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特集:パナマ文書 ずるい税金逃れ 歴史から見る 大英帝国の遺産 米中マネーの交差点に 2016年5月24日特大号

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特集:パナマ文書 ずるい税金逃れ 歴史から見る 大英帝国の遺産 米中マネーの交差点に 2016年5月24日特大号

 

 

中尾 茂夫

(明治学院大学教授)

 

 パナマ文書で露見したタックスヘイブン問題は、21世紀の情報社会を象徴する深い闇である。その原点にあるのが、「大英帝国の遺産」とも言える地域だ。

 タックスヘイブンに挙げられる国・地域は、英国の海外領土であるケイマン諸島や英領バージン諸島、バミューダなど、19世紀に全盛期を迎えた大英帝国に関わる諸地域・諸島が多い。例えば、ケイマンの最高権力者は、英国国王に任命された総督であり、同諸島の最終審裁判所はロンドンにある枢密院(国王の諮問機関)である。同国はかつて、隣島のジャマイカと同じ傘下にある英国植民地だったが、ジャマイカが独立を果たした1960年代初頭、ケイマンは英国領としてとどまった。それが後年、タックスヘイブンとしての繁栄を享受することにつながる。

 

 ◇ロンドンの国際金融戦略

 

 タックスヘイブンの利用法の多くは、同地に設立する名義会社(ペーパーカンパニー)経由であり、肝心の貸借は、ロンドンがその中枢を担う。タックスヘイブンを仲介するとはいえ、実際にはロンドンで世界の巨大なマネーが国境を越え、口座間を瞬時に動いているのである。

 タックスヘイブンで取引される通貨はドルである。ドルの国際決済機能は、在米商業銀行に置かれたドル預金口座の振り替えだが、貸借行為はドルの非発行国でも可能だ。これが米国以外の金融市場で取引されるドル市場「ユーロダラー」であり、ロンドンは世界中のタックスヘイブンをつなぐユーロダラーの中心に座る。英国は、戦後の国際通貨体制を決めたブレトンウッズ体制の下、基軸通貨の地位こそドルに譲ったものの、そのドルを自由に貸借することで、ロンドンの国際金融市場としての地位を維持してきたのである。

 ロンドンでのドル取引で大きな転換点となったのは、モスクワ.....

(『週刊エコノミスト』2016年5月24日特大号<5月16日発売>38~39ページより転載)

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この記事の掲載号

定価:670円(税込)

発売日:2016年5月16日

週刊エコノミスト 2016年5月24日特大号

 

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