◇グーグルはアイルランドに2法人
◇アマゾンは「日本支店なし」作戦
木村 俊治
(木村国際税務研究所主宰・税理士、
元東京国税局職員)
近年、グローバルに展開する大企業は、さまざまな方法で節税を図っている。その仕組みは、(1)企業グループ全体で租税を最小限にする、(2)2国間の租税条約を利用する、(3)海外統括会社を利用する、などがある。具体的な三つのパターンを見ていこう。
◇その1 「ダブル・アイリッシュ」方式
米グーグル(現アルファベット)や米アップルに代表される巨大IT企業が、米国外での海外収益を節税する方法で有名なのが、「ダブル・アイリッシュ&ダッチ・サンドイッチ」である。その名前の通り、アイルランドに法人を2社置いて、オランダ(ダッチ)法人を間に挟む仕組みを指す。ざっくり言うと、税金が高い国では経費を計上する一方で、税率の低いまたはゼロの国で利益を計上して、納税額を限りなく減らす方法だ。
グーグルの場合まず、アイルランドに持ち株会社を作り、そこにライセンス料(実施料)を譲る。そして、バミューダ諸島の名義会社が、このアイルランド持ち株会社を管理・支配する形にしている。さらに、二つ目のアイルランド法人として実態のある情報処理会社を作り、オランダに知財管理会社を置いている。
なぜこうした複雑な構造にするのか。アイルランドにある企業は、その経営を外国企業が管理している場合、外国法人扱いとなり、ライセンス料の収入が非課税になる。アイルランドからすると「管理している外国で課税してくれ」ということだが、それが無税のバミューダ諸島にあるため、法人税がかからない。
一方、オランダに知財管理会社を置く理由は、アイルランド持ち株会社がオランダ法人にライセンスを譲る際、両国租税条約によりアイルランドの源泉税課税が発生しない。
そして、実態がある2番目のアイルランド法人は、米国のグーグル本社に対して実際に情報処理などのサービスを提供しているため情報処理料として売り上げを計上する。しかし.....
(『週刊エコノミスト』2016年5月24日特大号<5月16日発売>32~34ページより転載)
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定価:670円(税込)
発売日:2016年5月16日