◇さよならマイカー
◇トヨタ×ウーバーの理由
貝瀬斉
(ローランド・ベルガー プリンシパル)
自動運転は、今のマイカーに機能として備わるだけならば、あまり浸透しないだろう。しかし、ドライバーがいなくても走行する“完全自動運転”は、車両の共同利用(シェアード・モビリティー)のサービスとセットで提供されることで、人々の移動のあり方に大きな変化をもたらす。生活者が、車の自己保有から移動サービスの利用へと急速にシフトするのである。車を取り巻く企業の力関係も、完成車メーカーからサービス事業者中心へと変わる(図1)。
シェアード・モビリティーとはどのようなものか。移動したい人が身に着けているウエアラブル端末やスマートフォンなどから車両を呼ぶと、無人の車両が迎えに来る。乗車すれば車内で好きに過ごし、目的地に到着したら降りるだけ。代金支払いはアプリで行われ、車両は近くにいる別の移動希望者のもとに向かう。都市部ではサラリーマンが取引先を訪れる際に利用し、郊外では朝夕の通勤や通学に、過疎地では高齢者が家族に運転を頼むことなく通院する──といったシーンが考えられる。
移動に掛かるコストが大幅に下がり、老若男女が時間を問わず、目的地まで移動できるようになるため、需要は劇的に増える。
◇誰でも安価で移動
既存の移動手段と比較してみよう。自己保有の車と比べて、移動コストが3分の1で済むと米ロッキーマウンテン研究所は試算している。
タクシーとの違いは、運転手が存在しないことである。……
(『週刊エコノミスト』2016年6月28日号<6月20日発売>32~34ページより転載)