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【特集:世界の危機 分断と反逆】急騰するビットコインが物語る 既存通貨の不信と仮想通貨への期待=長谷川克之

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 ◇2016年8月9・16日合併号

 

 長谷川 克之(みずほ総合研究所市場調査部長)

 

 不確実性はいつの時代にも付きものだが、最近はとみに増しているようだ。実際、米国の経済政策不確実性社作成の不確実性指数をみると、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に見舞われる欧州では未曽有の水準に達し、また、米国や中国でも過去最高に近い水準にまで跳ね上がっている。

 高まる不確実性の背景には何があるのか。

 米国、そして先進国での生産性の低下と長期経済停滞懸念。中国のバランスシート(貸借対照表)調整。ブレグジットと欧州での政治不安。世界の随所で続発するテロと地政学リスク……。いずれも底流には、世界経済が構造的な変化に見舞われ、これまでの常識が通用しなくなっていることがある。

 

 ◇急騰デジタル版ゴールド

 図1は、2016年1月の価格を100として、主要通貨や原油、金などの資産価格を指数化したものである。市場の不安が高まる中、注目に値するのが仮想通貨・ビットコインの価格上昇である。6月23日の英国民投票後の2日間の上昇率は10%を超え、ドルや円の通貨の実力を示す実効レートの上昇率を大きく上回る。年初来の上昇率は50%を超え、安全資産とされる金価格の上昇率の2倍以上となっている。「デジタル版ゴールド」とも言われるビットコインの面目躍如といったところだ。

 09年に誕生したビットコインが脚光を浴びたのが、13年のキプロス金融危機時である。同国で資本規制が敷かれた際、資産保全手段として注目されたことを契機として世界的に関心が高まり、14年には一時、1100ドル超まで急騰した(82ページ図2)。その後、東京の世界最大のビットコイン取引所・マウント・ゴックス社の破綻で、200ドル弱にまでの急落を余儀なくされたが、15年後半から上昇に転じている。

 今、ビットコインが注目されるのは、不確実性の高まりに加えて、既存の通貨(リアルマネー)に対する潜在的な不安の高まりと、技術革新による仮想通貨の潜在的な成長性への期待の二つの要因がある。

 まず、リアルマネーへの不安とは何か。ドル、ユーロ、円、ポンドといった主要国際通貨については、発券銀行たる中央銀行が......

(『週刊エコノミスト』2016年8月9・16日合併号<8月1日発売>81~82ページより一部転載)

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この記事の掲載号

定価:720円(税込)

発売日:2016年8月1日

週刊エコノミスト 2016年8月9・16日合併号

 

〔特集〕世界の危機 分断と反逆

 

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