◇「AI=ドライバー」なのか
◇一歩先行く米国の議論
土方細秩子
(ロサンゼルス在住ジャーナリスト)
今年4月、米国でグーグル、フォード・モーター、ボルボ・カーズ、配車サービス大手のウーバーとリフトを合わせた5社が「より安全な道路のための自動運転連盟」(Self-Driving Coalition for Safer Streets)と名付けた団体を設立した。活動目的は、自動運転車両の販売に向けてスピードアップを図るため、さまざまなロビー活動を行うことだという。現状では主に、ドライバーがいない状態での公道走行を許可するよう求めている。
この連盟の相談役兼スポークスマンを務めるのは米高速道路交通安全局(NHTSA)の局長だったデビッド・ストリックランド氏で、引退後はグーグルの自動運転部門のアドバイザーに就任していた。ストリックランド氏は団体設立の声明文の中で「(自動運転という)技術を現実化するための最適な方法は、連邦政府による明確な法制を作り、実施すること」と明言し、その実現のために連邦政府議員や古巣であるNHTSAなどに積極的に働きかける、としている。
◇事故時の責任は?
このような団体が生まれた背景には、米国の自動運転に関する定義のあいまいさがある。自動運転車両の公道でのテスト走行に関する規制は現在、各州政府の裁量に委ねられており、その内容はまちまちだ。
グーグルが本社を置くカリフォルニア州は自動運転車両のテスト走行を認める数少ない州の一つだが、「自動運転車両にもハンドル、ブレーキなど人間がコントロールできる装置の装備を義務付ける」「自動運転車両の公道テストの際には運転席に免許を持つ人間が座ることを義務付ける」という規制が存在する。そのため、グーグルは完全自動運転を前提にデザインした独自製作車両にも、仕方なくブレーキとアクセル、ハンドルを付けている。……
(『週刊エコノミスト』2016年6月28日号<6月20日発売>27ページより転載)