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【電通】生き証人インタビュー 電通と私2:藤沢涼 2016年8月23日号

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◇記事もみ消し、キックバック要求の悲劇

◇電通には抜本的改革を期待したい

 

藤沢涼 

(元電通社員/Lamir社長)

 

元電通マンの藤沢涼氏が、マスメディアへの圧力や制作会社からのキックバック、社内で行われるパワハラの実態などを証言した。

(聞き手=後藤逸郎/大堀達也・編集部)

 

◇記事もみ消し

 

―― 電通はマスコミに圧力をかけているのか。

藤沢 ある大きなクライアントの不祥事を、雑誌が嗅ぎつけて記事にしようとしていた。そうした記事が出そうになると、ねじ伏せることが頻繁にあった。

 例えば、媒体に「向こう半年、出稿を約束するから、記事の一部を修正してほしい」と頼み込んで、急遽、記事を直前に差し替えることがあった。

 

 私の在職中に痴漢事件を起こした社員がいた。他の会社だったら記事に社名や名前が載るのに、その時は名前が伏せられた。「なぜ?」という思いはずっとあった。

 事件後、週に1回の部会で、「〇〇室の室長が痴漢で逮捕され、減給・降格の処分を受けた。諸君も気を付けるように」との報告があった。該当部署の室長は1人しかおらず、すぐに特定できたが、それを聞いた社員たちの反応は薄かった。報道では室名も出なかったので、私が同僚に「なぜ、個人名がニュースに出ないの

か」と疑問をぶつけると「それが電通の特権だろう」と当然のように答えた。

―― 媒体にどう働きかけるのか。

藤沢 電通の社員の中には、警視総監の子息もいた。そのほか、政財界との「ずぶずぶ」な関係もある。すべてに網を張っておいて、どこかで問題が生じたら、それを封じるような策が常にどこかにある。すごい世界だな、と思った。悪い記事が出たら「もうこの雑誌には出稿しない」とクライアントのお偉いさんから一本電話がかかってきて、部長が凍り付くという場面もよく見た。

―― 広告を出さないと電通の売り上げは減る。

藤沢 そこで記事を封じるために、クライアントから口止め料として、さらに多くの広告を取ってきて自分の会社の売り上げにつなげる。クライアントも媒体も喜ぶし、電通も利益が上がる構造だ。「社会の不都合な真実がここにあるな」と感じていた。 私が電通を辞める前年に東日本大震災が起きた。東電を叩くべきはずのところをテレビも雑誌も沈黙を貫いた。私は上司に掛け合った。「これは正しい仕事なのか」と。しかし「東電の広告費はお前の給料の一部だから共犯だ」と釘を刺された。これが退社の大きなきっかけになった。

 

◇キックバック

 

―― キックバックもあると聞く。

藤沢 テレビ制作会社が、「うちだったら、数十万円程度のポケットマネーを落としますよ」という話を普通にしていた。暗黙の了解で懐に収める社員もいたようだ。しかし、私は理解に苦しんだ。モラルに反する行為だからだ。制作会社としては、電通社員と強いパイプを作ることで他の番組も発注してほしい。「キックバックしてあげるから、他の番組でも声を掛けてよ」ということ。つまり賄賂だ。

 入社当時は、「利権をむさぼるようなことはやめよう」と、互いに絆を強めていた同期も、5年たつと朱に交われば赤くなるで、「電通はこうでなきゃ」と態度を一変させた。悲しかった。彼らは「必要悪」を言い訳にしていたが、結局は私腹を肥やしているに過ぎない。

 また、電通の部長が架空取引で大金をだまし取った事件もあった。電通が関与していないイベントなのに、関与を装い、知人の広告会社からイベント制作の業務委託料約1億5000万円をペーパー会社に振り込ませた。…


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