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【セブン&アイHDお家騒動】鈴木会長電撃退任へ 創業家と確執の果て

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会見で厳しい表情を見せる鈴木氏
会見で厳しい表情を見せる鈴木氏

種市 房子

(編集部)

 

 日本の流通業界をけん引してきたセブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文会長(83)が7日午後、電撃引退を発表した。導火線となったのは同日午前に開かれた取締役会だった。鈴木会長ら経営陣が中核のコンビニ子会社「セブン─ イレブン・ジャパン」の井阪隆一社長(58)を退任させ、古屋一樹取締役執行役員副社長(66)を昇格させる人事案を提出した。社内外の取締役15人のう ち6人が反対票、2人が白票を投じて否決された。

鈴木氏は「私が続投することは禍根を残す」と役員会直後に引退を決意した。後任や新体制は今後協議する。

  井阪氏は2009年に就任以来、プライベートブランド(PB)開発や積極的な出店攻勢で実績を上げてきた。ただ、日本でコンビニ事業を確立した鈴木氏は 「改革案はほとんど出していない」と、交代を提案した。一方で、創業家で、約10%の株式を保有する伊藤雅俊名誉会長(91)は井阪氏退任に反対した。伊 藤氏は取締役会のメンバーではないものの意向が井阪氏退任案否決に作用したことは否めない。
 鈴木氏は会見で伊藤氏への憤まんをぶちまけた。「これまで良好な関係で、私の提案は拒否されたことがない。だが最近(態度が)変わった」。
 両氏がここ数年直接話すことはなく、役員室の間を橋渡し役の幹部が行き来していた。伊藤氏の次男・順朗氏(57)も鈴木氏の次男・康弘氏(51)もHD取締役を務め、「鈴木氏後」はどちらが実権を握るのかが注目されていた。
  そんな中、15年には「物言う株主」として知られる米投資ファンド「サード・ポイント」がHDの株式を取得した。16年3月には、HDに書簡を送り「井阪 氏を社長から退任させるといううわさを聞いており懸念している」「鈴木氏の次男を将来HDトップに就けるうわさがあり、鈴木氏の判断に疑問が生じる」と表 明し、お家騒動が表面化した。
 鈴木氏は1963年にイトーヨーカ堂へ入社。米国で見たコンビニエンス事業を日本に持ち込みビジネスモデルを確立した。92年にはイトーヨーカ堂社長に就任、05年には同社、セブン・イレブン・ジャパンなどを傘下に置く持ち株会社「セブン& アイHD」を設立し、一大流通グループを作った。80歳を超えても、開発商品は自ら試食して最終チェックをし、了承しないと出荷できないなどカリスマとし て君臨してきた。ただ、ここ1~2年は健康上に問題も抱えて、求心力にかげりも見えていた。この日の会見では声に力がなく、記者からたびたび「聞こえな い」と指摘され、衰えをうかがわせた。
 この日発表されたHDの2016年2月期連結決算で経常利益は3501億円と過去最高をつけた。鈴木氏の 下でHD社長を務める村田紀敏氏(72)は「鈴木氏がいなくなっても、問題ない組織にはしてきた。心配ない」と語る。鈴木氏の引退でカリスマ不在の混乱に 陥るか、組織の新陳代謝につながるか、注目される。(了)

(『週刊エコノミスト』2016年4月19日号<4月11日発売>12ページより転載)

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この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2016年4月19日号

定価:620円(税込)

発売日:2016年4月11日

週刊エコノミスト 2016年4月19日号

 

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