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ワシントンDC 2016年9月6日号

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広島での誓いを実現できるか・・・ Bloomberg
広島での誓いを実現できるか・・・ Bloomberg

◇国連へ核実験全面禁止を提案

◇レガシーの仕上げを目指す

 

会川晴之

(毎日新聞北米総局長)

 

 オバマ米大統領が、核実験の全面禁止を求める決議案を国連安全保障理事会に提案することを決めたと『ワシントン・ポスト』紙が8月4日に報じた。国連総会で核実験全面禁止条約(CTBT)が採択されてから9月で20周年となるのを機に、提案する意向という。今年5月に米大統領として初めて被爆地・広島を訪問し、改めて核廃絶の思いを強くしたオバマ氏が、「外交的遺産(レガシー)」作りに向け、総仕上げに取りかかる。

 オバマ氏は2009年4月、プラハでの演説で「核兵器のない世界」の実現を掲げ、核軍縮、核不拡散、核セキュリティーの強化を3本柱に据えた。来年1月の任期満了まで残り4カ月となる中、新たな核政策を打ち出そうと検討を進めており、安保理決議もそのひとつと見られる。

 

 ◇内外に波乱要因

 

 核実験を禁じるCTBTは1996年9月の国連総会で採択され、署名が始まった。これまで日本をはじめ164カ国が批准したが、肝心の米国は96年にクリントン大統領が署名したものの、共和党の反対が強く99年には上院で否決されてしまい、現在も批准に至らない状況にある。

 共和党は「核実験をしなければ核兵器の信頼性を保てない」「核実験に関する国際的な監視網が未整備で、隠れた核実験を探知できない可能性がある」と反対している。これに対しオバマ政権は、臨界前核実験の実施をCTBTが認めており、核技術の維持は図れるほか、300カ所以上に監視装置が整備されたことを挙げ説得に努めるが、野党・共和党が議会で多数派を占める中、早期の実現は望めない状況にある。

 一方、CTBT発効には大規模な核活動を展開する44カ国の批准も必要だ。核兵器国では英仏露がすでに批准したが、米国の様子を見極めている中国や、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮など8カ国が批准をしていない。

 その中のひとつであるイスラエルは、今年6月にAP通信が「批准の用意がある」と伝えたが、インドは「核実験を繰り返してデータを集めた核大国に有利な不平等条約」と主張しており、CTBTの早期発効は望み薄だ。

 CTBTが採択されて以後もインド、パキスタン両国が98年に核実験を実施したものの、その後は休止状態だ。現在、核実験を実施しているのは、今年1月に4度目の核実験を実施した北朝鮮だけだ。ただ核実験は国際法上は「違法」ではないため、核関係者はこうした事態を打開しようと案をめぐらせている。

 08年の大統領選でオバマ氏の核政策顧問を務め、現在、核兵器廃絶を目指す米民間団体の代表を務めるシリンシオーネ氏は毎日新聞の取材に「CTBTと同等の効果がある安保理決議を採択するべきだ」と話した。米軍備管理協会のキンボール代表も、そうした考えに賛同する一人で、『ワシントン・ポスト』紙の報道を受けて「大統領に拍手を送る。安保理決議は核実験禁止という国際的規範の強化につながる」と高く評価する声明を発表している。

 ただ、オバマ政権が安保理に決議案を提出した場合、議会との関係がさらに悪化する可能性が高い。このため、『ワシントン・ポスト』紙はエネルギー省のモニズ長官らオバマ政権の幹部が、決議案提出への理解を得るため、議会幹部との接触を始めたと紹介した。

 また米国家安全保障会議(NSC)のプライス報道官は、毎日新聞の取材に「(CTBT批准に向け)あくまでも議会への説得を続ける」考えを強調するなど、議会との関係維持に腐心している。

 


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