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【経済は物理でわかる】現実と乖離するマクロ経済学 2016年5月31日号

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◇ミクロの相似拡大モデルは誤り

 

吉川洋

(立正大学教授)

 

 ここ40年ほどでマクロ経済学にはパラダイムシフトがあった。ルーカス、プレスコット、サージェントが大きな役割を果たし、マクロ経済学はケインズ経済学から新古典派経済学に変わった。

 1960年代までは、マクロ経済学=ケインズ経済学だった。しかし、しっかりとした「ミクロ的基礎付け」がないとして、ケインズ経済学は批判された。今の主流派のマクロ経済学では、「代表的」なミクロの経済主体の相似拡大としてマクロ経済を理解しようとする。日本の家計は約6000万あるが、代表的な個人を考え、こういう変化があれば、消費者はこのように行動を変えるはずだと詳細に分析して、それを相似拡大する。つまり、代表的な個人の6000万倍が日本経済になるという考え方だ。
 これは自然科学の方法論と180度違い、全くの誤りである。自然科学では、多数のミクロから成るマクロ系を分析する時には、ミクロの動きは大まかに考える。ミクロの動きを細かく分析しても意味がないという立場で、むしろ、集計の仕方などに知恵の出し方があり、その結果として正確な分析を出してくる。
 ところが今のマクロ経済学はミクロを大まかにとらえることで満足しない。自然科学で例えるなら、一つの「代表的な」分子の動きを正確に求めて、相似拡大で物質全体の動きを分析しようとするということだ。しかし、実際の分子はさまざまな方向に動いており、これでは全体像の把握にはつながらない。……

(『週刊エコノミスト』2016年5月31日号<5月23日発売>34~35ページより転載)


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