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【マイナス金利】金利「世界同時水没」の現実味 2016年2月16日号

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新興国への資金流入

 ◇世界連鎖不況

 

高田創

(みずほ総合研究所チーフエコノミスト)

 

 年初来の世界市場の変調は、各国の政策を引き出す「催促相場」だ。世界中が、リスクシナリオだった「第4局面」の不安におびえている。戦前の世界大恐慌再来を防ぐ処方箋は何か。

 

 グローバルに見たマネーフローについて、今年の最大のテーマは新興国への資金流入が先細りしていることだ。

  図は新興国への資金流入の推移を示す。対外資産への投資や貸し出しなど国境をまたぐマネーが2014年後半からすでに減少傾向にある。特に新興国に向かう資金の減少が顕著である。資金の先細りは新興国の通貨安の要因となるが、急速な通貨安が新興国向け投資の資金引き揚げを促す面もある。中南米で利上げが相次いでいるのは、米国の利上げをきっかけとした通貨安と資金流出を回避する目的があるが、それは景気減速を一層助長する悪循環でもあり、留意が必要だ。

マイナス金利導入で、日本の長期金利はマイナスに

  表は世界の金利の「水没(マイナスもしくは0%台の金利)」マップだ。欧州北部の諸国は軒並み長期ゾーンまで水没状態が続き、日本も水没域が拡大している。世界の金利が水没するなかで、水没していないのは米国と、表でその下に位置する新興国であった。

 

  ◇浮き輪の米国に「穴」

 

  日米欧がゼロ金利策を続ける状況下で、14年後半まで先進国の資金は高金利水準にあった新興国市場に向かった。水没マップでは、米国は沈んでいないため「浮き輪」と表現したが、14年までは新興国は、世界のなかで米国以上に大きな「浮き輪」の役目を果たし、米国からも新興国へ資金が向かう状況にあった。

  しかし、新興国がバランスシート(貸借対照表)調整に入り、新興国への資金の流れが転換した。15年以降の新興国は「浮き輪」の機能が低下し、資金流出を食い止めるために、金利を上げざるをえない悪循環に陥っている。

  これまで、世界の多くの国々が水没するなか、世界の運用者が生き残りをかけた「難民」として米国の「浮き輪」に殺到した結果、ドル高と米国長期金利低下につながった。米国が政策金利であるフェデラルファンド・レート(FF金利)を引き上げることは、先のたとえでは「浮き輪」の浮力を高くすることを意味する。15年までは「浮き輪」が上がるペースが速いと期待し、ドルへの資金流入期待からドル高になっていたが、年初来の転換は「浮き輪」の浮力が鈍って沈み始める不安から、資金が逆流し、日本に資金が戻ったことで円高につながった。

  1月29日に日銀が導入を決めたマイナス金利の狙いは、日本の金利をもう一段水没させることによって、円高圧力を回避することだった。すでに1月21日に欧州中央銀行(ECB)が追加緩和をアナウンスしていただけに、日本も「通貨戦争」に参戦することとなった。

  今日、最も深刻な点は、世界に「浮き輪」がなくなって、世界全体の「水没」不安が生じたことだ。年初、米国の製造業の減速などで、米国の景気回復への信認や連続的利上げの期待は後退し、「浮き輪」が沈みかけている。今年2月は回復局面の80カ月目に当たる。前回の景気回復期間の73カ月を超えたため、今後、回復局面はそう長くないとの不安が生じた。

  また、米国の利上げによる早期の失速不安も拭い去れない。14年まで最大の「浮き輪」であった新興国は沈みつつあり、世界中が沈む同時水没不安が生じている。………

 

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この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016年2月8日

週刊エコノミスト 2016年2月16日号

 

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 ゲスの極みか!?

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