◇世銀とIMFが緊急支援も
伊藤庄一
(日本エネルギー経済研究所研究主幹)
資源国アゼルバイジャンが原油安に伴う通貨の急落に直面している。通貨マナトの対ドルでの価値は1年前から半減した。
イルハム・アリエフ大統領の政権基盤が
ゆらぐ恐れもある
通貨安に伴いインフレも進行している。2015年12月のインフレ率は4%だが、シャリホフ財務相は1月24日、16年のインフレ率が10~12%に達するとの見通しを明らかにした。輸入品を含む生活物資の価格上昇や賃金下落に抗議するデモが発生するなど、混乱の様相を強めてきている。
こうした事態を受けて、世界銀行と国際通貨基金(IMF)は緊急の金融支援の検討を開始。アゼルバイジャン政府がIMFに30億㌦(約3500億円)、世界銀行に10億㌦の支援を要請する方針と伝えられている。1月28日から2月4日にかけて首都バクー入りしたIMF調査団は、同国の緊縮財政や経済構造改革の必要性を指摘した。
◇ドルペッグから変動相場へ
アゼルバイジャンは人口950万人弱の小国ながら、名目国内総生産(GDP)は640億㌦、1人当たりGDPは約6800㌦(15年、IMF推計)と旧ソ連諸国の中では中程度の経済規模にある。油田・ガス田開発への外資誘致に成功した00年代に原油の輸出拡大がエンジンとなり、一時は2ケタ成長を実現した。
経済を支えるのは天然資源だ。カスピ海沿岸の首都バクーは世界的な原油生産地として知られており、原油の輸出量は日量67万バレルで世界18位(15年上半期)で、同国の輸出額の95%、国家歳入の75%を石油・天然ガスの収入に頼る構造にある。資源収入に極端に依存してきたため、原油価格の長期的な下落の影響は大きく、急速にアゼルバイジャン経済は失速した。・・・・・・