フェイクニュースや不正確な情報に対抗するため、BFJではいわゆるファクトチェックに力を入れています。昨年の衆院選でも政治家の発言からネットの噂(うわさ)まで、その真偽を明らかにしてきました。

 

 DeNAが運営する医療情報サイトWELQ(ウェルク)が不正確な記事を掲載していた問題について、その内部マニュアルをスクープしたのもBFJです。これがネットの情報の質をめぐる議論に与えたインパクトは大きなものでした。最近では性的被害を「自分も受けた」と告発する「#metoo」に関連して、著名インフルエンサー(SNSで影響力を持つ人)のはあちゅうさんが受けた被害について報じたのもBFJです。

 

 BFJは「シェアされるメディア」を目指してきましたが、今年からは新たな目標を掲げています。それは「行動につながるメディア」です。例えば、記事を見て自分も発言する、料理動画を見て自分も作る、旅行記事を見て自分も旅をする。そして、コンテンツをシェアし、議論する。

「#metoo」の広がりが示すように、既にそれは始まっています。さらに加速させていきたいと思っています。

 

*週刊エコノミスト2018年2月20日号掲載

ニーズかなえて世界トップシェア 池田和明 ミマキエンジニアリング社長

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 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ミマキエンジニアリングの特徴は。

 

池田 業務用インクジェットプリンターで世界トップシェアメーカーです。インクジェットは印刷技術の中で唯一、プリントする対象物と接触しません。ガラスや金属、プラスチックなど素材はもちろん、凹凸のあるものや立体でも印刷ができるという大きなメリットがあります。

 

── 立体でもきれいに印刷できるのですか。

 

池田 対象物とインクヘッドの位置を合わせることが重要です。距離1~2ミリが最もきれいに印刷できますが、立体物で距離を保つのは難しい。またインクの種類によって重さが違い、真っ直ぐにインクを落として、乗せるのにも調整が必要です。当社の技術力で可能にしています。

 

── どんな市場がありますか。

 

池田 屋外広告用のサイングラフィックスが、売上高の45%を占めます。屋外広告の素材は塩化ビニール製のシートがメインです。当社が大きく成長したきっかけは、塩ビへの印刷技術です。以前は水性インクしかなく、印刷前にインクを乗せる特別な処理が必要でした。それを直接、塩ビに印刷できるインクを2003年に発表しました。手前みそですが、これで世の中の看板は、アナログからデジタルに進化しました。

 

── ほかに有力な分野は。

 

池田 工業製品用のインダストリアル・プロダクツが30%です。10%を超えた布地用のテキスタイル・アパレルに今は力を入れています。

 

── アパレルには成長の可能性がありますか。

 

池田 インクジェットが発展することで、業界全体の常識を変えました。これまでは、季節ごとのデザインを半年前に決めていました。ほかの印刷技術の場合、版を作る必要があり、試作から製品化まで逆算すると、そのくらい時間がないと間に合わないためです。ブランド戦略にとってデザインは重要なのに、投入時に流行が変わっていることもあります。

 

── どう変えたのですか。

 

池田 当社製品を150台納入している欧州の大手ファストファッションブランドは、製品化までの期間が2週間です。流行を分析し、求められるデザインをすぐに市場に出す。版が不要なインクジェットでなければそのスピードは不可能です。版が不要なことで、多品種少量生産でも単価が変わらず、すぐに印刷できるため、在庫を抱える必要がないというメリットもあります。誰でも知っている世界的な高級ブランドや、シューズメーカーにも納入しています。

 

 池田社長は39歳で就任。前任の60代から大きく若返り、経歴も技術畑から営業畑と変わった。「真のグローバル企業」を掲げ、年間売上高も現在の倍の1000億円を目標に据える。

 

── 重視することは。

 

池田 ニーズにとことん合った製品開発に取り組みたい。大手メーカーは、企画から開発、市場投入まで、時間と費用がかかります。そのため「どれだけヒットしても数億円」という製品は、要望があることがわかっていても開発できません。当社は、実際に印刷するプリンター部分と、印刷物の搬送系統を別々に開発、販売しています。大きさや印刷する対象によって、組み合わせることで、顧客のどんなニーズにも応えられる。車でいえばボディーとエンジンを別々に、好きなものを選んでもらうやり方です。「プラットフォーム構想」と呼んでいますが、より顧客目線で充実させたいと思っています。

 

 また、私は当社で海外営業をメインに担当してきたので、よりシェア向上や市場開拓を狙いたいですね。

 

── 海外事業の比率は。

 

池田 売上高の75%が海外です。欧州30%、アジア・オセアニア20%、北米15%という比率です。屋外広告用の看板はニッチな市場ですが、まだ普及していない国も多い。積極的に海外展開を進めており、16年にイタリアのテキスタイルプリンターメーカーをM&A(合併・買収)し、17年にはリトアニアにインク製造工場を新設しました。

 

 ◇3Dプリンターが好調

 

── 足元の業績は。

 

池田 18年3月期の売上高は、前年比7・9%増の521億5000万円の見通しです。中長期的に1000億円を掲げていますが、印刷業界のデジタル化によって自然に届く数字です。当社の技術力を生かして、そのさらに先を目指したい。

 

── そのための鍵は。

 

池田 3Dプリンターです。国内で17年11月に販売開始し、1月に米国、2月に欧州でも始めました。1000万色以上のフルカラー造形は世界初です。高精度で豊かな色彩表現ができ、技術でも世界トップだと自負しています。大きさは幅50センチ、奥行き50センチ、高さ30センチの限りがありますが、造形を組み合わせることでどんな大きなものでも作ることができます。年間販売目標は100台で、既に日本だけで10台納入しました。私たちが考えてもみなかった活用方法や、さまざまな業種から問い合わせがあり、目標を上方修正します。

 

── 池田社長らしさをどう出しますか。

 

池田 社長の私も含め、当社は世代交代の時期になっています。若返ることで「新しい製品を開発する」というベンチャー精神を改めて意識したいと思っています。結果的に、売れない製品でもかまわない。失敗を恐れず、挑戦を続けていきます。

 

(構成=酒井雅浩・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 営業でインドを何度も訪れました。交渉がまとまり、内容を詰めに行くと「この値段はおかしい」とまた一から始まる。パワーに圧倒されました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 行く国々の歴史本を読むようにしており、いろいろと学ぶことがあります。最近では、『物語 バルト三国の歴史』です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 今年からゴルフを始めました。もう2回、コースを回りました。

………………………………………………………………………………………………………

 ■人物略歴

 ◇いけだ・かずあき

 1976年生まれ。長野県出身。長野県上田染谷丘高校、米GTインターナショナルスクール卒業。2006年ミマキエンジニアリング入社。11年グローバル販売推進部長、13年取締役営業本部長などを経て、16年から現職。41歳。

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事業内容:コンピューター周辺機器やソフトウエア開発、製造、販売

本社所在地:長野県東御市

設立:1975年8月

資本金:43億5700万円

従業員数:1623人(2017年9月30日現在・連結)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:483億3100万円

 営業利益:20億4900万円

 

金利上昇でも銀行の収益減は一時的=宮嵜浩〔出口の迷路〕金融政策を問う(21)

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量的緩和の出口では金利の上昇が金融機関の収益を悪化させる、との懸念があるが、試算すると影響はさほど大きくない。

 

宮嵜浩(三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所シニアエコノミスト)

 

日本銀行が2013年4月に「量的・質的金融緩和」を採用して以来、大規模緩和に伴うさまざまな「副作用」が指摘されてきたが、その多くは、日銀の国債買い入れ縮小に伴う長期金利の上昇や、日銀保有国債の増大による将来の含み損リスクといった、金利上昇に起因するものだった。16年2月のマイナス金利政策の導入をきっかけに急浮上した「副作用」は、過度な金利低下による金融機関収益の悪化であり、他の「副作用」とは一線を画している。

 

 16年度の全国銀行ベースの経常利益は前年度比18%減少した。全国銀行協会の小山田隆会長(当時)は、16年度決算発表後の会見(17年5月18日)で、「マイナス金利等を受けた預貸利ザヤの低下とそれに伴う資金収益の減少が大きい」と述べている。

 

 マイナス金利政策によって、銀行の貸出金利と預金金利はともに低下した。しかし、預金金利の低下幅は貸出金利に比べ小幅にとどまったため、貸出金利と預金金利の差である利ザヤが縮小した。日銀は16年9月21日の「総括的な検証」で、「貸出金利の低下は金融機関の利ザヤを縮小させることで実現している」との認識を示した上で、イールドカーブ(利回り曲線=短期金利と長期金利の利回りの差と水準を示す)の過度な低下ないしフラット化(長短金利差の縮小)が、経済活動に悪影響を及ぼす可能性があると指摘している。現在の「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」は、イールドカーブが金融仲介機能に及ぼす影響に配慮した、金融政策の枠組みである。

 

 ◇二つのケースで試算

 

 イールドカーブの過度のフラット化が是正されたこともあり、銀行の収益は17年度に入り悪化に歯止めがかかりつつある。しかし今後、2%のインフレ目標が達成され、政策金利の引き上げによって金融機関の資金調達コストが上昇すると、貸し出しや資産運用から得られる収益との利ザヤが再び縮小する可能性がある。実際、過去の金融引き締め局面では、イールドカーブがフラット化するケースが一般的である。

 

 そもそも、預金・貸し出しという「金融仲介サービス」は、イールドカーブのフラット化局面で、収益を生み出しえないのだろうか。また、銀行の収益源が多様化する中、投信や保険などの販売手数料収入や、株式・債券などの金融資産売買益などの「金融仲介以外のサービス」に、金融機関収益を押し上げる余地がどの程度あるのか。以下では、13年4月の「量的・質的金融緩和」開始から「出口」によるバランスシート正常化までの期間において、日銀の金融政策が、金融機関収益にどのような影響を及ぼすのかについて検証する。

 

 まず、日本経済がデフレから脱却し、バランスシートが正常化するまでの経済環境を「ケース1」として、以下のように想定する。

(1)19年3月期の終わりに、消費者物価上昇率(CPI)上昇率2%、名目国内総生産(GDP)上昇率2・5%を達成。

(2)長期金利は20年3月期から上昇が始まり、21年3月末までに2・5%に上昇(2年かけて市場金利が正常化する)。その後、2・5%で安定。

(3)政策金利は、20年3月末までゼロを維持。21年3月期から徐々に引き上げ、22年3月期末に1・5%(2年で1・5%上昇)。以後、1・5%で安定。

 一方、ケース1よりも短期金利の上昇幅が大きいケースを「ケース2」とする。

(1)、(2)はケース1と同じ。(3)政策金利は20年3月末までゼロを維持。21年3月期から徐々に引き上げ、22年3月末に1・5%、23年3月末に2・5%(3年間で2・5%まで引き上げ)。その後は2・5%で安定。この仮定の下では、イールドカーブがフラットになる。

 なお、ケース1とケース2の違いは、イールドカーブのフラット化の度合いのみである。両ケースを比較することで、イールドカーブがデフレ脱却後の金融機関収益に及ぼす影響が浮き彫りとなる。

 

 以上の前提をもとに、金融機関収益を「金融仲介サービス」と「金融仲介以外のサービス」に分けて推計した。

 

 「金融仲介サービス」の収益構造は、(1)長短金利差(イールドカーブ)、(2)信用リスクプレミアム(貸出先の信用力に応じた上乗せ金利)の二つの要因に分解。(1)の長短金利差として「10年国債利回り-LIBOR〈ロンドン銀行間取引〉3カ月物円金利」、(2)の代理変数として名目GDP、そして線形トレンド(過去の実績に基づく傾向)の3変数で「金融仲介サービス」を説明する線形回帰モデルを用いた。同モデルによると、名目GDPが1%増加すると「金融仲介サービス」の収益が0・87%増加し、長短金利差が1%ポイント上昇すると「金融仲介サービス」の収益は7・3%増加することになる。

 

 一方、「金融仲介以外のサービス」の推計には、株式などの資産価格の代理変数としてGDPギャップ(現実のGDPと潜在GDPの差、景気がよくなればプラス方向に動く)を使い、線形トレンドの2変数を説明変数とする線形回帰モデルを用いた。同モデルによると、GDPギャップが1%ポイント上昇すると「金融仲介以外のサービス」が2・8%増加する。

 

◇重要なのは名目GDPの成長率

 

 図は、「金融仲介サービス」と「金融仲介以外のサービス」を合算した金融機関収益の将来推計値を、営業利益に近い概念で示している。ケース1、ケース2とも、将来推計期間にかけておおむね右肩上がりの収益増加経路をたどっていることが見て取れる。

 

 収益の減少は、ケース1で22年度に、ケース2では22年度と23年度に生じているが、いずれも長短金利差の縮小による金融仲介サービスの収益減少に起因している。もっとも、減少はあくまで一時的である。金融機関収益の趨勢(すうせい)を決定しているのは、名目GDPの増加によってもたらされる信用創造の積極化と、GDPギャップが示す金融資産価格の上昇である。

 

 イールドカーブの変動は短期的には無視できないが、もとより長短金利差は金融引き締め局面で縮小し、金融緩和局面では拡大するという循環変動を描く性質のものである。マイナス金利政策の導入に伴うイールドカーブのフラット化は、極めて例外的な現象に(宮嵜浩、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所シニアエコノミスト)すぎない。「金融仲介サービス」の収益の主たる源泉は、信用リスクプレミアムの拡大を伴った信用創造の積極化である。デフレ脱却を実現し、名目GDPが趨勢的に上昇する局面に復帰することが、「金融仲介サービス」にとって決定的に重要である。

 

 足元で物価上昇率が高まりつつあるにもかかわらず、長短金利操作で長期金利を一定の水準にとどめることは、将来の金利上昇リスクを高めるとの懸念は根強い。

 

 しかし、性急に長期金利を上げることは、銀行の金融仲介サービスにとって短期的にはプラスとなろうが、デフレ脱却に伴う信用創造の積極化という、より優先順位の高い政策目標の実現には何ら貢献しない。むしろ、市場の早期引き締め観測を強めて、デフレ脱却を遅らせるリスクもある。将来の長期金利の過度な上昇を警戒するのであれば、デフレ脱却後の金融引き締め局面で、長期金利目標を調整ないし撤廃するべきであろう。

 

(宮嵜浩、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所シニアエコノミスト)

◇みやざき・ひろし

 

 1971年兵庫県生まれ。94年慶応義塾大学法学部卒業。2001年中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。山一証券、三和総合研究所、しんきんアセットマネジメント投信チーフエコノミストなどを経て、13年から現職。著書に、『アベノミクスは進化する』(共著)、『実践・景気予測入門』(共著)など。

 

目次:2018年3月6日号

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 CONTENTS

 

さらば!現金

22 ルポ 財布もレジもいらない 米アマゾン・ゴーで買い物 ■鈴木 淳也

25 「指だけ決済」を湯河原でやってみた ■池田 正史

26 図解 キャッシュレス決済は世界で2000兆円超 ■編集部

  アリペイ、ウィーチャットペイ、LINE、楽天、オリガミ、ドコモ、メルカリ

28 日本のアリペイ目指す決済ベンチャー

  青柳 直樹 メルペイ社長  康井 義貴 オリガミ社長

29 インタビュー 岩下 直行 元日銀フィンテックセンター長 「現金決済が日本経済の足を引っ張っている」

30 中国 決済履歴で「信用」蓄積 ■山谷 剛史

31 台湾 政府肝いり「台湾ペイ」大苦戦 ■井上 雄介

32 インド 指紋+マイナンバーで買い物■中村 聡也/鶴山 えりか

34 銀行の浮沈 異業種参入で崩れる優位 ■淵田 康之

36 変わる金融政策 量的緩和やマイナス金利の効果高まる ■木内 登英

38 インタビュー 浜 矩子 同志社大学教授 「通貨電子化の功罪を慎重に検討すべきだ」

40 ウルグアイ、エクアドル 法定デジタル通貨の試験導入相次ぐ■永田 翼/林 康史

41 スウェーデン 現金使えず困った! 高齢者や過疎地で不便も ■綿貫 朋子

 

Flash!

15 日銀副総裁に雨宮、若田部両氏/平昌オリンピックでサイバー攻撃

17 ひと&こと アマゾン対抗でセブンとイオンにねじれ/シェアハウス投資で賃料高すぎ/コインチェックの補償金原資はどこに

 

Interview

4 2018年の経営者 池田 和明 ミマキエンジニアリング社長

18 挑戦者 2018 大石 英司 みんな電力社長

48 問答有用 小林 味愛 「陽と人」代表取締役

  「福島で持続可能なビジネスモデルを確立したい」

 

エコノミスト・リポート

86 中国の原発攻勢 新型炉が続々運転開始 10年後には世界一の原子力大国に ■窪田 秀雄

 

42 教育 学習塾大再編の引き金は「エデュテック」 ■小林 弘典

44 贈賄 オリンパスが中国当局を「10万人民元」で買収 ■編集部

78 ロシア 大統領選挙で盤石プーチン氏、経済運営に死角 ■大前 仁

80 流通 「ネットか店舗か」ではなく顧客ニーズ重視にこそ勝機 ■清水 倫典

 

World Watch

62 ワシントンDC 不透明感増す外国投資審査 ■ゲーリー・ホワイト

63 中国視窓 生活雑貨店の出店続々 ■岩下 祐一

64 N.Y./ロサンゼルス/英国

65 韓国/インド/マレーシア

66 上海/ロシア/イラン

67 論壇・論調 独3党大連立はSPDの「大きな政府」色濃く ■熊谷 徹

 

Viewpoint

3 闘論席 ■佐藤 優

21 グローバルマネー AI化が賃金上昇を鈍くする

46 名門高校の校風と人脈(279) 広島大学附属高校(広島県) ■猪熊 建夫

52 学者が斬る 視点争点 税務データをGDPに活用しよう ■飯塚 信夫

54 言言語語

68 アディオスジャパン(91) ■真山 仁

70 海外企業を買う(179) ロク ■岩田 太郎

72 出口の迷路(21) 金利上昇でも銀行の収益減は一時的 ■宮嵜 浩

74 東奔政走 震災7年の「風化との戦い」 ■人羅 格

76 キラリ!信金・信組(10) 広島市信用組合(広島県)(上) ■浪川 攻

83 図解で見る 電子デバイスの今(7) 注目の新太陽電池ペロブスカイト ■松永 新吾

96 独眼経眼 野菜の値上がりで高まる家計の負担感 ■小林 真一郎

97 ウォール・ストリート・ジャーナルのニュース英語 “ Deep state ” ■安井 明彦

98 ネットメディアの視点 面接官はスマホの先のAI ■土屋 直也

103 国会議員ランキング(15) 国土交通委員会の質問時間 ■磯山 友幸

104 アートな時間 映画 [シェイプ・オブ・ウォーター]

105        美術 [ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜]

106 ローカル・トレインがゆく(13) ノスタルジー ■文・黒崎亜弓/写真・青地大輔

 

[休載]商社の深層

 

Market

90 向こう2週間の材料/今週のポイント

91 東京市場 ■隅谷 俊夫/NY市場 ■櫻井 雄二/週間マーケット

92 欧州株/為替/原油/長期金利

93 マーケット指標

94 経済データ

 

書評

56 『ゲーム理論はアート』

  『小水力発電が地域を救う』

58 話題の本/週間ランキング

59 読書日記 ■ミムラ

60 歴史書の棚/海外出版事情 アメリカ

 

55 次号予告/編集後記

特集:さらば!現金 2018年3月6日号

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 財布もレジもいらない

 米アマゾン・ゴーで買い物 

 

 ネット通販世界大手の米アマゾンが1月にオープンしたレジなしコンビニ「アマゾンGO(ゴー)」。人工知能(AI)など最新技術の粋を集めた話題の店舗を体験してきた。

 

ワシントン州シアトルのオフィス街のど真ん中、アマゾン本社ビルの近くにアマゾン・ゴーはある。店の広さは約50・6坪(約167平方メートル)で、日本の標準的なコンビニと同じくらいだ。筆者が訪問したのは2月初旬、平日の正午過ぎで客の多い時間だったが、皆、商品をぱっと手にとってすぐに店を出て行くので、客の回転率が異常に高い。

 

 

 

 ◇天井埋め尽くすセンサー

 

 入店するには、スマホでアマゾン・ゴーのアプリを起動し、QRコードの画面を表示する必要がある。店舗入り口に設置された自動改札機に似た読み取り機にスマホをかざすと、ゲートが開いた。

 

 店内は米国の一般的なコンビニとほぼ同じつくりだ。オフィス街にある店舗だからだろうか、すぐに食べられる総菜類が充実していた。アマゾンが昨年買収した米高級スーパーマーケット、ホールフーズ・マーケットの商品を置くおしゃれなコーナーもある。

 

 この店で何よりも目を引くのは、天井を埋め尽くす大量のカメラやセンサーだ。監視カメラや、さまざまな種類のセンサーが所狭しと並び、来店者の挙動をすべて監視している。

 

アマゾンは技術の詳細を明かしていないが、画像認識技術など最新の技術を複数組み合わせて客を追跡し、決済のための情報を得ていると見られる。客の腕や手の動きからどの商品を手に取ったのか、AIによる機械学習などを使って解析しているようだ。店内での来店者の一挙手一投足はすべて追跡されていると考えていい。

 

 この店には買い物カゴやカートはない。棚から取り出した商品は、自分のバッグにそのまま入れる。飲み物コーナーでルートビア(ノンアルコール炭酸飲料)を1缶、総菜コーナーで豆腐とサラダを選んだが、買い物カゴがないと、何を選んだのか自分でもわからなくなってくる。

 

 棚に並んでいる商品を手に取ると、システム上では「バーチャルカート」と呼ばれる仮想の買い物カゴに商品を入れた扱いになる。客が商品を棚に戻すと、バーチャルカートから当該の商品が消える。最終的に、店を出た時点でバーチャルカートに入っていた商品が決済の対象になる。

 

 店舗スタッフによると、最大70人の客が同時に入店可能だそうだ。大勢の客がどの商品をいくつ手にしたのか、本当にちゃんと画像解析で認識できるのだろうか。ルートビアとコカコーラを間違えることはないのか。そこで筆者は、「すばやく何度も商品を取り出したり戻したりする」「しばらく店内を徘徊(はいかい)してから商品を戻す」さらに、「商品をバッグから取り出す際に、布で商品を隠す」行為をやってみた。結果は後ほど紹介しよう。

 

 店を出る時は、レジはもちろん、入店時のようにスマホをかざすゲートもない。本当に何の手続きもなく、スッと外に出られた。

 客がバーチャルカートの中身を確認できるのは、店を出てから10分後以降だ。スマホのアプリで確認できる。さて、商品は正しいだろうか。結論から言うと、買い物内容は正しく表示されていた。

 

 バーチャルカートに入れた商品は、店を出た1時間後、あらかじめ登録していたクレジットカードで自動的に決済処理が行われた。

 

 

◇混雑時もイライラしない

 

 アマゾンは2016年末にアマゾン・ゴーの社内限定テストを開始している。その段階では、同時に数人程度を追跡するのが精いっぱいだったという。それが今では、割と混雑している状態でも、客を正確に追跡、決済できる。この1年近くでAIの画像認識技術が大きく進化したということだ。

 

 ちなみに、アマゾン・ゴーは無人店舗ではない。商品を補充するスタッフ3~4人が店内せわしなく行きかい、酒類販売コーナーの前には年齢を確認する専任スタッフがいる。総菜類を調理するスタッフもいた。店舗の内外で常時20人前後の人員が働いている。少なくとも現時点では「AIがレジ係の仕事を奪う」ことはない。それどころか、むしろ店舗の運営コストは日本のコンビニよりもはるかに高くついていそうだ。

 

 アマゾン・ゴーの重要な点は、コスト削減よりも、新しい買い物体験にある。レジでの決済がない買い物というのは、実に快適だ。筆者が訪問したような昼時の、人が多い時間帯でも、レジ待ちの大行列に並んでイライラしたりすることはない。アマゾンの「快適な買い物」というコンセプトを広く世に知らしめる効果は絶大だろう。

(鈴木淳也・ITジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト 2018年3月6日号

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発売日:2月26日


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配信日:2017年8月30日



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さらば!現金 

 

財布からお金を出して、モノを買う時代はもう終わり。現金はもはや邪魔者ですらある。デジタル通貨で社会や暮らしは大きく変わる。 

 

財布もレジもいらない 

米アマゾン・ゴーで買い物

 

 ネット通販世界大手の米アマゾンが1月にオープンしたレジなしコンビニ「アマゾンGO(ゴー)」。人工知能(AI)など最新技術の粋を集めた話題の店舗を体験してきた。

 

 

 ワシントン州シアトルのオフィス街のど真ん中、アマゾン本社ビルの近くにアマゾン・ゴーはある。店の広さは約50・6坪(約167平方メートル)で、日本の標準的なコンビニと同じくらいだ。筆者が訪問したのは2月初旬、平日の正午過ぎで客の多い時間だったが、皆、商品をぱっと手にとってすぐに店を出て行くので、客の回転率が異常に高い。

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シリーズ

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弁護士といえどもAI(人工知能)などのテクノロジーを積極的に活用することが求められる時代に突入した。

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中国当局を「10万人民元」で買収 医療機器子会社の税務トラブル巡り

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オリンパスの闇は深い(買収のやり取りをした社内メール(一部))
オリンパスの闇は深い(買収のやり取りをした社内メール(一部))

オリンパスが医療機器子会社のトラブルを巡り中国で税務当局を買収していたことが明らかになった。

 

 オリンパスで新たな贈賄疑惑が浮上した。中国の医療機器販売子会社がトラブル解消のために地元の税務局を買収、会社がひそかに関係者を処分していた。日本の不正競争防止法をはじめ、日中米の贈収賄関連法令に違反する可能性が高く、同社のコンプライアンス(法令順守)体制が改めて問われそうだ。

 

 

 編集部が入手したオリンパスの内部資料などから判明した。同社の2011年8月18日付の電子メールによると、中国統括子会社の日本人管理統括責任者が、中国の医療機器販売子会社と広州市税務局との間で発生した医療機器の備品管理を巡るトラブルを解消するために、税務局に10万人民元(日本円で約170万円)を支払うことを、医療機器販売子会社の日本人責任者に説明。管理統括責任者は、この10万人民元について「袖の下」と言明している。

 

 この管理統括責任者は、同じメールで「(賄賂は)過去から特別枠での対応をしていた」と説明。その理由として、税務上の見解の相違で脱税と見なされるケースについて、税務当局と争うと会社名が外部に公表されるため、「それを嫌がって、過去よりそういった対応をしてきた」と語っている。

 

 それに対し、医療機器販売子会社の責任者は、「結局、10万元で別途対応するのか?」と返信している。

 

 ◇2人は17年に退職

 

 管理統括責任者は、日本に帰国後、13年に本社財務部長に就任、販売子会社の責任者は14年にアジアにおける医療機器販売担当の本社執行役員に昇格した。しかし、映像機器を生産する中国深セン工場(OSZ)の贈賄疑惑に絡む社内調査が15年2月にスタートすると、その過程で、医療機器販売子会社の贈賄事案が明らかになった。

 

 関係者によると、社内調査を行った西村あさひ法律事務所の木目田裕弁護士が「直接賄賂を渡すのは明らかに日本の不正競争防止法に違反する」と指摘。その結果、オリンパスはこの2人を処分し、財務部長は17年1月、執行役員は同年3月にそれぞれ、オリンパスを退職した。

 

 オリンパスは編集部の取材に対し、「本件に関しては、西村あさひを起用して調査を実施し、必要な関係当局に自主的に報告している。なお、関係当局との関係上、公表は差し控えている」と回答。2人の退職理由については、「個人のプライバシーにも関わることなので、コメントは差し控えたい」とコメントした。西村あさひは、「この件については、回答しかねる」と回答した。

 

 オリンパスを巡っては、OSZが深セン税関とのトラブルを解消する際に雇った中国コンサルが税関を買収した恐れがあるとして、15年2月に社外取締役を委員とする社内調査委員会が発足。同年10月の最終報告書では、この中国コンサルが税関を買収した直接的な証拠が見当たらないことを理由に、「日中米の贈収賄関連法令に違反する行為が無かった」と認定している。

 

 しかし、今回、医療機器販売子会社が直接贈賄した証拠が出てきたことで、OSZの贈賄疑惑についても、独立した第三者による徹底的な再調査を求める声が強まることが予想される。

 

(編集部)

 

関連する記事

目次:2018年3月13日号

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CONTENTS

為替で読む世界経済
Part1
 適温経済の賞味期限
18
円高クラッシュが来る 米孤立化で進むドル離れ 松本 惇/大堀 達也
22
インタビュー 寺島 実郎 日本総合研究所会長 「日本発の世界金融危機が起こるか」
23
       水野 和夫 法政大学教授 「資本主義の暴走がバブルを生む」
24
バブル崩壊前夜の米国 株高限界で資産効果剥落 唐鎌 大輔
27
インタビュー 篠原 尚之 東京大学教授・元財務官 「実体経済に効果乏しい量的緩和」
28
狭まる日銀包囲網 円高進み「出口」に向かえず 菅野 雅明
30
好調・欧州の落とし穴 危ない不動産バブル 安達 誠司
32
中国リスク「灰色のサイ」 GDPの2倍の債務がマグマ 湯浅 健司
34
人民元 元高容認にかじ切った中国 村田 雅志
35
新興国 粗悪な経済運営のトルコ危うし 入村 隆秀
36
仮想通貨 ビットコイン買い続ける中国 矢作 大祐
Part2
 ドル・円の正体
82
円高・株高の真相 変化を続ける相関関係 佐々木 融
84
円は「安全資産」の誤解 「米金利上昇下のドル安」の謎
85
謎解き (1) インタビュー 池田 雄之輔 野村証券チーフ為替ストラテジスト 「原油高が招いたドル下落」
86
    (2) 米国で加速する保護主義政策 武田 紀久子
88
    (3) 適温相場のリスクオンのドル安 市川 雅浩
90
購買力平価で分析 米景気後退で1ドル=80円台に 竹中 正治
92
円高リスク インバウンド減で地方観光に打撃 宮嵜 浩

Flash!
11
中国・習近平「一強体制」へ 高まる治安、経済、金融リスク 興梠 一郎 国有企業強化を継続、遠のく経済改革 関 辰一 軍・武装警察の掌握進める 小原 凡司
13
ひと&こと 医師内紛で先端医療の危機 患者置き去りの使命感不足/西宮市長突然の辞職劇 取材拒否の姿勢貫く/受動喫煙にデータ問題波及 厚生系官僚から恨み節

エコノミスト・リポート
38
「生体解剖」に追い込まれるGE 名門コングロマリットの教訓 松田 遼
41 GE
再建に立ちはだかる310億ドルの巨額年金債務

74
航空 「MRJ」に危機 ボーイング・エンブラエルの提携浮上 吉川 忠行
78
技術革新 中央集権型を覆すブロックチェーン 「GAFA」支配を打ち破る 志村 一隆
      データの信頼性高めるブロックチェーン 編集部

Interview
4 2018
年の経営者 今井 雅則 戸田建設社長
14
挑戦者 2018 鶴巻 日出夫 FOMM社長
44
問答有用 田中 義人 ギタリスト
 「音楽を始めた頃の感動をあらためて体験しています」

World Watch
62
ワシントンDC パキスタンのサウジ派兵 背景に米のイラン包囲網? 会川 晴之
63
中国視窓 一帯一路に大きな壁 高まる欧米との外交摩擦 金子 秀敏
64 N.Y.
/シリコンバレー/スウェーデン
65
韓国/インド/シンガポール
66
台湾/アルゼンチン/南アフリカ
67
論壇・論調 米国「インフレ加速」の真実 賃金上昇なく過剰反応の市場 岩田 太郎

Viewpoint
3
闘論席 古賀 茂明
17
グローバルマネー リスク・パリティ戦略が呼んだ株価急落
42
国会議員ランキング(16) 財政金融関連委員会の質問時間 磯山 友幸
43
キラリ!信金・信組(11) 広島市信用組合(広島県)(下) 浪川 攻
48
学者が斬る 視点争点 効率的なシェアリングエコノミー 花薗 誠
50
海外企業を買う(180) アイデックス ラボラトリーズ 児玉 万里子
52
名門高校の校風と人脈(280) 石巻高校(宮城県) 猪熊 建夫
54
言言語語
68
アディオスジャパン(92) 真山 仁
70
出口の迷路(22) 政府の「脱デフレ宣言」受け、正常化へ 山川 哲史
72
東奔政走 裁量労働制データ問題で審議紛糾 法案のカギ握る経済界と公明党 佐藤 千矢子
76
福島後の未来をつくる(66) 作る人と使う人をつなげる仕組み 「顔の見える電気」を目指す 大石 英司
81
商社の深層(104) 三菱自出資比率20%へ引き上げても 商事の前に立ちはだかる日産の壁 河村 靖史/種市 房子
100
独眼経眼 異例の米国財政は将来の不安を増す 足立 正道
101
ウォール・ストリート・ジャーナルのニュース英語 “ Bipartisan cooperation ” 安井 明彦
102
ネットメディアの視点 お金に関する「問題解決」を支援する データで課題を分析し、情報提供 冨田 和成
104
アートな時間 映画 [馬を放つ]
105
       舞台 [四世中村雀右衛門七回忌追善狂言 男女道成寺]
106
ローカル・トレインがゆく(14) 三陸鉄道 (上) 文と写真・黒崎亜弓

Market
94
向こう2週間の材料/今週のポイント
95
東京市場 三宅 一弘/NY市場 堀古 英司/週間マーケット
96
中国株/為替/白金/長期金利
97
マーケット指標
98
経済データ

書評
56
『東電原発裁判』
  『中国 新たな経済大革命』
58
話題の本/週間ランキング
59
読書日記 小林よしのり
60
歴史書の棚/出版業界事情

55
次号予告/編集後記

(2018年の経営者)(今井 雅則)=(戸田建設)社長

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建設事業以外でも社会貢献を 

今井雅則 戸田建設社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 

── 戸田建設の強みは。


今井 慶応義塾図書館や早稲田大学の大隈講堂などに携わってきた歴史があり、学校に強いと言われます。また、病院など医療福祉についてもたくさんの実績があります。


──
 学校や病院に強い理由は。


今井 経営方針として「企業活動を通じて社会の発展に貢献する」を掲げています。学校については、大学の実績によって系列の高校などにも広がっていきました。病院も、事務長などの横のつながりがあることで、増えています。施工実績と共に、現場の社員も経験を積んでおり、より使いやすいものを提案できるようになっていることが大きいですね。


──
 社会貢献に力を入れているのですね。


今井 2016年10月には、建設業界全体の人材育成を狙いにした「戸田みらい基金」を創設しました。基金の規模は約3000万円で、若手技能者の育成などを目指す会社や団体に1件当たり100万円まで助成します。自社のリクルートのことだけを考えていては、業界全体の発展はありません。


──
 スーパーゼネコンとの違いは。


今井 建設の総量で勝負するかどうかだと思います。1990年代前半に80兆円を超えていた日本の総建設投資額は現在、50兆円程度まで減少しています。人口が減る日本では、今後も減少するのは当然の流れです。量が確実に少なくなる中で、量だけで勝負するのは難しい。建設以外の事業も大事になってきます。もちろん、ベースの建設がなくなることはありませんが、その他の強みもつくっていく必要があります。


──
 建設分野で大事なことは。


今井 ドローンやロボット、AI(人工知能)などの技術を利用しながら、社会問題を解決していくというところに私たちの活動エリアがあると考えています。強みにしている病院では建物だけでなく、特に地方では高齢者の見守り機能や遠隔地診療など情報関係の技術が重要になってきます。学校も、学生数が増えない大学では、人生100年時代において、生涯的な付き合いが大事になってきます。そうした新たな時代に対応する施設の提案をしていくのが、私たちの仕事です。いろいろな付加価値をつけて、よりよいものを提供していくことが求められています。


──
 具体的にはどのようなことが考えられますか。


今井 例えば、工場であれば、今後は無人化が進むでしょう。そうなると、今のように窓は不要になるうえ、エネルギーや振動などの問題を考えても、地下の工場が一番安定しているということになります。そういう意味では、工場の地下化の技術は高めていかないといけないでしょう。


──
 社員の意識改革は。


今井 12年3月期と13年3月期の連結最終損益が2年連続で赤字になった時は、量だけを追い求めて個人に負担がかかっていました。会社が強くなるためには、一人一人が強くならないといけません。各個人がどのくらい稼いでいるかを意識化するために、営業利益と人件費を合わせた「付加価値額」を社員数で割った数字を指標の一つにした「生産性ナンバー1」という目標を掲げています。

 日本初の洋上風力発電

──
 建設以外の分野ではどのような事業をしていますか。


今井 16年から、長崎県・五島列島沖で、日本初となる浮体式洋上風力発電の商業運転を行っています。そういうものを広げて社会にも貢献していくことが、生き残るためには必要だと思っています。


──
 洋上風力発電の手応えは。


今井 洋上だと、陸上より風力が安定しています。余剰電力で漁船を動かしたり、離島の交通機関に利用したりするなど、化石燃料を使わない一つの世界をつくり出すことができます。漁業権のしがらみもあり、環境アセスメントを取得するための時間がかかるなどフロントランナーとしては大変な労力を感じましたが、全国に増やしていきたいですね。


──
 再生可能エネルギー事業にはどう取り組みますか。


今井 化石燃料だけではやっていけない時代です。我々は、これまでの技術の延長上で新しいことをやろうとしています。洋上風力発電にしても、コンクリートと鉄の技術を利用して、再生可能エネルギーという日本になくてはならないものに挑戦しているのです。私たちの領域を少しでも広げられるのであれば、M&A(企業の合併・買収)も検討していきたいですね。


──
 現在の海外展開は。


今井 米国やタイ、ベトナムなどに9拠点があります。特に72年に現地法人をつくったブラジルでは、経済の低迷で他の日系企業が撤退する中、歯を食いしばって仕事をしてきた成果が少しずつ表れてきています。仕事は、地場の工場や病院などの建設が半分、日系企業からの発注が半分です。ブラジル経済も持ち直してきたので、良い方向に向かっています。


──
 海外への新たな進出は。


今井 スリランカには15年に再進出し、17年にはJFEエンジニアリングや三井造船との共同企業体で、最大都市コロンボの鋼橋建設を約200億円で受注しました。


──
 海外事業の目標は。


今井 数字的な目標は固定しませんが、国内の需要が縮小する中で、世界で活況のところがあれば、国内からどんどんシフトしていけるようにしたいとは考えています。
(構成=松本惇・編集部)

 横顔

Q
 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか


A
 建設現場で一生懸命働いていました。35歳くらいで作業所長になり、一つのプロジェクトを任されて、どうやっていいものをつくるかを考えて奮闘する毎日でした。


Q
 「私を変えた本」は


A
 『朝日の直刺す国、夕日の日照る国古代の謎・北緯3521分の聖線』(池田潤著、郁朋社)という古代史の空間的研究の本です。著者は戸田建設時代の同僚で、衝撃を受けました。


Q
 休日の過ごし方


A
 ゴルフをすることが多いです。お客さんともやりますが、プライベートのような感覚です。
………………………………………………………………………………………………………
 人物略歴
 いまい・まさのり
 1952年生まれ。大阪府出身。大阪府立三国丘高校、大阪大学卒業後、同大学大学院工学研究科前期課程建築専攻修了。78年4月に戸田建設に入社し、大阪支店長、常務、副社長などを歴任。2013年から現職。65歳。
………………………………………………………………………………………………………
事業内容:建築、土木、不動産など
本社所在地:東京都中央区
創業:188115
資本金:230億円
従業員数:4872人(20173月末現在・連結)
業績(173月期・連結)
 売上高:42272200万円
 営業利益:2499800万円

 

特集:為替で読む世界経済 2018年03月13日号

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Part 適温経済の賞味期限

円高クラッシュが来る米孤立化で進むドル離れ

第66回福島後の未来:作る人と使う人をつなげる仕組み 「顔の見える電気」を目指す

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電力運用システムも電気そのものも、これからはどんどん「見える化」する必要がある。

大石英司(みんなの電力社長)

 アフリカ東部ケニアのマサイ族が作った電気を日本企業が買い入れる──。荒唐無稽(むけい)な話だろうか。


 消費者が自ら発電し、二酸化炭素(CO2)を排出しない電気には、さまざまな価値がある。例えば、電力会社が大規模な発電所を使って発電し、遠方から送電線を通して運んでくる電気を節約できる価値。石炭火力発電など、化石燃料を燃やして作る電気に比べて地球温暖化対策に貢献できる価値などだ。


 電力量を示す「キロワット時」は、世界共通の単位だ。しかし、1キロワット時当たりの電気料金は、それぞれの国や地域によって異なる。

 

 地球全体で見た場合、誰かがどこかで節電したり、二酸化炭素を排出しない電気を使ったりすれば、そのぶん価値が生まれているということになる。日本企業は、事業活動で生じる二酸化炭素の排出量を今後ますます減らさなければならない。そのため、日本企業はこうした価値を手に入れたくて仕方がない。
 このため今後、ケニアのマサイ族が太陽電池で作った電気を日本の大手メーカーが購入する状況もあり得る。この場合、マサイ族には大きな収入がもたらされるだろう。


 みんな電力(東京都世田谷区)は、情報通信技術やセンサー技術を使って、こうした電気の価値を世界規模でつなぐ仕組みを作りたい。

 業務システムをクラウド化

 当社の携帯型太陽光発電器「ソラマキ」は、その一例だ。ソラマキは丸めて持ち運べる太陽電池パネルで、装置につなげた小型のバッテリーにためた電気で携帯電話を充電したりできる。


 加えて、おサイフケータイに搭載されているような近距離無線通信機能を持たせることで、発電器(ソラマキ)で発電した電気の量をスマホで読み取ることができる仕組みを開発中だ。利用者は、ソラマキを使って発電した電力量をリアルタイムで把握できる。


 併せて、みんな電力が利用者に対してソラマキで発電したぶんのポイントを付与するサービスを検討している。利用者がポイントを使って省エネ商品の購入や電気代に充てることができるようになれば、ソラマキを使うインセンティブにもなる。


 この仕組みを世界規模に広げれば、マサイ族の人が発電したクリーンな電気の価値の部分だけでも日本企業に売ることができるようになるはずだ。電気を直接やり取りできなくても、「太陽光発電で作った」という価値をポイントやクレジットなどの形で取引することは可能だ。


 電気は、電力会社が整備した送電線につながっているほうが流通しやすい。しかし、節電によって生じた価値や環境価値は送電線につながっていなくても、交換する仕組みがあれば、やり取りできる。


 筆者が目指すのは、電気を通じて人と人をつなげることだ。


 今までは、顔も知らないどこかの誰かが作った電気を、やはり知らない誰かが「毎日流れてくるもの」として使うのが当たり前だった。当社はこうした状況に風穴を開けたい。クリーンな方法を使って発電した電気の付加価値を、それが欲しいと考える消費者に届ける。当社が進める「顔の見える電力」には、そういう意味を込めている。


 当社は、消費者や店舗向けの電力小売り事業も展開している。やはり「顔が見える」がキーワード。当社の電力購入サイト「エネクト」では、牧場の牛舎の屋根に設置した太陽光発電設備や農業と発電事業を同時に手がける営農太陽光発電所など、みんな電力の調達先である太陽光発電やバイオマス発電といった再生可能エネルギー発電所を写真やプロフィール付きで紹介している。


 消費者は、サイトでお気に入りの発電所を見つけたら、応援することができる。お気に入りの発電所に対しては、みんな電力を通じて電気料金の一部を支払う仕組みだ。


 食品スーパーでは、生産者の顔写真付きで売られる野菜が浸透している。そんな取り組みを電気でやってもよいはずだ。


 当社の扱う電気の6割超は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の対象となる電気だ。FITは17年4月に改正され、FITの対象となる電気はすべて電力会社の送配電部門が買い取る取り決めになった。ただし、特例措置として、発電事業者が小売り事業者と個別に契約を結べば、特定の発電所から電気を買うことができる。「特定卸供給契約」と呼ぶもので、発電会社が売りたいと考える顧客に売ることができる。当社はこの特定卸供給契約を使ってFITの再生エネ電気を買い取り、消費者に販売している。


 16年4月に始まった電力小売りの全面自由化によって、消費者は電力会社を選ぶことができるようになった。みんな電力のホームページに必要事項を入力していけば、電気の調達先を従来使っていた大手電力会社から、みんな電力に自動的に切り替えることができる。


 実際には、利用者の入力情報を基に当社が国に申請し、国の許可を得て契約を切り替えている。当社はこうした契約の切り替えや電力の需給調整といった一連の業務を、米セールスフォース・ドットコムのクラウドサービスを使って自動化した。その結果、システムの開発費用や運営費、事務コストを大幅に削減できた。コストを減らせたぶんだけ、利用者の電気料金を下げることができる。


 多くの競合他社は、大手IT企業に高いお金を払って専用の基幹システムを構築してもらっているようだ。クラウドサービスを使った当社のシステムに比べ十数倍に上る莫大(ばくだい)なコスト負担を伴う。負担の重さから、電力小売り事業から撤退する企業もあると聞く。


 大手電力会社は、電力の需給調整業務や契約の切り替え業務などのあらゆるシステムをブラックボックス化してきた。もともと自由化以前の電力事業は、設備やシステムにかかった費用を電気料金にすべて上乗せできる「総括原価方式」と呼ばれる仕組みだった。そのためコストを引き下げるための技術革新も起きない。外部からは、ブラックボックスになっていていくらかかっているのかも分からない。


「クラウド化すれば、低コスト化できるのに」と疑問に思っていたら、電力業界にも同じ考えの人がいた。当社のシステムは、そういった電力業界の一部の方々も協力してくれた。



 コンセントの向こう側

 大手電力会社は、運用システム一つを取り上げても分かるように、電力事業をできるだけ外部の目に触れないようにしてきた。送電線から住宅に届けられる電気も、石炭火力発電によって作られたものなのか、原子力発電によって作られたものなのか、消費者には分からない。

 当社が掲げる「顔の見える電力」は、こういった大手電力会社による既存の電力供給体制のアンチテーゼ(対立命題)である。電気そのものも、電力システムも、これからはどんどん「見える化」していく必要がある。コンセントの向こう側は、どうなっているのか。どんな人が関わっているのか。発電する人と電気を使う人をつなぐ無駄のない仕組みを作りたい。

おおいし・えいじ

 1969年大阪府生まれ。明治学院大学経済学部卒業。ソフトウエア開発会社などを経て98年凸版印刷に入社。インターネット事業に従事。2011年みんな電力を設立。


週刊エコノミスト 2018年3月13日号

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特別定価:670円

発売日:3月5日

 

 

  為替で読む世界経済

 

円高クラッシュが来る!

米孤立化で進むドル離れ

 

 2月16日の東京外国為替市場で一時、約1年3カ月ぶりのドル安・円高水準となる1ドル=105円台を記録した。同日には財務省、日銀、金融庁による緊急会合が開かれ、浅川雅嗣財務官は会合後、「一方的に偏っている動きになっていると評価せざるを得ない。為替市場の動向はこれまで以上に緊張感をもって注視していく」と述べ、ドル安・円高の動きをけん制した。

 

 為替の変調に先駆け、2月6日には日経平均株価が一時、前日比1600円超下落し、前日には米ダウ工業株30種平均が史上最大の下げ幅となるなど、世界株安となった。続きを読む


お金に関する「問題解決」を支援する データで課題を分析し、情報提供=冨田和成・ZUU代表取締役社長

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冨田和成(ZUU代表取締役社長)

https://zuuonline.com/

とみた・かずまさ◇1982年生まれ。野村証券で資産10億円以上の富裕層を対象に資産運用コンサルティングに従事後、シンガポールへ駐在、ビジネススクール留学を経て2013年にZUUを創業。著書に『鬼速PDCA』など。


 人生を前進させるための「ガソリン」である「お金」に関するリテラシーを身につけることで、夢や目標に向かって全力でチャレンジする人を増やしたい──。そんな思いから、2013年に金融メディア『ZUU online』を立ち上げました。現在、月間の訪問者は350万人超です。金融領域の情報サービスには、マーケット情報に寄ったものが少なくありませんが、「お金に関する問題解決型メディア」として独特のポジションを築くことができたのではと考えています。

 

 ここに至るまでの運営方針を振り返ると、三つに分類できると思います。

 

 初期はキーワード検索をきっかけに認知度を高めるため、賞味期限が長いと考えられる記事を地道に制作し配信しました。中期は、当時全盛期だった大手ニュースサイトやアプリを想定し、外部チャンネルごとに最適なコンテンツを配信するなど鮮度と話題性を備えた記事の配信にシフトしました。一定割合のファン層がついた現在は、潜在ユーザーの定着を図るべく、本来のテーマである「お金」に関するストック型のコンテンツの配信を増やしています。

 

 こうした変遷を経た私たちが、以前から変わらずユーザーに促したいと考えていることは、お金に関する行動において、感情に左右されて決断するのではなく、人生の目標から逆算した合理的な選択と判断に基づいて動くことです。

 

 そこでユーザーが決断に至る前のステップを三つ──メディアで情報に触れる、理解を深める、自分の状況に応じて解を選択する──に分類、それぞれに即した記事を配信しています。

 

 三つのステップに合わせた“垂直統合型”記事を備えたバーティカル(専門特化型)メディアであるZUU onlineには、日々お金に関する情報が蓄積されています。アクセス解析やユーザー属性データを通じて、ユーザーごとの課題に合わせてピンポイントで情報提供ができる配信ロジックを実現できるよう、日々改善しています。

 

 ◇想定外の金融プロ読者

 

 過去、自身がプライベートバンク業務に従事し、メディア運営者になった今だから思うのが、金融のプロも顧客課題を深掘りし、解決策を出し、実行を支援する意味では情報と商品の媒介者、つまりメディア的な存在だということです。ユーザーの行動データとお金の問題解決につながる情報を多く持つ我々は、最強の金融コンサルティングができる存在を目指しています。

 

 また、これは立ち上げ当初から意図していたわけでないですが、専門性のレベルを少し高めに設定してきた結果として、プロ側に当たる金融業界の方々が読者全体の15%程度を占めるようになりました。金融業界側のコンサルティングレベル底上げにも貢献することができたら、巡り巡って、金融パーソンの先にいる顧客への価値が上がるわけですから、プロが読んでも読み応えのある情報まで意識して企画・制作し、配信しています。

 

 ZUU onlineを基点とした多チャンネル化も模索中です。現時点で形になっているのがTV局とのコンテンツ連携やラジオ局との共同番組制作、地方新聞社とのマネー紙出版などです。さらに、2年前にシンガポール版を立ち上げ、日本企業として初めて現地の主要大手ポータルサイトと連携するなど認知度も高まってきました。

 

 今後も「お金」に関するリテラシーを身につけ、夢や目標に向かって全力でチャレンジする人を増やすための活動に尽力していきます。

 

*週刊エコノミスト2018年3月13日号「ネットメディアの視点」

 

「ネットメディアの視点」記事一覧

政府の「脱デフレ宣言」受け、正常化へ=山川哲史〔出口の迷路〕金融政策を問う(22)

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出口を左右するのは政治力学だ。安倍政権は憲法改正に向け、成果を顕示して求心力を高めようとするだろう。

山川哲史(バークレイズ証券調査部長)

 

 日銀による異次元緩和は、主要海外中央銀行による金融政策が米国を中心に「正常化」へと向かうなか、ようやく転換点を迎えつつある。筆者が所属するバークレイズ証券はこう予想する。日銀は今年9月にも、政府の「脱デフレ宣言」を受け、長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)の対象年限を、現状の10年物国債から5年物へと短期化する。さらに、マイナス金利については、短期化によってイールドカーブの急傾斜化が定着した段階でこれを解消し、「ゼロ金利政策」へ復帰するだろう。

 

 

 インフレ率(消費者物価上昇率)の停滞が続くなか、異次元緩和の長期化を余儀なくされているにもかかわらず、いまだ「出口」がみえない日本でなぜ、「正常化」が可能となるのだろうか。

 

 

 日本における「正常化」を考える上でキーワードとなるのは、政策反応関数(経済変数と金利水準との関係式)、政策効果と副作用のトレードオフ、そして政治力学だ。筆者は、日本における異次元緩和の経緯、及びその特異性を勘案すると、この政治力学が最も重要であると考えている。特に今年の中盤から19年にかけては、「正常化」の可否、及びそのタイミング、手法等は政治力学の動向に大きく依存する展開となるだろう。

 

 

 

 

「脱デフレ」の新たな判断材料

 

 

 

 そもそもインフレ目標の採用を含む異次元緩和は、日銀が完全な独立性を持って自律的に導入した政策というより、むしろ安倍政権下における「脱デフレ政策」の一環として、政権から日銀に政治課題として与えられた側面が強い。このような前提に立つ限り、政治力学の変化は日銀による「正常化」にも大きく影響するとみるべきだろう。

 

 こうした観点から最も重要なのが、今年半ばにも予想される、安倍政権による「脱デフレ宣言」だ。9月以降は、安倍晋三総裁の三選がほぼ確実視されている自民党総裁選、そして来年に入ると統一地方選、参院選と、安倍政権最大の懸案事項である憲法改正論議と同時並行的に、ほぼ間断なく重要な政治イベントが続く。政権がこうした一連の政治イベントを、政治的求心力を維持したまま乗り切るべく、事前の段階で自らの「脱デフレ政策」の成果を顕示するため、「脱デフレ宣言」に踏み切る可能性は十分にあると言えるだろう。

 

 くしくも内閣府は、年初の段階で、「脱デフレ」の判定基準としてCPI上昇率の動向に加え、需給ギャップ、内需デフレーター、及び単位当たり労働コスト(ULC)の4指標を重要指標として掲げた。4指標は年初の段階で既に、十分とまでは言えないまでもそろって改善傾向を示していており(図)、年半ばにかけては回復傾向が定着していることが見込まれる。

 

 

 更に3月中旬以降その動向が判明する18年度「春闘」における賃上げ率(定期昇給+ベースアップ)については、企業収益の堅調に加え、異例とも言える政府・経団連が一体となっての企業に対する賃上げ要請、更には積極的な賃上げ企業に対する優遇税制の時限的な導入もあって、前年度(1・98%)を大きく上回る2%台半ばの水準に着地する可能性が高い。この点も、ULC上昇を通じ賃金・物価上昇の好循環につながる可能性が高く、「脱デフレ宣言」を後押しすることが予想される。

 

 今年後半以降の一連の政治イベント、及びこれを控えた年半ばの段階での政府の「脱デフレ宣言」は、これ自体が金融政策の「正常化」に直結するわけではないにしろ、「正常化」に向けた日銀の政策自由度を確実に高めるかたちとなるだろう。

 

 

 

副作用に言及し始めた日銀

 

 

 

 先に挙げた「正常化」のキーワードのうち、政策効果と副作用のトレードオフについても、従来のように異次元緩和の効果を一方的に強調するのではなく、副作用に着目する論調が日銀も含めて目立ち始めている。昨年末の、黒田東彦総裁による、いわゆる「リバーサルレート(超低金利環境が長期間にわたり持続することで金融機関収益が悪化、これが将来的に信用収縮等を通じ意図した金融緩和とは逆方向の影響をもたらす可能性)」に対する言及を契機に、改めて異次元緩和の効果と副作用との間のトレードオフが重視されつつある。

 

 以上のことから、18年後半に最も描きやすいのは、潜在成長率を大きく上回る成長軌道が持続するなか、インフレギャップ拡大と共に物価上昇ペースが緩やかに加速し、一方で主要国中銀による「正常化」の波(これは日銀による「正常化」に伴う円高圧力を抑制する)と、政府による「脱デフレ宣言」を含む政治力学の潮目の変化が、三位一体で「正常化」を後押しする構図だ。

 

 市場では、18年の「正常化」を予測するのは少数派で、過半は19年以降の「正常化」を見込む先が多い。ただし19年に入ると後は、米国の利上げサイクルが頓挫するリスクが(少なくとも18年と比較すると)高まるなか、日本では10月の消費税率引き上げを契機に財政政策が一気に縮小へと転化するなど、日銀の政策自由度は逆に低下すると考える方が自然だろう。

 

 この間、注目された日銀人事については、総裁は市場の大勢予想通り黒田総裁の続投、副総裁については雨宮正佳日銀理事の内部昇格、及び岩田規久男現副総裁同様「リフレ派」と目される若田部昌澄早稲田大教授の登用でほぼ決着しつつある。この人事は、年初来株価・為替調整が進むなか政権が金融政策運営における「変化」より「継続」、そして市場における「変動」より「安定」を志向した結果ともみてとれるが、この結果、審議委員の金融政策に対する姿勢の分布はほとんど変化せず、当面は総裁を中心に「中立(現状維持)」に収斂することが見込まれる。

 

 ただし、「正常化」が視野に入る段階では、「正常化」を先導するとみられる雨宮氏、鈴木人司委員らと、「緩和推進派」と目される若田部氏、及び片岡剛士・原田泰両委員らの間の確執が強まることも予想される。こうした観点からも、金融政策予想にあたっては、政治力学を見極めることが重要となる。

 

*週刊エコノミスト2018年3月13日号掲載 

これまでの連載一覧

短期の政治的利益で遅れる改革=田中秀明〔出口の迷路〕金融政策を問う(23)

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安倍政権では政策過程が劣化しており、政策のリスクとコストを検証する議論が乏しい。

 

田中秀明(明治大学公共政策大学院教授)

 

 あらゆる政策にはメリットに加えてリスクとコストがある。異次元金融緩和は当初の2年は許容できたとしても、今はそうとは言えない。政府・日銀は緩和政策のメリット・デメリットについて比較考量を行い、国民にわかりやすく説明するべきだが、後ろ向きである。政府・日銀は出口論を封じ、日銀内を含め多様な議論がない。こうした政策過程の課題は、金融政策だけでなく、安倍晋三政権全般に通じる問題だ。

 

 

 黒田東彦日銀総裁の再任と新副総裁の人事が2月半ばに決まった。今回の人事は、政策の継続や市場にサプライズを与えないという意味では、順当だったと思う。そうであっても、当初の物価目標についての「アカウンタビリティ」を問わなければならない。

 

 アカウンタビリティは、一般に、「説明責任」と訳され、時には単に説明すればよいと解釈されているが、全くの誤訳だ。筆者は、「主人と代理人の間であらかじめ定めた約束を、代理人がその通りに実現する責任」と定義している。

 

説明ではなく実現する責任

 

 黒田総裁は、2013年3月21日の就任記者会見で、「2%の物価安定目標は既に定められているので、できるだけ早期に実現するということは中銀の責務と思っている。(中略)2年程度で物価安定目標が達成できれば好ましい」と述べた。また、同じ記者会見で、岩田規久男副総裁は、「デフレ脱却には、(中略)コミットメント(約束)が必要だ。言い訳をしないという立場に立たないと市場が信用しない。(中略)2年で達成できない場合、まずは説明責任を果たす。説明責任を果たせず、自分の判断ミスであれば、最終的には辞任する」と述べた。

 

 

 2%の物価安定目標は5年が経とうとするなか未だに達成されていない。日銀の正副総裁は「アカウンタビリティ」について筆者とは別の解釈を持っているのだろうが、いずれにせよ、単なる説明では、公職にある者は許されるものではない。

 

 目標未達成の理由として、14年の消費増税が挙げられているが、これは苦しい言い訳だ。GDP(国内総生産)統計では、消費増税の影響は半年程度であり、新基準では消費もそれほど落ち込んでいない。原油価格下落などを含めて、目標達成を6回も延期した理由にはならない。

 

 

 誤解のないように言うが、筆者は、2%の目標達成に向けて挑戦しようという最初の2年間を否定するものではない。政策は、最終的には判断だからである。当初からインフレ目標の達成について懸念も示されていたが、13年の時点では実験してみないとわからなかったとも言えるだろう。しかし、2年が5年、更に時間がかかるならば、話は全く違う。

 

 

 今や日本経済は完全雇用であり、人手不足になっている。171012月期の実質GDP(速報値)は0・5%(年率換算)となり、8期連続成長で28年ぶりの長さになった(図)。他方、日本経済の問題は潜在成長率が1%未満と低いことであり、それは金融緩和では解決しない。この5年は金融政策の限界も証明した。

 

 

 それゆえ、今後、金融政策の舵取りはいっそう難しくなる。金融緩和継続の理由として挙げられるのは、早期の金融引き締めは日本経済をデフレに戻し、景気を後退させるというものである。これは、景気上昇局面で常に中央銀行が直面する問題である。政治は足元の景気刺激を望み、出口に向かうなどとんでもないと捉える。財務省にとっても、金利上昇は利払い費増につながるので避けたい。来年は、参議院選挙、消費増税(10月)などが予定されており、政治は、財政政策を含めて更なる拡張を望むだろう。

 

 

 日銀も新日銀法によって独立性は高められたものの、00年のゼロ金利解除などで「金融引き締めが景気後退を招いた」と批判を受けたトラウマがある。また、黒田総裁は期待に働きかけることを強調しているので、出口論そのものを避けている。

 

 

 中央銀行といえども完全な独立はないが、政治との一定の距離は必要であり、バンカーとしての政策判断が求められている。金融緩和の継続はタダではなく、リスクとコストがある。一部には、日銀の国債の購入などの金融緩和にはリスクもコストもないという主張があるが、それはあり得ない。

 

 

 金融緩和の主なリスクとコストとしては、以下が挙げられる。

 

①市場に過剰な流動性をもたらし、資産ブームやバブルを招く。

 

②銀行などの収益を悪化させるとともに、個人の預貯金の金利収入を奪う。

 

③低金利により、ゾンビ企業が生き残り、イノベーションを阻害する。

 

④政府は利払い費の低下により無駄な支出を増やし、その借金を将来世代に転嫁する。

 

⑤日銀が企業の大株主となり、コーポレートガバナンス(企業統治)を損なう。

 

⑥将来の金利上昇局面で、日銀の損失が増大し、国民負担となる。

 

 

 筆者は、金融緩和の最大の問題は、低金利でゆでガエル状態が続き、急速に進む少子高齢化への対策と産業の新陳代謝が遅れることだと考える。当初の2年間は金融緩和でカンフル剤を打つとしても、日本経済の隘路(★ルビ、あいろ)や生産性低迷の原因を分析し、規制、労働市場、税制、社会保障などの抜本改革を果敢に実施するべきだった。

 

 

安倍政権は改革しているふり

 

 

 

 政策の政策の評価がないという問題は、安倍政権全般に通じる。3本の矢、成長戦略、地方創生、1億総活躍、働き方改革など、政権の看板的な政策が十分な検証もなく、次から次へと入れ替わっている。昨年の衆院選挙前には、教育の無償化が決まったが、教育への公的支援の拡大は、より豊かな者も助けることになるにもかかわらず、費用対効果などについての議論は乏しかった。

 

 

 要するに、安倍政権では政策立案過程が劣化しているのだ。小泉純一郎政権で政策立案の透明性向上に寄与した経済財政諮問会議は、安倍政権では、影が薄い。諮問会議は、もともと90年代のマクロ経済政策の失敗を反省し、経済の司令塔としての役割が期待されたが、そのための活発な議論や検討は今やほとんどない。更に公務員は内閣人事局の設置で、政治のイエスマンとなり、忖度に走っている。

 

 

 安倍政権は改革を進めているように見えるが、痛みを伴う真に必要な改革は選挙を意識して取り組まない。アベノミクスは、成長がすべてを解決する楽観論を振りまいている。

 

 

 ハーバード大学のファーガソン教授は、その著書『劣化国家』で、世界中で雪だるま式に膨れ上がった巨額の債務について、世代間の社会契約を回復することが喫緊の課題となっていると指摘し、選挙権のない子どもたちのお金を使うことを戒める。

 

 

 この問題の解決策として、ファーガソンは、構造改革の推進、ギリシャのような危機の末の債務不履行とインフレなどを挙げる一方、現在の日米については、債務は増大し続けるが、デフレ懸念と中央銀行の国債買い入れにより、政府の借り入れコストは歴史的水準にとどまり、数十年にわたるゼロ成長となるのが帰結だと言う。

 

 

 更なる金融緩和の継続は、短期の政治的な利益にかない、国民にとっても心地よい状態かもしれないが、中長期の経済的利益や安定を損ないかねないことを認識するべきである。

 

*週刊エコノミスト2018年3月20日号掲載

 

◇たなか ひであき

 

1960年東京都生まれ。83年東京工業大学工学部卒業、85年同大学院修了、旧大蔵省入省。内閣官房、内閣府、外務省等で勤務。政策研究大学院大学で博士号取得(政策研究)。12年より現職。著書に『日本の財政』など。


「出口の迷路―金融政策を問う」連載一覧

目次:2018年3月20日号

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CONTENTS

 

爆速イノベーション 中国の技術
20 自動運転の「アポロ計画」 バイドゥ主導で世界覇権へ ■田中 道昭
22 音声アシスタントも車載用に
23 EVメーカー60社が群雄割拠
24 電子商取引 アリババ対テンセント・京東 実店舗争奪戦 ■神谷 渉
25 無人コンビニも拡大
26 ライブコマース インフルエンサーが販売も担当 ■高口 康太
28 ミニプログラム 料理注文もECもウィーチャットで完結 ■張軼〓
29 第3次産業が5割超 もはやサービス産業国 ■種市 房子
30 もの作り スマホで進む徹底的な「垂直分裂」 ■高口 康太
32 巨大プロジェクト 衛星経由の量子暗号、スパコン 世界初・トップ続々 ■種市 房子
33 科学技術 インタビュー 林 幸秀 科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー「独自性ないが、資金力・人口は脅威」
34 「新技術」への傾倒 ビッグデータ絡ませ 「善行に褒美」の考え ■津上 俊哉
35          米で高まる中国IT脅威論 ■岩田 太郎

 

Flash!


13 仮想通貨業界の認定団体設立へ、手綱引き締める金融庁/金融市場、「米関税上げ」で再び嵐に
15 ひと&こと 大日本住友製薬、崖っぷちの社長交代/マイクロンとの協業解消、インテルが紫光集団に接近

 

Interview


4 2018年の経営者 金子 靖代 シーボン社長
16 挑戦者 2018 沢登 哲也 コネクテッドロボティクス社長
46 問答有用 町田 修 オーグ・うさぎのしっぽ社長
「飼い主と一緒の幸せな暮らしを提供したい」

エコノミストリポート
86 土地の所有者不明化 外資の土地買収に警戒強める先進国 規制緩和で逆行する日本 ■平野 秀樹

78 新連載 本誌版「社会保障制度審」第1回
有識者鼎談 宮本 太郎×権丈 善一×山崎 史郎 2040年の人口減少見据え議論開始

36 企業法務 「他人の犯罪申告」で刑を減免 ■山口 利昭
38 エネルギー政策 再生エネルギーで出遅れる日本 ■横山 渉
40 27年ぶり新税 国際観光旅客税・森林環境税 ■佐藤 主光
42 通商 メガFTA最終妥結阻む凍結項目 ■山川 俊和
84 鉄道 インタビュー 三陸鉄道 中村 一郎 社長 「住民に乗ってもらうことが大事」

 

World Watch


64 ワシントンDC 大統領の目の上のたんこぶ ロムニー氏出馬に集まる注目 ■堂ノ脇 伸
65 中国視窓 EVで世界の覇権狙う 規制や補助金に依存 ■真家 陽一
66 N.Y./シリコンバレー/英国
67 オーストラリア/インド/タイ
68 台湾/ロシア/カタール
69 論壇・論調 EUとの対立深まる英国離脱 猫の目のメイ政権交渉方針 ■増谷 栄一

 

Viewpoint


3 闘論席 ■池谷 裕二
19 グローバルマネー 金利と為替の相関はいずれ元に戻る
44 名門高校の校風と人脈(281) 京都教育大学附属高校(京都府) ■猪熊 建夫
50 学者が斬る 視点争点 生態系の経済的価値を可視化 ■柘植 隆宏
52 言言語語
70 アディオスジャパン(93) ■真山 仁
72 東奔政走 「通常国会は安全運転」の思惑外れ 改憲発議は19年参院選後の長期戦か ■平田 崇浩
74 海外企業を買う(181) SKハイニックス ■永井 知美
76 出口の迷路(23) 短期の政治的利益で遅れる改革 ■田中 秀明
83 キラリ!信金・信組(12) 北上信用金庫(岩手県) ■浪川 攻
85 国会議員ランキング(17) 総務委員会の質問時間 ■磯山 友幸
89 図解で見る 電子デバイスの今(8) 液晶パネル製造は「10.5世代」に 中国と台湾主導で巨額投資 ■津村 明宏
98 独眼経眼 賃上げは3%に届かず、ベアは1%未満 ■斎藤 太郎
99 ウォール・ストリート・ジャーナルのニュース英語 “ Pro-business populist ” ■安井 明彦
100 ネットメディアの視点 イタリア総選挙の新旧メディア対決 五つ星運動は大衆迎合ではない ■山田 厚史
104 アートな時間 映画 [ザ・キング]
105        クラシック [高松国際ピアノコンクール]
106 ローカル・トレインがゆく(15) 三陸鉄道 (下) ■文・黒崎 亜弓/写真・助川 康史
[休載]商社の深層

 

Market


92 向こう2週間の材料/今週のポイント
93 東京市場 ■三井 郁男/NY市場 ■針谷 龍彰/週間マーケット
94 ブラジル株/為替/穀物/長期金利
95 マーケット指標
96 経済データ

 

書評


58 『職場のハラスメント』
  『アカウンタビリティから経営倫理へ』
60 話題の本/週間ランキング
61 読書日記 ■楊 逸
62 歴史書の棚/海外出版事情 中国

57 次号予告/編集後記


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